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第十八話「やつが来る」

 ゴーレム検証を始めた翌日。イルたちが買ってきた嗜好品――お菓子っぽいものをもらい、またゴーレム検証に励んでいた。

 イルたちにはまた適当にお小遣いをもたせて遊びに行かせている。今日も相変わらず困惑していたが、無視してきた。多分奴隷なのに自由に、しかもお小遣いまでもらって遊んできていいのか、と思っているのだろう。

 まあ、これまでこき使ってきたからな。最近では大量殺人の手伝いもさせたし、疲れてるだろうと思ってのことだ。

 ……なんて考えをするわけあるか。よりにもよって俺が。

 あいつらをブラブラさせてるのは、周りから怪しまれないようにだ。

 今までのことから奴隷はパッと見じゃ分からないっぽい。体に奴隷って分かるような印もなかったしな。

 だからそれらを適当に遊ばせて怪しげな雰囲気をださないようにしているのだ。三人とも――内二人は本当に幼い子供で――宿の裏庭なんて人気(ひとけ)のない場所にいるとか怪しさ満点だろ。まあ人攫いなどを心配して俺が目を離さないってのなら分かる気もするが……

 俺一人なら冒険者だし、組合が事故(・・)で使えなくなってしまったのでここで訓練しています、とでも言えばなんとでもなる。

 そんな理由でイルたちは遊ばせている。まあ、理由なんて言っていないのでついでに好感度も上がってくれればいいな、とも思っている。快く指示に従ってくれるのと、無愛想なのでは気分的に大分違うからな。

 ちなみにイルたちに持たせているのは銀銭一枚だ。結構破格だろ?

 

 さて、少し考えていた部屋を出て行ったイルたちのことはもうよしとして、ゴーレム検証の再開といきますか。

 俺はボーっと座っていたベッドから立ち上がり、のそのそと宿の裏庭を目指して歩き始めた。













 どことなくどんよりとした空気でいっぱいの裏庭。どんよりついでにジメジメもしている。

 こんなにどんよりジメジメしているのは裏庭の狭さが原因だな。

 なんでこんな狭いのかと言うと、ここは建物が密集しているのか、宿と隙間がないくらいの近さで建物が建っている。

 そして宿の左右の建物は奥行きが若干大きく、それにあわせて宿の奥に建物が建てられたので宿の裏に若干スペースが余った。それが裏庭だ。

 つまり、この裏庭は四方を壁に囲まれている。なんか薄暗いし迫力がある。

 そんな感じで、このスペースは元々ないはずの場所に出来た空間なのですっげぇ狭い、と宿のおばちゃんは言ってた。

 ちなみに扉を出て、横が五mほど、縦が三mほどだ。


 さて、変なことを思い出しちゃったな。なんとなくこの狭さにイラついたからかな? どうでもいいか。

 さて今日はゴーレムを維持するのに必要な魔力の縮小方法を探そう。昨日やってみたけど、魔力が少ないからか十分くらいで倒れちゃったからな。

 まあ探すといっても、予想は出来てるけどね。


「そういうわけで、早速やっちゃいますか」


 独り言を呟いて俺はしゃがみ、両手を地面につける。

 昨日のように魔力を地面に流して行くが、今回は昨日よりも狭い範囲に広げていく。もちろん深さも浅くする。

 範囲が狭いからか、魔力と大地を馴染ませるのはすぐに終わった。

 そして、それが終わればゴーレム作りだ。

 昨日と同じように作っていく。

 しかし、今回は前回よりも一つ一つのパーツを小さくする。


 そして、作り始めてほんの数分、身長八十cmほどの大きさのゴーレムが作られた。

 昨日より見栄えもいいな。相変わらず首と手はないけど。

 そして、やはりというべきか、魔力の消費が格段に減った。感覚的には五分の一くらいかな?あくまで感覚的には、だが。

 維持する魔力も減った。これなら五体くらいならいけそうだ。


 想定通りにことが進んだことに内心歓喜し、早速次の行程に進むことにした。

 次の行程とは、土以外のものをゴーレムに変える、というものだ。

 例えば、木を土と同じようにぐにゃぐにゃってして、人型を作って動かせるかどうか、みたいな。

 そういうわけで早速俺はポケットから銅銭を取り出して地面に置く。ちなみにゴーレムは維持にも魔力を使うので今作ったゴーレムは破壊しといた。


「むむっ!」


 そして俺は銅銭が中心に来るように両手を地面につく。両手の間に銅銭が来る感じだ。

 地面についた手のひらから中心の銅銭へと糸を伸ばすイメージで魔力を通させる。

 …………出来た。

 銅銭に俺の魔力が行き渡り、馴染ませていく。

 むぅ、やはり物質が違うと馴染ませるのにも時間がかかるなぁ。

 俺はしばし、銅銭に魔力を馴染ませることだけに集中していた。

 

 数分かかってようやく魔力が馴染んだので、銅銭を人型に練っていく。

 しかし、これがまた難解で、なかなか形がぐにゃぐにゃと変わってくれない。土のときは粘土のごとく簡単に形が変わったのに…………いや、銅――金属がこうも簡単に変形するのがおかしいのか。でも、まあここは異世界だし。魔法あるし?

 っと、集中が途切れた。集中集中……

 ゆっくり、ゆっくりと変わっていく銅銭を凝視して、俺は身長四cmくらいの人形を作っていった。








「で、出来たぁ!」


 十数分ほど経って、俺はようやく小さな小さなゴーレムを作り上げた。

 それは、土とは違い表面がツルツルとしており、わずかに光沢もあった。

 まあ、銅銭から作ったんだから当たり前だよな。

 感動をぶち壊すもう一人の自分にムカッとしながら俺はゴーレムの動作確認に入ることにした。

 

 身長四cmほどのゴーレムは小さいからか、はたまた俺の腕が上がったからか結構綺麗な人型になっていた。相変わらず首と手首から先はないけどね。

 そんなゴーレムに俺は指示を出す。


「歩け」


 ゴーレムは俺の声に反応して歩き始める。

 その小さな体の小さな足を一生懸命動かして歩く姿は何でだかほっこりする。いっちに、いっちに、という掛け声が聞こえてきそうだ。

 そして一mほど進んだところでもう一度指示を出す。

 しかし、今度は声に出さず(・・・・・)に指示を出す。


(止まって右へ九十度回転。そしてまた歩け)


 ちゃんと俺の指示通りに動くのか確かめるために、ちょっと複雑な指示にしてみた。

 結果は、ちゃんと動いた。

 まず俺が心の中で呟いたと同時に歩くのを止めて棒立ちになり、足をよいしょ、よいしょ、と運んで右へ向くとまた歩き始めた。……ほっこりしてるんじゃねぇよ、俺。

 若干心配(九十度、という意味が伝わるかなど)だったが、杞憂だったようでよかった。

 

 にしても、これでまた戦術というか、面白いことが出来そうだな。

 ふふふ、明日が楽しみだな。

 俺は魔力が枯渇寸前の体を引きずり気味になりながら部屋へと戻って軽く食い物をつまんで寝たのだった。











 目が覚めると濃厚な闇が俺の視界を覆っていた。

 アイマスクなんてしたか? なんて考えながら俺は目に手をやるが、その手は肌と瞼の上しか触れない。

 徐々に目がなれたのか周りの様子が見えるようになってきた。

 

「……もう、夜か」


 どうやら周りが見えなかったのはただ単に暗かったかららしい。

 にしても暗いなぁ。今日は曇りか?

 窓のほうを向き、わずかな光すらも届いていない窓際を見てそう思った。

 俺はベッドから降り、部屋にある水の入った桶と手拭いで体を拭いていく。

 たまには風呂に入りたいなぁ、などと考えながら。

 

 体を拭き終わった俺は魔力が全快していることをなんとなく確認すると、爆弾にした銅銭を取り出す。

 そしてそれを床に置き、挟むように両手を床に着く。

 魔力を床から流して行き、銅銭へと届かせ…………っ!?

 俺は視線を感じてバッと後ろを見た。そこには……


「あにきぃ、おきたの?」


 寝ぼけ眼のイルが立っていた。

 そういえば俺はこいつらが帰って来る前に寝たんだっけか。ったく、驚かせんなよ。

 俺は安心して息を吐くと返事をする。


「ああ、ばっちりだよ。お前はまだ眠いだろう、寝てろ」


 スラスラと言葉を紡ぎ、俺は銅銭の方へと向き直る。

 後ろで、うん、と返事をする声と、ベッドに倒れこむ音を聞いてから、俺は全神経をを銅銭へと集中させた。

 …………あ、鍵。

 せっかくの集中が台無しになった。


 


 鍵――というか閂――をしてからまた銅銭の前で胡坐をかいて座り、両手を床につく。

 さぁ、仕切りなおしだ。

 俺は改めて銅銭と向き合い、魔力を流し始める。

 二度目だからか、結構スムーズにことが運び、思わず表情が緩む。早くなれば早くなるほどたくさん手が打てるようになるからな。もっと言えばたくさん殺せる……

 俺は一瞬、あれ? 今の俺って快楽殺人者? と疑問に思ったが、違う違う害虫を駆除してるだけだって、と考えを改めた。

 

 っと、雑念は捨てませう。雑念があっては良きものは作れませぬぞ!

 そして俺は一切の考え事をなくしてぐにゃぐにゃになった銅銭のみを見つめていた。てか俺って作る前に毎回雑念入るよな~、などとどうでもいいことをたまに考えながら。

 



 そしてゴーレムは完成した。なんだか前よりも凛々しく感じる。のっぺらぼうだけど。

 俺はとりあえず城に向かわせようかなぁ、と考えて一つの懸念を抱いた。


「お前、俺に何かを伝える事は出来るか?」


 例えば遠く離れたところから爆破しようと思ったとき、いつゴーレムがその場所につくか分からないじゃん。もしかしたら道中で人に踏み潰されたりするかもしれないし。

 しかし、そんな懸念は杞憂だったようだ。俺の頭の中に肯定を示す何かが流れ込んできた。

 う~ん、なんだろうか、これは。念話とは違うし、でもなんとなく肯定してるのは分かるって感じだ。

 とにかく通信手段はできたっぽいな。

 ということで早速指示を出す。


「城の前の門の近くに貼り付け。出来るだけ門に近いところな。ただし、人に見つかるな。もし見つかったらすぐに俺に知らせろ。それも出来るだろ?」


 俺がそういうと、やべっ見つかった! みたいなものが流れ込んできた。う~む、なんというか、これは……絵を見せられてる感じだな。

 ま、それはいいや。とりあえず連絡手段は完璧っぽいな。よし、おーけー。

 というわけで、


「んじゃ行って来い。ついたらちゃんと連絡するんだぞ~」


 そう言うとゴーレムは、ラジャー! みたいなものを俺に伝えてから窓から出て行った。銅だから頑丈なのかな。

 と、そのとき、俺はふらっと体が傾いて倒れそうになった。


「っと、あぶねぇ。魔力切れか?」


 俺は足を踏み出し、なんとか倒れるのを阻止する。

 しかし、なんでふらっときたんだ? 魔力切れではないし…………

 なんて考えていたら唐突に激しい痛みが俺を襲った。


「っ!? うぐっ……」


 たまらず俺はその場に(うずくま)る。


 マジか……まさかここにきて……


 俺はこれが何かを悟っていた。


 これって……まさか大量殺人した罰なのか……?


 痛みで意識が朦朧とし始めた頃、体が弱っていたからか、そんな弱音を吐き始めた。全く、俺らしくない。

 しかし、痛いものは痛い。てか結構意識が飛びそうになるほど痛い。

 こんな痛み小学四年くらいの給食以来だぞ。

 俺は玉のような汗を垂らしながら床を這う。


「ト……レ……行か……尻…………かい……」


 本当にまさかだよ。














































 異世界にきてまで食あたりにあうなんて………… 

 

 

 








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