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デスロック

作者: をはち
掲載日:2026/10/29

デスロック、してますか?


人は、暗闇を恐れる。


だが、本当に恐るべきは、暗闇そのものではない。


暗闇の中で、静かに呼吸を合わせ、あなたの生活の隙間を測っている者たちだ。多くのセキュリティ会社は、抑止という名の幻想を売る。


センサーが光り、警報が悲鳴を上げ、巡回車が現場へと駆けつける。


「侵入を未然に防ぐ」――その言葉は、まるで魔法のように響き、顧客の不安を一時的に鎮める。


しかし、犯罪者には、善悪の区別などない。


罪悪感という重荷を、最初から背負っていないのだ。


一度、窓を砕いて侵入した家。


新しいガラスを嵌め直したその同じ窓を、彼らはためらいもなく再び割る。


中に盗むべきものが何一つ残っていなくとも、構わない。


ただ物色し、生活の痕跡を漁り、満たされない何かのために、再び足を踏み入れる。


警備員が駆けつけても、犯人が捕まることは稀だ。


彼らは影のように消え、別の夜に、別の窓を選ぶ。


被害は積み重なり、不安は静かに、しかし確実に増していくのだ。


そんな繰り返しの果てに、デスロックは生まれた。彼らは抑止を拒む。


センサーは鳴る。だが、警報は意図的に遅延させられる。


侵入が確認されても、駆けつけない。


代わりに、静かに見守る。


犯罪者が家の中を漁り、欲しいものを手にし、満足げに去るまで、ただ待つ。


盗まれた品々には、目には見えない電磁波の糸が結ばれている。


微細な追跡装置、あるいは、もっと古い、もっと暗い方法で。


糸はアジトへと伸び、巣窟の全貌を暴く――そして、一網打尽。


逃げ場のない暗闇の中で、彼らはまとめて捕捉される。デスロックの顧客たちは、最初、その方法に戦慄した。


「わざと盗ませるのか」


「我々の財産を、囮にするのか」


しかし、結果は残酷なほど明確だった。


繰り返しの被害は止まり、近隣の同様の犯行も激減した。


犯人たちは、消えた。


ただ、消えた。ある夜、私はデスロックの本社に呼ばれた。


薄暗い応接室。壁には、何の装飾もない。


担当者は、淡々と語った。


「抑止は、犯罪者を賢くするだけです。彼らは学び、適応し、次の隙間を探す。だから、私たちは、彼らに成功を与える。


一度きりでいい。十分に満足させ、帰巣本能を刺激する。そして、巣ごと潰す」


私は尋ねた。


「捕らえた後は、どうするのですか?」


担当者は、初めて微笑んだ。


その笑みは、人の形をした何かが、人を真似て作ったもののように見えた。


「私たちは、抑止もしない。逮捕もしない。ただ、彼らを――私たちの側へ、移すのです」


「移す?」


「ええ。あなたがたが居なくなったら、この商売が成り立たないでしょう。だから、発信器を埋めて、こちらで管理させていただきます」


「つっ――」


私は強い眠気に襲われ、それ以降の記憶がない。あれは、夢だったのか、現実だったのか、定かではない。ただ、あれ以降、私は盗みを働いていない。

読んで頂きありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
悪を上回る──── それが正義であっては欲しいものの、現実社会でもそうではないこともしばしばですから…… むしろ何がもとであっても、犯罪行為の抑止力になったならとも、つい考えてはしまいます。 いつも…
最後まで緊張感があって、面白く読みました。
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