【第14話:見ぃつけた】
ついに五日目の朝を迎えた。ゲーム終了日まであと少し。
残っている人数は、現在14人である。
「ねえ、沙綾……昨日のことだけど……。」
「いいの。気にしないで。」
直子が沙綾のことを気にかける。
沙綾は、隣の中学校の柏木くんと付き合っている。小学校からの仲で、付き合い始めたのは中学校に入ってからである。二人ともとても仲が良かった。性格の相性もバッチリで、喧嘩もほとんどすることはなかった。毎日放課後に会うようにしている。
そんな仲良しカップルであったが、沙綾には柏木くんに秘密にしていることがあった。
「でも、黙って引っ越すのは良くないよ。」
沙綾は、今年度の終わりに他県へ引っ越すことが決まっていたのだ。生まれたときからこの地で育ってきた沙綾にとって、それはとても苦しく辛いことであった。何より今までの友達や、そして柏木くんとの別れがどうしようもなく辛かった。沙綾自身が辛いのはもちろんのこと、柏木くんにそういう思いをさせてしまうことが嫌だったのだ。
「わかってるよ、でも……。」
「大丈夫だよ。柏木くんなら、もっと早く言って欲しかったって言うと思うよ。言われて突然居なくなっちゃうより、それまでに楽しい思い出をたくさん作る方がいいんじゃないかな。今はこんなことになっちゃってるからあれだけど、このゲームで逃げ切れたら、ちゃんと言おうよ。」
「うん、ありがとう……。」
そこに、香と雅美が合流した。
「あー!!直子ちゃんと沙綾ちゃんだー!!」
「あ、雅美……と、香ちゃん。無事だったんだね。」
「あのねー、今みんなで体育館に一回戻ろーって話になってたんだ!!昨日の放送聞いてから……。」
雅美が、本を読んでいる香の方を振り返る。
「香ちゃん、なんだかずっと怒ってるんだよねー!!」
直子と沙綾はそれほど香と話をしたことはなかった。印象としては、いつも本を読んでいる子、というだけであった。その子が、怒っている。見た目はいつも通り本を読んでいるだけなのだが、とてつもないオーラのようなものが彼女から感じられた。
「そ、そうなんだ……。じゃあ、とりあえず戻ろうか。」
「――……暴いてやる。」
「え?」
「悪魔の正体を、B組全員で必ず暴くのよ!!!」
香が読んでいた本を閉じて叫ぶ。直子と沙綾は、香が本当はこんな子だったということを初めて知り、動揺を隠せないでいた。
そのときだった。
四人の前に、悪魔が現れたのは。
「黒い服……!!まさか……!!」
「に、逃げるわよ!!四人バラバラに!!一人でも多く、助かって!!」
香がそう叫ぶのを聞き、四人はそれぞれバラバラの方へ走って逃げ去った。
『まとめて消してやろうと思ったのに……。まあ、いい。それならば……。』
悪魔はターゲットを一人に決めたようであった。
「――ハァ、ハァ……。」
みんな全力で走った。体育でだって、こんなに全力で走ったことは無い。
運動は好きであったが、いつまでも体力が持つわけではない。事態が落ち着くまで、どこかに隠れようと考えた。
直子は一人、女子トイレの個室に隠れた。
「みんな逃げ切ったかな……。」
次々とクラスメイトが消されていく中で、思ったよりもみんなそれほど現実味を感じていなかった。例えば、死体などが残されていれば、自分がいつかこうなるかもしれないということをイメージできたのだが、消された人は一切跡形もなく消されてしまっている。そのため、消されるということがイメージしづらかったのである。
しかし、悪魔と初めて対面し、消されるかもしれないという恐怖を一度味わったことで、体の震えは止まらなくなっていた。
「ハァ……ハァ……もう嫌だよ……帰りたい……。
助けて、おばあちゃん……。」
直子は、胸ポケットに閉まっていた生徒手帳を取りだした。
そこから一枚の写真を取り出し、握り締めて祈る。
その写真は、直子とおばあちゃんが写ったものであった。
――どれだけの時間が経っただろうか。辺りはすっかり暗くなっていた。
直子は、トイレの中で眠ってしまったようだった。
「しまった……。みんなはどうなったんだろう。確か、体育館へ行くって言ってたよね。私も行こう。」
直子は恐る恐る、個室のドアを開ける。
悪魔は居ないようだった。夜のトイレというのはどうにも怖い。
悪魔だけではなく、お化けが出てきてもおかしくないような雰囲気であった。
そして、女子トイレのドアを開け、廊下に出る。
廊下は電気もついていなく、真っ暗であった。
「怖……。早く体育館に行こう。」
体育館に向けて、歩き出そうとしたその時だった。
ポン。
誰かの手が肩に乗った。
「沙綾……?」
振り返ると、そこに沙綾は居なかった。
そこに居たのは……。
『見ぃつけた。』




