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不遇職『翻訳家』が、古代龍の愚痴を聞きながら異世界飯で聖獣娘を囲う件  作者: 寝不足魔王


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第5話 辺境配属と不遇職の現実


合格発表から数日後。


配属先が発表される日だった。


役所の広いホールに合格者たちが集まっていた。

花音が俺の腕をぐいっと掴んで、掲示板の前まで引っ張ってきた。


「ユウマ! ここだよ! 配属先が出てる! 絶対同じ部署だよね! 私、ユウマと一緒に働けるの想像しただけで昨夜眠れなかったよ! 毎日顔合わせて書類作ったり、会議したり……最高すぎる! ねえねえ、早く確認しようよ!」


花音の栗色のポニーテールが元気よく揺れる。

彼女は俺の手をぎゅっと握ったまま、目をキラキラさせて掲示板を覗き込んだ。


俺も一緒に目を走らせた。


天野悠真  辺境文書整理係


……辺境?


隣で花音が自分の名前を見つけて飛び跳ねた。


「私、中央文書課! 辺境と中央はすぐ近くだよ! ユウマ、毎日会えるね! ランチ一緒に食べよう! 絶対楽しいよ!」


花音の笑顔がまぶしい。

彼女は俺の肩をポンポン叩きながら大喜びだ。


脳内では、リリがすぐに反応した。


「辺境やん! でもええやん! あたしがいるから全然大丈夫やで~! 翻訳家は外交ゼロのこの国で確かに不遇職やけど、文官になったんは事実やし! あたしが全力サポートしたるわ! ユウマくんが落ち込んでへんか心配やったけど……あ、顔普通やな。ええ子やわ~♡」


リリの関西弁が頭の中で明るく響く。


その時、新任文官たちを集める声がした。


「皆さん、おめでとうございます。私はこれから皆さんの上司となる藤原綾乃です。配属先について簡単に説明しますね。」


黒髪をお団子にまとめたキャリア女文官が、クールな目で俺たちを見回した。

藤原綾乃――32歳。仕事人間で有名な人だと噂で聞いたことがある。


彼女は一人一人に声をかけていった後、俺の前に立った。


「天野悠真君。君は翻訳家だね。この大和皇国は鎖国100年で外交ゼロだから、外国語や古代語はほとんど必要ない。君の能力は……正直、役に立たない。だから辺境の文書整理係に配属するよ。古い書類の分類と整理が主な仕事。翻訳が必要になる機会はほぼないと思っていい。」


藤原さんは淡々と告げた。

周りの新任者たちがチラチラと俺を見る。


「不遇職って……本当なんだな」


心の中で呟くと、リリが即座にフォローしてきた。


「ちゃうちゃう! 落ち込まんでええよ! 辺境は静かでええやん! あたしとゆっくりおしゃべりできるし! それにキッチンも作りやすいはずやで! ここでこっそり異世界料理実験できるわ~! カレー作る練習しよう! 唐揚げの衣は小麦粉でいけるはず! たこ焼きも鉄板さえあれば……ユウマくんが作るの想像するだけでワクワクするわ! あたし毎日レシピ提案したるから! 翻訳家が不遇でも、ユウマくんはあたしの推しやし、絶対楽しくなるで!」


リリが勢いよくまくしたてる。

俺は心の中で小さく苦笑した。

この女神、本当にポジティブだ。


藤原さんが全員に配属書類を渡しながら締めくくった。


「辺境は田舎だけど、仕事は大事です。しっかりやってくださいね。」


彼女は俺に軽く目を留めてから去っていった。


ホールを出ると、花音が俺の横を歩きながら明るく言った。


「ユウマ、辺境かぁ……でも大丈夫だよ! 私、中央文書課だからすぐ近く! 仕事終わりに毎日顔出してあげる! ユウマが翻訳家で不遇職って言われてるの知ってるけど、私から見たらユウマは天才だよ! 試験で歴代1位取ったんだから! 一緒に頑張ろうね! 絶対楽しい文官生活にしよう! 約束だよ!」


花音は拳を握って元気いっぱいに笑った。

彼女の明るさが、ちょっとだけ胸を軽くしてくれた。


帰り道、脳内でリリがさらに長々と話しかけてきた。


「ほらほら、ユウマくん。落ち込んでへん? あたしがいる限り絶対大丈夫やで! 辺境の家、広そうやしキッチン作ってカレー開発しよう! この世界の香辛料で再現できるはず! 唐揚げは鶏肉に塩コショウして……あ、たこ焼きも! いつか聖獣とか来たら振る舞えるかもやし! あたし毎日アドバイスしたるから! それに文官になったんは偉いんやで! 不遇職でも、ユウマくんはあたしの推しNo.1やし!」


リリの声が止まらない。

俺は歩きながら心の中で答えた。


「わかったよ。まあ、なんとかなるか」


花音が隣でスキップしながら歌うように言った。


「ユウマ、これからもよろしくね! 毎日一緒に頑張ろう!」


辺境の風が少しだけ新鮮に感じた。

不遇職の現実が始まる。

でも女神と花音がいれば……なんとかなりそうだ。


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