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第四話「馬鹿な罠」

 意識が戻ってきた。

 意識が覚めるときは水面から顔を出すようだ、みたいなことを聞くが俺はよく分からない。起きたらそれは既に目が覚めていることだ。その境目なんて味わったことがない。

 触感が戻ってきた。俺は今仰向けで寝ているようだ。ついでに寝ているのは布団か? 少し硬いな。

 そこまで確認したところで俺はゆっくりと目を開ける。

 ……見知らぬ天井がある。

 天井ということはあれか。人様のお家なのか。

 ということは、俺はあの場所から運び出されたというわけか。てか森の奥っぽかったけどなんで見つかったんだろう?

 

 …………あんな爆発をバンバン起こしてたらすぐにバレるわな。

 でもそれにしては俺への拘束とか何もないな。近くに虎の死体もあっただろうし、危険人物だと思わなかったのかな?

 ま、俺に都合がいいし別にいっか。

 と、俺は左手が何かを掴んでいることに気がついた。


「お目覚めですかな?」


 左手でその手の中のものを触りまくって石だと気づいたとき、声はかけられた。

 なんか喋り方とかからジジイを連想する。しゃがれた声だったし。

 首を声のしたほうへ向ければ案の定ジジイが扉を開けたままこの部屋に入ったところだった。

 あれ? 言葉が通じる? と思ったが、まだここが地球の可能性もあることを思い出して納得した。まあ、たとえ地球じゃなくてもカミサマパワー(棒読み)でなんとかしたんだろう。

 

 そんな感じで納得した俺はジジイにいろいろ聞くことにした。


「とりあえずお前は誰?」

「私はこの村の村長をやっております。ワルンと申します」


 ジジイ――もといワルンは薄い赤色の髪を肩まで垂らした老人だった。ちょい白髪混じりだ。

 頬骨が出ていて碌に食事を取っていなさそうだ。体はゆったりとしたローブのせいで見れないが多分ガリガリだろう。

 そんな老人に俺は質問を重ねる。


「ここは……村だったな。なら何故俺はここに?」

「ここはあなたが倒れていた森の近くの村です。森で妙な爆発音が何回もしたので、村の若い衆に確認に行かせたところテグレスの魔物化前とあなたが倒れていたので連れてまいりました」

「テグレス? ってのはあの黄色と黒色のやつのことか?」

「はいそうです」


 俺の問いにワルンは答える。が、少々分からん単語が出てきた。魔物化って…………ワクワクするだろうが!

 とりあえず予想がつくテグレスとやらを聞いたらその通りだった。虎がテグレスって、異世界っぽくなってきたな!

 俺は更に続ける。


「俺を助けたのは礼を言う。だが、何故俺を助けたのだ? 理由が知りたい」


 ここは地球じゃないのだ(多分)。そんなお人よしなことはないだろう。

 ワルンは少し答えるか逡巡(しゅんじゅん)した後、口を開いた。


「…………私たちの村は現在食糧難に陥っています。私の顔を見れば大体予想がつくと思いますが、村の子供たちも満足に食べさせてやれません。しかし、昨日あなたとその近くにテグレスの死体が見つかったのです。テグレスは見たとおりかなりの大きさです。子供たちのお腹も膨れました。あんな幸せそうな顔は久しぶりです。そこで、テグレスを倒したであろうあなたを助けて恩を売り、村の食糧難を助けてもらおうと思ったのです」


 清清しいほどに目的を全部喋ったな。まあ、全部とは言い切れないが。

 とりあえずこいつの目的は俺を助けて恩を売ってこの村を助けて欲しいってことだな。

 残念ながら俺は恩を仇で返す男…………といつもなら言っていたが、今回は勝手が違う。ここがどこだか分からないし、そもそも地球かどうかすら分からない。あまり敵を作るのは得策じゃないだろう。それにどうせ最後にはここも消えてなくなるんだから少しくらい夢見せてやってもいいか。

 俺は頷いて人当たりのいい顔で答える。


「分かりました。助けてもらいましたし。少しの間だけでもこの村に食料を届けます」

「ありがとうございま…………!」

「ただし! 金は要求しますから、そこんとこよろしくお願いします。まあ定価の半額程度でいいですよ」

「…………ありがとうございます」


 俺がワルンの申し出に了解の意思を示すと、わずかに顔を明るくさせ礼を言ってきた。

 が、俺はそれを遮り条件をつけた。金はどの世界でも必要なはずだからな。

 ワルンはしばらく考えた後、不服そうだったが礼を言ってきた。おいおい、そこまでお人よしじゃねぇぞ?

 

「では、私はこれで失礼します。ああ、あなたはしばらく動かないでくださいね。まだ完治とは言えないですから」

「分かりました」


 ワルンはそうだけ言うと部屋を出て行った。最後の態度が最初と違って少し冷たかった。

 そういえば言われて気づいたのだが、体の痛みがなくなっている。会話で昨日俺を見つけたと言っていたが、俺を発見するのに何日かかったのだろうか。とりあえずあれから一日以上経っていることは確定か。


 部屋にある窓から空を見れば青々とした空の端に太陽が昇ってきていた。地球と同じなら午前九時くらいか? 気温的に春っぽいし。

 とりあえず俺は体の調子を確認する。

 肩をグルグルと回し、腰を捻ってみる。異常なし。

 そして次にベッドから降りて立ち上がる。両足で床板を踏みしめたが特に痛みとかはない。片足立ちを両足ともやってみたが、これでも異常は見られなかった。

 ちなみに服装は上下青ジャージで変わらず。

 

 ふむふむ、異常はないように見えるし、それが分かったんなら俺はすぐにでも検証の続きをやりたいのだが…………いたしかたなし。ここで一日は脳内シミュレーションで過ごすか。

 そうと決めてもう一度ベッドへと座る。そういえばここは靴を玄関で脱ぐのか。ワルンも裸足だったし。まあ、いいことなんだけど。他のもあまり日本と変わりがないほうがいいな。食事とか特に。

 

 ギュルルルル~


 食事のことを考えたら思い出したかのように腹が鳴った。そうか、昨日見つけられて運ばれたとしても丸一日何も食ってないわけだからな。腹も鳴るわな。


「ちょっくら飯でももらいに行くか。正直ワルンの飯は食いたくないから外へ行って」


 孤高(ぼっち)を貫いていると独り言が多くなるよね。

 誰に言うでもなく心の中で呟くと、座ったばかりだが立ち上がる。

 床のひんやりとした温度を足裏で感じる。あ、そういえば靴下履いてないし、靴も履いてないな。森のときは襲われてたから気づかんかったけど。

 割と重要なことに気がつきながら扉へと歩く。


 扉の目の前にきたので、扉の取っ手に手をかける。やっぱ現代の扉みたいに取っ手を動かして開けるとかじゃないのね。本当にただの取っ手だわ。

 引く感じっぽいので引いて開ける。廊下のどことなく冷たい空気を肌に感じながら廊下を進む。

 廊下は意外に長く、左右に二つずつほど部屋があった。部屋は多分関係ないっぽいからスルー。

 突き当たりまで進むと左に玄関らしきものが、右にまた部屋が一つあった。


「ワルンはどこかな~っと」


 出掛けるのだから一言くらい家の主に言うのが筋ってもんだろう、と思い俺はワルンを探す。

 俺の見てきた廊下と部屋以外それらしき道は見られなかったのでどこかの部屋にいるはずだ。もしくはどっかに出かけているか。

 まあ、とりあえず全部の部屋見ていなかったら勝手に出てってもいいだろう。何か言われても、あんたいなかったじゃん、とでも言っておこう。え? しばらく動くなって言われたじゃないか、だって? …………俺って最近物忘れが激しいんだ。


 というわけで、一人で突っ込んだり言い訳しながら廊下の突き当たり右の部屋を開け放つ。

 中は質素という言葉がよく似合う部屋だ。

 真ん中に横長の机があり、向こう側とこちら側で机を挟むように椅子が二つずつ。応接間のようなところか?

 しかし、ワルンはここにはいない。

 うーむ、なんか別になんも言わなくてもいい気がしてきたぞ。うん、いいよな、決定!


 ということで早速外へ行くため逆側の玄関へ。

 玄関は日本風に少しの段差があり、靴をここで脱いだり履いたりするのだろう。俺の靴はないため、適当にサンダルっぽいのを履く。裸足だしね。

 そして、いざゆかん! と言わんばかりに玄関の取っ手へ手を伸ばし、その手を止めた。

 何やら扉の向こうから声がするのだ。

 俺はその声を聞くため耳をすませた。

 息を止め、全神経を声を聞くために使う。

 そして、徐々に声は明確に聞こえるようになってきた。


「…………の準備はどうだ?」

「ああ、もう少しで準備も完了する。それにしてもテグレスを倒すとはなかなかやるやつなんだな」

「そうだが、まあ心配はいらない。あいつにはこの村の状況を食糧難に苦しむ村と教えてある。俺のこんな顔も相まって簡単に信じてくれたよ。あの顔は完全に安心しきっているやつの顔だ。とんだ世間知らずがきたもんだ」

「本当だな。得体の知れない人物の言葉を信じ、そいつを助けるとまで言うとは。まあ実力は本物らしいから高く売れるだろうな」


 声の数からして外で話しているのは二人らしい。

 それにしても、俺は騙されてたのか。まあ確かに簡単に信じすぎたか。最低でもワルン以外の人物と会ってからでも判断すべきだった。その時はもう一人の方が来るだろうがな。

 それにしても売るとはな。ここには奴隷とかあるのかな。是非とも欲しいものだ。ほら、奴隷とかロマンじゃね?

 

 っと、こんなのんびりしてる場合じゃねぇな。ちゃちゃっと逃げ出そうと思うけど…………いろいろ話してからでもいいかな? あまりにも情報が少なすぎる。

 うん、そうだな。今日はゆっくりして体の疲れを癒し、情報収集だ。そんで夜になったら逃げる。夜逃げじゃぁ!

 よ~し、そうと決まったら部屋に戻りますかぁ。


 俺はそう行動方針を決めると踵を返す。ここで物音を立てるとかヘマはしない。なんのヘマもなく部屋にたどり着く。

 部屋に入るなり、俺は真っ直ぐベッドに倒れこむ。俺の世界より全然硬いベッドだったせいで少し鼻頭が痛い。このやろう……

 無意味だがベッドを殴りつけて、その硬い感触に拳もやられた。…………俺の馬鹿。

 ベッドの上でゴローンと仰向けになる。

 さあ、ワルンが来たらいろいろ質問攻めにしてやるか。とりま、俺は記憶障害者って設定でいこう。

 俺はやけに子供の声で騒がしい外に耳を傾けながら、食糧難って設定にするなら子供のことも徹底しろよな、と悪態をつき質問の内容を考えるのだった。 





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