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【第12話:積み上げるほど壊れた衝撃は大きくて】


 今日でこのゲームも四日目を迎える。クラスはバラバラになったまま、広い体育館には正義たちの四人と、鰐淵と妻鳥を合わせて六人しか居ない。

他のクラスメイトたちは、それぞれ寝る場所を見つけて各自で寝たようであった。

昨日の夜から、今朝にかけての一番の話題はひとつだった。


「前神が、悪魔じゃない……?!」


薬師川と鰐淵の予想に反して、前神が悪魔に消されてしまった。口には出さずとも、前神が怪しいと思っていた人は他にもいた。


「もう誰が悪魔か全く分からんようになったで……。」

「悪魔を決めつけるのは良くないが、誰が悪魔か見当がつかないというのも危険だな。」


正義と勝は頭を痛めていた。確固たる証拠は無かったものの、誰が一番悪魔の可能性があるかと聞かれれば、二人とも前神と答えていただろう。その有力候補が消されてしまったのだ。


「くそ……どうなってるんだ!!悪魔は前神じゃなかったのかよ!!」

「お、落ち着け、薬師川……。」


 薬師川が予想を外し、取り乱していた。他のクラスメイトも前神のことを疑っていたものの、薬師川ほど大きな自信を持っていたものは居なかった。予想に自信があればあるほど、それが外れたときの反動は大きい。薬師川を指山がなだめ、それを村主と野波は黙って見ていた。悪魔が分かり、逃げ切れるという確信があっただけに、今後のことを考えると四人は皆不安で仕方がなかった。そんな中、野波が誰かが廊下を一人で歩いているのを見つけた。


「あれは……江畑?」


野波は、一人で江畑を追いかけてみた。


「おーい!江畑ー!」

「え……?野波……くん?」


江畑が驚いた様子で野波の方を振り返る。江畑が自分の名前を友人に呼ばれるなんて、久しぶりのことであった。


「一人で歩いてたら、危ないぞ。お前、いつも一人でいるけど、こんなときぐらい誰かと一緒に居ないと……。」

「それは、野波くんもでしょう?もし私が悪魔だったらどうするの?」


野波はそういえばそうだという顔をした。江畑はそれを見て思わず笑ってしまった。野波も、つられて笑っていた。


「心配してくれてありがとう。でも、私、友達居ないから。」


それを聞いた野波が呆気にとられた顔をしている。


「えっ?そうなのか?おれはてっきり、一人で居るのが好きな人なのかと……。」

「ううん、そんなことないよ。野波くんは、いつも友達と一緒で羨ましい。人付き合いが上手だもんね。」


江畑が悲しげな目をして顔をうつむかせる。


「そうか……。おれは、江畑が少し羨ましくもあったけどな。」

「えっ?どういうこと?」


友達の多い野波がそんなことを言うということが、江畑にとっては意外であった。


「おれ、友達は多いかもしれないけど、親友って呼べるやつは、一人も居ないんだよね。みんなと仲は良いんだけど、結局そこまででさ。人の意見に合わせていれば友達は作れるけど、自分の悩みとかを相談出来るような親友ってなかなか作れなくてさ。」


江畑は、こんなに悲しい顔をした野波を初めて見た。いつも誰かと一緒に居て、楽しそうな顔をしているところしか見たことが無かったのだ。


「だから、時々友達に合わせるのが疲れちゃって、一人になりてー!!って、思う時があるんだよね。江畑も、下手に友達がいても疲れるだけだから、一人でいるのかと思ってたよ。だから、そういうことを出来る江畑が羨ましいなって。」

「私は、違うよ。友達も本当は欲しいんだ。でも、どうやって作ればいいかよく分かんなくて。確かに一人で居るのは楽だと思う。誰の意見も気にせずに、自分のやりたいことをやりたいようにできるから。でも、やっぱね、ずっと一人は寂しいよ。」


友達を作るのが上手な野波と、友達を作るのが下手な江畑。

お互いがお互いのことを羨ましく思っていた。


「へー、なんか、江畑がそんな風に思っていたなんて、ちょっと意外だな。」

「そっちこそ。野波くんの方が意外だよ。」

「アハハ、そうかな?なーんか、お互い大変なんだね。」

「うん。友達が多ければ良いってわけでもないし、少なければ良いってわけでもない。人間関係って、難しいね。」




『そう。人間関係は難しい。』


「なんだ?!」

「誰?!」


野波と江畑が二人で話しているところに、その声は突然どこからか聞こえてきた。


『まるで、高い高いビルを建設するかのように築くには時間がかかる。

 強く、固く築くには、何年も何十年もかかるのに。

 ――壊れるときは、本当に一瞬だ。』


黒い服を着て、黒い布を被った人が野波と江畑の後ろにどこからともなく現れる。


「この声は……悪魔……?!」


『無情だと思わないかね。要らなくなったビルは、ボタン一つで爆破解体だ。

 築き上げていればそれだけ、壊れたときの衝撃は……』


悪魔はゆっくりと、二人に手を向ける。


『耐え難いものだというのにさ。』


パチン……。




――――ガガッ……ブー……。


『今日の校内放送の時間です。』


悪魔からの放送が始まった。みんなが意識を集中させる。この放送だけは、何回聞いても慣れないものであった。


『野波 真平、江畑 良美、消滅完了。残り、14人。』


またクラスメイトが二人消されてしまった。残っている生徒は14人。


「クソ……!みんなで一ヶ所に集まっても、バラバラになっても消されてまう……。こら早よ悪魔が誰なのか突き止めんと、全滅させられてまうで……!!」


『さて、2年B組の皆さん。今日でもうゲームが始まって四日目です。』


今日の悪魔の校内放送は、いつもの犠牲者を報告するだけのものとは違っていた。

四日目も終わりに近づき、ついに悪魔が語り始めた。


『ここまで逃げ延びている皆さんには、特別に教えてあげましょう。』


「何やと……?」


『私がこのゲームを、始めた理由(ワケ)をね。』



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