デスロック
デスロック、してますか?
人は、暗闇を恐れる。
だが、本当に恐るべきは、暗闇そのものではない。
暗闇の中で、静かに呼吸を合わせ、あなたの生活の隙間を測っている者たちだ。多くのセキュリティ会社は、抑止という名の幻想を売る。
センサーが光り、警報が悲鳴を上げ、巡回車が現場へと駆けつける。
「侵入を未然に防ぐ」――その言葉は、まるで魔法のように響き、顧客の不安を一時的に鎮める。
しかし、犯罪者には、善悪の区別などない。
罪悪感という重荷を、最初から背負っていないのだ。
一度、窓を砕いて侵入した家。
新しいガラスを嵌め直したその同じ窓を、彼らはためらいもなく再び割る。
中に盗むべきものが何一つ残っていなくとも、構わない。
ただ物色し、生活の痕跡を漁り、満たされない何かのために、再び足を踏み入れる。
警備員が駆けつけても、犯人が捕まることは稀だ。
彼らは影のように消え、別の夜に、別の窓を選ぶ。
被害は積み重なり、不安は静かに、しかし確実に増していくのだ。
そんな繰り返しの果てに、デスロックは生まれた。彼らは抑止を拒む。
センサーは鳴る。だが、警報は意図的に遅延させられる。
侵入が確認されても、駆けつけない。
代わりに、静かに見守る。
犯罪者が家の中を漁り、欲しいものを手にし、満足げに去るまで、ただ待つ。
盗まれた品々には、目には見えない電磁波の糸が結ばれている。
微細な追跡装置、あるいは、もっと古い、もっと暗い方法で。
糸はアジトへと伸び、巣窟の全貌を暴く――そして、一網打尽。
逃げ場のない暗闇の中で、彼らはまとめて捕捉される。デスロックの顧客たちは、最初、その方法に戦慄した。
「わざと盗ませるのか」
「我々の財産を、囮にするのか」
しかし、結果は残酷なほど明確だった。
繰り返しの被害は止まり、近隣の同様の犯行も激減した。
犯人たちは、消えた。
ただ、消えた。ある夜、私はデスロックの本社に呼ばれた。
薄暗い応接室。壁には、何の装飾もない。
担当者は、淡々と語った。
「抑止は、犯罪者を賢くするだけです。彼らは学び、適応し、次の隙間を探す。だから、私たちは、彼らに成功を与える。
一度きりでいい。十分に満足させ、帰巣本能を刺激する。そして、巣ごと潰す」
私は尋ねた。
「捕らえた後は、どうするのですか?」
担当者は、初めて微笑んだ。
その笑みは、人の形をした何かが、人を真似て作ったもののように見えた。
「私たちは、抑止もしない。逮捕もしない。ただ、彼らを――私たちの側へ、移すのです」
「移す?」
「ええ。あなたがたが居なくなったら、この商売が成り立たないでしょう。だから、発信器を埋めて、こちらで管理させていただきます」
「つっ――」
私は強い眠気に襲われ、それ以降の記憶がない。あれは、夢だったのか、現実だったのか、定かではない。ただ、あれ以降、私は盗みを働いていない。
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