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完全″全″欠  作者: ル・ヴァン
旅立ち
18/49

決意(1)

なかなか人生思うようには行きませんね・・・


と軽く日常の愚痴を溢したところで、『決意』の章開幕です。



楽しんでもらえたらと思います。

ではどうぞ~

 頭と胴体がお別れしたリザードだったものからハントを済ませると、ソウルとカード状の魔材が6枚出てきて、リザードの体が忽然と消えてしまった。


「はぁ!?!?」

 プロの手品師マジシャンも真っ青な完全喪失マジックを目の前で目撃した俺は、当然驚き、声を上げた。


 何故!?と周りを見渡して見るが、やはりと言うか、何もない。

 これでもかと首を傾げて考える。

 そこでふと思い出すのはゴブリンをハントしたときのこと。ゴブリンはソウルに一枚の魔材が出てきていた。その魔材はゴブリンの歯。

 注目するべきはハントしたあとのゴブリンの口。


(確か・・・・何もなかった・・・ような・・・?)

 必死に思い出した内容を確認するように、今手に入れた魔材を見てみると、そこには魔材の名前と、写真のような絵がかかれていた。


 こんなんだったっけ?と思いつつも、あの時はハントの方が気になり、魔材の方は見ないままギルドに渡した感じだった。

 その為、初めてと言って良いカード状の魔材をマジマジと見る。


 《リザードの全身骨》


 《リザードの血》


 《リザードの肉》


 《リザードの牙》


 《リザードの脳・内臓》


 《リザードの眼》


 などが書かれていた。


 異世界の摩訶不思議現象に渋々納得するしかなかった。

 そこで、ふとソウルはどうなっているのか気になり見てみる。


 《種族名:リザード》


 《固有名:なし》


 Lv:60



 かなり簡易ながらソウルが書かれていた。


「よ・・・良く勝てたな・・・。」

 レベルが自分の倍以上である。その言葉以外出てこなかった。

 呆然と眺めていたが、暫くして我に帰る。


 そして、こんな奴を倒したのだから当然自分もレベルが上がっているはず。なのにレベルアップの音など何もなかった。気づいてみればここ暫く聞いていない。

 何故?と疑問が湧く。

 具体的に聞こえなくなったのを思い出してみると、初めての戦闘。ゴブリンを討伐してる最中に聞こえたのが最後である。


(確かあの時・・・うるさいから黙ってろと思ったんだったな・・・。まさかそれが原因?)


 他に思い当たる事もなかったため、恐らくそれが原因だろうと辺りをつけて無理矢理納得した。別に聞こえないからと不都合が有るわけでもないと考えたのでどうでも良くなったとも言える。


 そこで、自分のソウルを胸から取り出し、内容を確認する。


 レベル:28→39   SP:117


 称号:狭間を越えし者   職業:サムライ


 腕力:B   脚力:B


 俊敏:B   知能:S(C)


 魔力:A   体力:S


 精神:S(D)



 一気にレベルアップした。


「まぁ・・・当然か・・・。」


 レベル差を考えれば当然である。

 これでまた強化出来るなと考える。今回は自分から出向いたが、これからリザードの様な強敵に自然に出会わない可能性はゼロではない。

 そう考えると、このレベルでもまだ完全には安心できないとも思えるが、『纒龍ドラゴニック』の威力を考えると、まぁ良いか。とも思えた。


 技能や性質をどうしようかと考えた結果。戦技はともかく魔術はいつでも作れるようにしておいた方がいいと思い、『魔術創造』だけその場で獲得しておく。

 さて帰るかと思ったときに目に入ったのは黄金の稲穂。

(これは・・・失敗だったな。袋を持ってくるべきだった・・・。)


 さてどうするかと考える。そこでふと妙案を閃く。

 異世界と言えば『アイテムボックス』があるのでは?と言うことだった。

 幸い今しがた手に入れたSPがある。今ならば獲得できるだろうとソウルを再び取りだし、技能や性質を見てみることにした。


 すると技能に『異次元収納術』を発見した。

 恐らくこれだろうと思い早速獲得しようとしたときに思わず手を止める。

(ひ・・・必要SPが・・・!?は・・・はち・・・80!?!?)


 正直、バカな!?!?と感じた。

『戦技創造』や『魔術創造』でも30しか消費しないのに、80とは篦棒(べらぼう)に高い。

 たが、これはこれから先かなり便利な能力である。

 仕方なく意を決して手を動かした。


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 《異次元収納術》


[触れているものを異次元に収納出来る。

 出したいときは念じたものが、念じた場所に出てくる。出現可能範囲は使用者から半径50cmまで。

 収納限界は無い。]


 素晴らしいの一言である。


 試しに手に持っているリザードのソウルや魔材を収納する。

 消えたのを喜び、今度は念じて指で掴むように出す。問題なく指でつかんだ状態でリザードのソウルが出てくる。


 それからはひたすらに稲穂の確保である。

 お陰で周辺の稲穂が無くなった。後悔はない!


 稲穂の収納を終えてふと思う。

(収納した物の一覧などは見れないか?)と言うことである。

 試しにソウルを出すが、能力を表示してある所には何もない。

 次に《異次元収納術》をタップして説明を表示させると、最初はなかった記述があった。

 そこは、スクロール出来るようになっていて、『リザードのソウル』や『カトロ(加工前)』(米)などがあった。


 間違いなく現在収納してある物たちであった。

 これで、何を入れたか忘れた。なんて事にはならないので、ひと安心だ。


 確認を終えて木の根本に腰を下ろして少し休憩する。

「一休みしたら村に戻ろう。」


 腰にぶら下げた革製の水筒で喉を潤して一息。

 のんびり気楽にのほほんと半鐘(30分)程休んでから帰路に着いた。


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 森の切れ間から小さく村が見える。

 そして、その村から立ち上る太い煙。


「様子がおかしい。」

 普段ならば太い煙など視認できない。頭に過るのは『非常事態』の四文字。

 次の瞬間俺が立っていたところの地面が盛大に爆発した。


 脚に魔力を盛大に纏わせて、強引にスピードをはね上げた。普通は1鐘(1時間)程かかる道のりをあっという間に踏破した。所要時間5分弱。


 村にたどり着くと正に地獄絵図のような有り様だった。

 家々は崩壊していたり、燃えていたりとしていて、襲われたのは聞くまでもない。

 人々は倒れ、血を流したり、体が欠損していたり、酷い者になると頭が無かったりと様々な要因で死んでいた。


 更に死んでいたのは人だけではない。人以外に死んでいるものは、ゴブリン。10や20ではきかない数だ。

 ざっと50程だろうか?それほどの数のゴブリンが死んでいたのだ。

 ある程度の状況をざっと周りを見て確認する。

 静けさからしてもう事は終了しているのだろう。

 生存者の確認とゴブリンの残党が居ないかを気配察知で確認する。


 反応は・・・・1つ。ギリギリ範囲に入っていた領主の手前。

 だが反応が変だ。

 確かに反応はあるのに、生き物の感じがしない。反応があると言うことは生きてる何かのはずなんだが・・・。


 確認するために素早く、でも注意しながら反応のあった地点まで進むと。

 遠目ではわからなかったが、体調三メートル程の茶色いなにかが血を流して倒れていた。こいつはもう死んでいる。恐らくあのゴブリンたちを率いていた奴だろう。

 何処と無くゴブリンに似ていた。


 反応はもう少し屋敷の方。そこに居たのは、倒れ付したヴィンスであった。


「ヴィンス様!!!」

 急いで駆け寄り、うつ伏せに倒れるヴィンスを仰向けにして上半身を抱える。

 その目に写ったのは生きているのが不思議な体であった。

 左腕は肩からちぎれていて、腹には抉れた傷がある。顔は真っ白になっていて、体温はゾッとする冷たさであった。


「ヴィンス様!しっかりしてください!」

 声を掛けながら腹の傷に『治癒ヒーリング』をかける。

 だが、一向に傷は塞がらない。そもそも魔術自体が効いていないようだった。


「無駄だよ。ソウ殿。私はもう死んでいる。」

「そんなわけないじゃないですか!死んでいたら話すことなんて出来るわけ無い!」


 当然だ。死んだら話せない。極々当たり前のこと。死人に口無しである。

 しかし、ヴィンスは死んでいると言う。そのあり得ない事をヴィンスは説明始めた。


 ヴィンスの説明を纏めると、


 ①ヴィンスはもう死んでいる。

 ②死んでいる者には治療系魔術は効果無い。

 ③魔力を使って無理矢理体を動かしている。(精々喋れる程度しか動けない)

 ④魔力が尽きれば最後。


 以上が内容だった。

 恐らく身体強化の類いだと思う。死んでいるのに活動できると言うのはなかなか納得いかず、魔術をかけ続ける。

 ハッキリ言って無駄だとは判っている。いくらかけていても傷が塞がる兆しが見られないからだ。


「なんで・・・こんな・・・!?」

「ソウ殿。頼みがある。屋敷の地下に妻と娘がいるはずだ。二人の事を頼みたい。」

「わかりました。わかりましたから、今はヴィンス様が助かる方法を・・・。」

 有るわけがない。魔術は効かない。医療の心得もろくにない。

 俺には・・・助ける事は出来ない。


「もう・・・時間だな。魔力が・・・。

 ハハッ。ソウ殿の料理。あれは旨かった。もう一度食べ・・・た・・・・・・・」

 口は開いたまま、目も開いたまま。

 いくら待っても続きの言葉は無い。

「ヴィ・・・ヴィンス・・・様?」


 俺は呆然とした。

 それほど長い付き合いでもない、とても仲が良かったわけでもない。

 だが、知人が死んでしまうと言う出来事は初めての経験だった。


 悲しい。


 なんで?


あり得ない。


現実じゃない。


ない交ぜの感情が頭の中を荒れ狂っていた。






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