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第十四話「薬草テンプレ」

「大して面白くなかったわ~。もっとピカーッ! って光るかと思ったのに。ファンタジーだろ? もっと派手にいかんかいボケ!」


 すげぇ理不尽なこと言いながら俺は宿へと向かっている。

 冒険者登録はあの後も滞りなく進み、本当に市役所とかの手続きみたいな感じで終わった。受付の女性には、理解が早くて助かります、なんて言われたけどこの世界っておつむが弱いのかな?

 まあ、それはおいといて。『契約』は言われたとおりの内容のみ(・・)了承した。なんか一応そういうこと言っておかないと危険な気がするからね。


 そして『魔力属性』の検査は面白いことが分かった。

 俺の爆破の能力(もう能力って断言しているところがちょっとイタイ気がする)は『孤立魔法』っていうらしい。

 ………………ウェイトウェイト。言いたいことは分かる。しかし、落ち着こう。

 『孤立魔法』。これは俺の認識しているいい方だといわゆる『ユニーク魔法』と言う事だ。

 確かに同じ意味だよね。ユニーク、唯一とか独自って意味だし。孤立ってのも言い換えれば、一つの、とか、それだけ、みたいな意味になるもんね!

 …………いいもん、いいもん。今は奴隷がいるし。一人じゃないし…………独りじゃないし!

 

 ま、『孤立魔法』は置いといて『魔力属性』だ!

 これがいいもん見れた。俺は土属性の魔力も持っているらしい。しかもちゃんと実践で使えるくらいのものを!

 聞いたところ、○属性の魔力って言っても様々らしい。チョビッとしか使えない人もいれば、超広範囲を攻撃できるほどの人もいる。俺は後者(ドヤァ)。

 ついでだけど、魔法使いってそこそこいるらしい。大体世界の人族だったら半分くらい。まあほとんどはさっきの前者であるが(勝ち誇った笑み)。

 そういえば、遅れたが『孤立魔法』は無属性の魔力らしい。

 無属性ってのはやっぱ珍しいんだって。ふふふ、俺の時代きたか?!

 聞いたところでは、神々が与えた六属性のどれにも当てはまらないもの、らしい。

 …………俺、異端者審問とかにかけられないかな? もしそうなったら自爆してやる! ……そこそこ冗談に思えないのが怖い。

 

 閑話休題。ちなみに閑話休題って逸れた話を元の流れに戻す、みたいな意味らしいぞ。余談を止めましょう、みたいな。ってこれこそ余談……

 さて、俺の土属性の魔力についてだ。

 これは俺のやりたいことが出来そうだ。

 俺のやりたいこと。それは………………ゴーレム兵団!

 ゴーレムって死とか痛みとか恐れないで忠実に命令をこなすじゃん? これ以上優秀な兵士はいないよ? まあ、臨機応変に動けないとか俺の知らない不都合があると思うけど。

 で、それに関して聞いてみたら、


『土属性でごーれむ…………ああ、『ポルシャダール』の魔法で出来る動く人形のことですね。ええ、ありますよ。ただ、あれはすごく魔力を使うのでお勧めしませんよ。あの形を維持するのに魔力を注ぎ続けなければいけないそうですから。しかも距離が離れれば離れるほど、放出する魔力の量も増えるとか。なので土属性魔術師は敵が接近してきたときの壁として使うことが少々ある程度ですね』


 とのことだ。

 すっげぇ長いから要約すると、魔力、多い、効率、悪い、数、少ない、お勧め、無理、って感じか。何故に片言……

 だがしかし! 俺は使うぞ~。あのときの神からの啓示を俺は忘れていない!

 魔力タンクで無双しんしゃい。

 大丈夫。俺には底なし沼のごとく魔力がある(増える)はずなんだから…………

 ま、ないこと前提で行動するけどね。

 え? 神の啓示? 神が怖くて世界を滅ぼせるか!

 

 なんて考えている間に宿にとうちゃ~く。

 すぐに宿へ入ろうと扉の取っ手を掴み、


「…………俺、宿に帰ってなにするつもりなんだ?」


 ふと、そんなことを思った。

 だが、考えてみると確かにそうだ。

 飯は朝夕の二食。つまり昼の今は飯がない。

 そして別に宿でやるべきこともない。

 つまり、


「……完全に無駄足か……」

「なぁ、開けないの?」


 うぐっ! 隣から純粋に不思議がって覗き込んでくるイル。こいつ大分打ち解けてきたな。まあ、敵意は半端ないけど。いつか殺意に成長しないか心配です。そんなことになったらせっかくの駒が死ぬからなぁ。

 と、それはいい。今はどうやってさりげなく宿を後にするかだ。

 俺はやや上を向いて喋りだす。


「あ! そ、そうだ! せ、せっかく冒険者になったんだし、依頼でも受けに行って来るか! そうだ、そうしよう!」

「…………」


 イルの視線が痛い……ここで拳骨でもすればいいのだろうが、これは完全に俺が悪いからなぁ。どっちも悪くなかったら容赦なく殴り飛ばせるけど。

 とりあえずこの視線から逃れるために俺は早足でその場を後にした。











「さて、どれにしようか」


 俺は現在冒険者組合で『十位』推奨(すいしょう)の依頼を見ている。

 冒険者組合に入ってきたときは、またなんですぐに帰ってきたんだ? って感じで受付に訝しげな顔をされた。恥ずかちい。

 にしても…………字が読めねぇな。

 うん、なんとなく眺めてるけど字が読めん。頭パニック。


「なんの依頼受けるんだよ」

「え?」


 突如横から聞こえるハイトーンボイス。

 その声の主は誰かと言えばイル。いつの間にか俺の隣で俺を見上げてた。


「だからどんな感じの依頼を受けるんだって聞いてんの」

「おう、外に行く感じの依頼だな」

「分かった………………これとかどうだ? 『ジョウロの納品』だってよ。期日は無制限。報酬はジョウロ一本につき鉄銭五枚」


 なんか素直に依頼を選んでくれてる。え? どうした? 急に。どんな心変わりしたんだ?

 俺がすっげぇ不思議そうに見てたら何を勘違いしたのか説明しだした。確かにジョウロも気になるけどね? しかも、ジョウロの部分だけやたらと発音が英語っぽかったし。てか魔法の名前とかもそうだけど、カタカナ表記っぽいのってなぜか英語風なんだよな、発音が。


「ジョウロってのは薬草のことだよ。奴隷商人が喋ってるのを覚えてた」

「お、おう。んじゃそれ行ってみるか」


 とりあえず冒険者になって最初の依頼、薬草を取ってくる、はテンプレだしそれを受けることにした。 
















「はい、冒険者になってきました」

「チッ、分かった。言っていいぞ。ただ、日が沈んだら入れねぇからな」


 太陽が真上に昇ったあたりの時間。俺は依頼を達成するために城門に来ていた。

 俺が外に出たい旨を昨日と同じ兵士に伝えると、兵士はニヤッと(いや)らしい笑みを浮かべ、また金目の物を要求しようとした。

 俺はそれに被せるように登録したときにもらった免許証ほどの大きさの板を見せたら苦虫を噛み潰したような顔をして通してくれた。

 にしてもあのやろう、俺に聞こえるように舌打ちしやがって……ぜってー後悔させたる!

 心にあの兵士の顔を書き残して、草原へと出た。

 




 道中(といっても道なんてなくて、ただの草原だが)、俺は軽く実験していた。


「まだまだわかんないことだらけだからなぁ」


 手の中にある銅貨を指でピンッと弾いてパシッと取る。よくある西部劇みたいに。

 おほ! 今決まった! 今のかっけぇ! 絶対あれはかっけぇ!

 なんか上手く弾いてキャッチをすることが出来たことにはしゃいでいると横からの冷たい視線を感じた。

 

「…………」

「さ、さて、銅貨とかも爆弾に出来るのかな~っと」


 イルの視線を努めて無視して独り言を言う。いや、イルの冷たい視線ってこう、あれなんだよな。イタイっていうか、心が痛いっていうか……

 とまあ、それは置いといて切り替え!

 銅貨は爆弾に変える事が出来るのか? 今日はこれについて考えていこうと思います。どこの先生だよ。

 まあ、小枝とか石以外の物質でも一応やったことあるから出来ると思うけどね。てか正直金を爆弾に変えるとか勿体無くてあんまやりたくない。

 けど、金以外にやるもんがねぇからしょうがない。冒険者の板? 馬鹿じゃねぇの?

 

「ま、とりあえずやってみましょうか」


 変なことは考えずにとりあえずやってみる。何事も行動だよ(キラッ

 グッと握り締めて待つ。ちなみに(あゆ)みは止めない。

 それと、さっき西部劇の真似事なんてやってたのは城門からみられるのを防ぐため。ほら、よくあるじゃん? 魔力を感知した! みたいなの。だからある程度離れるまであ え て! やっていたわけ。俺カッコイイなんて思ってたんじゃなくて、あ え て! ここ重要。

 なんて考えているともう五秒が経とうとしている。時間が経つのは早いなぁ。ん? 今のはどっちかっていうと俺の思考速度の方が早くねぇか? ……ハゲドー(激しくどうでもいい)

 そして五秒が経って、魔力が吸い出される。


「お、お、うぉおお?!」


 最初のほんの一秒にも満たない時間は石と同じだったんだけど、それを越えた辺りから一気に持っていかれた。

 え? 何? エル○ック兄妹? 右腕と左足持って行かれるの?

 未知の体験で馬鹿な方に思考が流れるが、すぐに戻ってきた。よく考えれば持ってかれてるのは魔力であって体ではないじゃん、みたいに。

 そして一秒半ほど吸われ続けてようやく止まった。体感だからもしかしたらもっと短かったかもしれないし、長かったかもしれないが。

 それにしてもやべぇ、体だりぃ。立つのも億劫だわぁ。……まさか、これが噂に聞く魔力の枯渇か?! ……噂っていうかラノベ情報だけど。

 とりあえず本当に体が動こうとしないのでその場に座る。座るってか倒れる感じだな。

 にしてもこれ、あれだな。無茶苦茶運動した次の日みたいな感じだな。体の中っていうか体の芯が重くなった感じ。

 かなりだるくて胡坐をかいてうなだれてるとイルが話しかけてきた。


「どうした? 急に座ったりして」

「ああ、ちょっと魔力が枯渇したっぽい」


 勘だけどな!

 そう言うと(勘だけどな、は心の中で)イルは、え?! とめっちゃ驚いたような顔をした。

 

「え?! ちょ、それ危なくない?! 魔力が枯渇って……俺らどうなるの?」

「いや、知らんがな。てか魔力の枯渇ってそんなにやばいのか?」

「すげぇやばい。魔力がなくなるとある程度回復するまで身動きが取れなくなるって聞いた」

「マジで?!」


 そりゃ、ちょっとやばいな。いくら草原で何もないからと言って動けずにとどまるなんて…………あ、そうだ。

 いいことを思いついた俺は早速、どうしよう、とか呟いているイルに言う。


「よし、イル。俺をおぶれ」

「は?」

「いつも思うけど、は? はないだろ。てかおぶれ。意味が分からないのか? おんぶしろってこと」


 ちなみに俺身長百七十五cm。イル、おおよそ百四十cm。十歳くらいでこれはでかいのか?

 まあ、普通に考えたらおんぶする方とされる方逆だけどな。イルは力あるし大丈夫だろ。

 イルは少しの間躊躇(ためら)っていたが、俺の考えを理解したらしく渋々といった感じで背を俺に向けてしゃがんだ。


「遠慮なく~」

「ぐっ、よいしょ、っと」

 

 俺は遠慮なくその背に飛び乗った。

 乗った瞬間はイルも、ぐっ、ってなったが普通に立ち上がっていた。さすが獣人。

 イルは俺の太ももあたりをガッチリ掴んで落ちないようにすると歩き出した。俺もイルの首に手を回して落ちないようにする。


 さて、一旦落ち着いたところで先ほどの考察といきますか。

 まず銅貨を握って五秒経ったときに魔力は吸われた。これは石と一緒。

 違うのは魔力を吸われ始めてコンマ五秒後くらいだ。そのときから石とは比べ物にならないほどの魔力が吸われた。例えるならお風呂の栓を抜いて水を抜いてるときにお風呂に栓をしていた穴よりも大きな穴が空いた感じ。これによって数倍の速度で水が減った、みたいな。このとき水が魔力で、穴が魔力を流している量? みたいな感じ。

 ここで問題なのは、なんで吸い取られる魔力が多くなったのかだ。

 考えられるのは、物質によって爆弾に変える魔力の量が違うっていうのかな。この場合爆発の威力がどれだけ変わるのかとか重要になってくる。だって魔力の消費が多いのに威力が同じとかめっちゃ損なだけだし。

 まあ、爆破実験は森でやろう。思ったより威力が高くて巻き込まれるとか嫌だし。

 

 と、いろいろ考えている間に森が見えてきた。気付けばイルは俺を背負ったまま走っていたのだ。え? こいつ何? いくら獣人でも六十kgある俺の体背負ってこの速度は……

 いろいろ思うところがあったが、それに目を瞑り一旦考え事を止める。


「よ~し、森についたら降ろしてちょ」

「分かった」


 ちなみに妹の方はちゃんとついてきている。飯食ってちゃんと寝て万全の状態だからか、全然息を切らしている様子はない。……獣人は化け物か?! こんな六歳くらいの子供が時速三十kmくらいの速さで走り続けるって…………

 驚愕していると、本当にすぐに森についた。

 俺はさっき言ったとおりイルの背から降りる。


「大丈夫なのかよ」

「お? 心配してくれてんのか? うお! デレ期キタコレ!」

「…………」


 お約束ともいえる、心配してるけど心配なんかしてないというツンデレさん! の会話をしようとしたけど、ゴミを見るような目で見られた。殴ったろかこいつ……

 とりあえず、主人にそんな目するな、と拳骨を入れてから歩き出す。

 

「あ~、足、重! なんだこれ、パワーアンクルでもつけてたっけ、俺?」


 あまりの足の重さに独り言を言う俺。この動きの遅さは冬の朝、布団から出るときくらいの遅さだわ。

 魔力か……瞑想とかしたら回復しないかな? うん、試してみる価値ありだな。早速やろう。

 俺はあぐらをかいて座り、目を瞑る。背筋をピンッと伸ばして頭を空にする。もともと空だけどね、ハハハハハハッ!

 イルの訝しげな雰囲気がなんとなく分かるが今は無視だ。魔力の回復をするんだ。

 え~っと、こういう時って何があったっけ? 確か…………周囲にある魔力を感知してそれを取り込む。体の中の魔力の流れを活発にして回復を早める。何も考えずに心を沈めて自然に増えるのを待つ。こんなもんかな。

 とりあえず一番やれそうな何も考えないをやってみるか。






 ……………………






 ………………





 …………





 ……







「うん、よくワカンネ」


 俺はスッと立ち上がる。

 う~ん、回復したかと思えば回復したかもしれないし、変わんないと思えば変わってないとも思うし…………微妙!

 ま、時間経過と共に回復するでしょ。


「ということで、しばらくはここで検証&実験するぞ~」

「またあの爆発するやつ?」

「おう。お前らにもちょいと手伝ってもらうからな」

「……妹に危険なことやらせるなよ」


 俺は、わ~ってる(分かってる)、と手をヒラヒラと振って返事をした。

 さぁて、また一つ自分の力を確かめることができそうだ。













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