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【第18話:悲しみの扉を開ける鍵】


 ゲームが始まって七日目。この日が終われば悪魔に勝利することが出来る。

今日が終わるまで残り三時間。


「何してるんや!はよ来い!」


勝が、立ち止まる真里菜に声をかける。


「先に行ってなさい。このままだとまとめてやられてしまいますわ。」

「時間稼ぎする気か……!せやったらおれが…!!」

「あら、心配でもしてくれているのかしら?相変わらずのおバカさんね。あなたには、正義くんを屋上に連れていくという重要な役目があるでしょう。あなたの出番にはまだ早いですわ。今は私のショータイム。順番を守りなさい。」


勝が真里菜を見つめる。真里菜は後ろを向いたまま、勝の方を振り向くことはない。


「大丈夫。すぐに行きますわ。あなたと違って私、遅刻はしないの。」

「このアホ……!」


勝は先に行った正義を追って走り出す。

しばらくして、悪魔が真里菜のところへやってくる。

真里菜は階段の一番上の段に脚を組みながら座って悪魔を待っていた。


「遅かったですわね。どこかのおバカさんみたい。」

『これはこれは早乙女さん。それはあなたの彼氏のことかな?』

「彼氏……?」

『福地くんのことだよ。付き合っているのではないのかね?』

「……誰があんなおバカさんと。私はお嬢様ですわよ。あんなおバカさんと一緒にしないで。」


少しの沈黙のあと、真里菜が会話を始めた。


「あなた、彼女はいないのかしら?」

『いないね。』

「好きな人も?」

『いない。』


真里菜はフフフっとお嬢様らしく笑った。


『何がおかしい?』

「失礼。可哀想な子だと思って。」

『なんだ……お前までおれを馬鹿にしてるのか?』

「いいえ。でも、人を好きになったことがないなんて、可哀想ですわ。良いものですわよ。人を好きなるってことは。」


それを聞いて悪魔もフフフと笑い返す。


『私もお前を可哀想に思うよ。今からそんな私に消されてしまうのだからな!』


しかし、真里菜は動じなかった。


「あら、そう?私はそうは思わないわ。あなたと違って、心配してくれる人がいるのですから。ああ、なんて幸せなんでしょう。」

『強がりめ……!!』



――



「勝……。真里菜は……。」

「……残ったよ。」

「そうか……。」


正義と勝と千尋の三人は、屋上へ向かう。三人は屋上まであと少しのところへ来ていた。


「あとちょっとや……!!」


そのとき、後ろからあの声がした。


『屋上まで、あともう少しだね。』

「あかん!!もう追いついて来よった!!」



『私も、あともう少しだよ。残りは、君達三人さ。』


三人の後ろに、悪魔が追いつく。もう悪魔は手の届く距離まで来ていた。


『次のターゲットは……そうだな。君だ。平良正義くん。』

「……!?消えた?!どこへ……!」


悪魔が一瞬にして正義の視界から消えたと思うと、その次の瞬間にはもう正義は背後を取られていた。


「正義くん、あぶない!!」

「千尋!!」


千尋が正義を突き飛ばす。悪魔の目の前に、千尋が飛び出して来た。


「正義くん……!!」




 千尋は、正義とは小学校からの仲である。小学校の頃の千尋は、嫌なことを嫌とは言えず、よく周りからいじめられていた。でも、そんなときにいつも守ってくれたのは正義だった。当時は、自分がしっかりしていないせいで、正義に迷惑をかけ、申し訳ないと思っていた。


「正義くん、ごめんね。私が嫌って言えないせいで、いつも迷惑かけちゃって。」

「気にすんな。それがお前なんだから、別にいいだろ。」


正義は千尋にいつもそう言っていた。それが、千尋にとってどんなに嬉しかったことか。今ではいじめられることはなくなったが、その言葉は今もまだ鮮明に覚えている、彼女にとって大切な言葉であった。


――


「待て!悪魔!その子に近寄るな!!もう、おれたちの負けでいいから!!」


正義が悪魔に向かって叫ぶ。正義は、千尋だけは失いたくなかった。


「ダメよ、正義くん……。この一連の事件の犯人を……この悪魔を……悲しみから救ってあげて。」


悪魔が千尋に手をかざす。


「や、やめろ!!やめてくれ!!頼むから!!」

「それが出来るのは……きっと――」


パチン……。


「……!!くそっ!!」

「走るで!正義!!屋上までもうちょいや!」


二人は必死に走った。悪魔との距離を少し離すことが出来た。

 そしていよいよ、屋上へと続く階段まで到達した。


「屋上の鍵は開いとるか?」

「ああ、やった!開いてるぞ!!」

「さよか……。

 ――なぁ、正義。」


勝が正義に神妙な面持ちで話しかける。


「お前、先行っとけ。」

「な……何言ってるんだお前まで……一緒に逃げ切るぞ!!」

「一対一の方が話しやすいやろ。」


勝の覚悟は本物だった。もう、心に決めているという様子であった。


「大丈夫や。このゲームが全部終わったら、一緒にメシ行くで。約束、忘れてへんやろな?」

「……ああ。気をつけろよ。」


正義がそう言うと、軽く手をあげ、勝は階段を降りて行った。




『おやおや、待ち伏せをしている人は居ても、そっちからやってくる人は初めてだ。噂通りのおバカさんのようだね。』

「そうやでー、ほんまおバカさんで困ったもんやわ。でもそんなおバカさんでもここまで逃げられたご褒美に、お前の正体……見せてくれへんか?」


悪魔は少し間を空けて、黒い布をゆっくりとおろし、顔を出した。


「やっぱり、お前やったか……。」

『分かっていたのか?』

「おれやない。分かったんはあいつや。」


勝は両手の拳を握りしめ、戦闘態勢に入る。


「お前が正しいとか、間違うてるとか、おれは言うつもりはない。ただな……この先におるやつと、自分のしたこと、もっぺん真剣に考えてみぃや!」


悪魔と勝が対峙する。悪魔はニヤニヤしている。


「後は頼むで……正義。」


パチン……。



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