表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
不遇職『翻訳家』が、古代龍の愚痴を聞きながら異世界飯で聖獣娘を囲う件  作者: 寝不足魔王


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

3/19

第3話 私塾で天才扱いされる件


8歳の春だった。


母親の桜に「行ってらっしゃい」と軽く手を振られて、俺は私塾へと向かった。

父親の厳は朝早く仕事に出ていたので、いつものように一言だけ頭を撫でてくれただけ。

それだけで十分だった。


教室に入ると、先生が簡単な算術問題を出した。

「では、この数を足してみよう」


俺は即座に答えた。

周りがざわつく。


「え……正解? ユウマくん、すごい!」


クラスメイトの視線が一気に集まる。

脳内ではリリが大興奮で叫んだ。


「さあ本番やで~! ユウマくん、ええ感じ! あたしフルサポートしたるわ!」


私塾での日々が始まった。


授業の合間、帰り道、夜の布団の中――リリとの会話が一番長くなった。


「ユウマくん、今日の授業どうやった? 大和皇国の歴史、覚えとる?

この国が鎖国した理由、知ってるやろ? 昔、外国から来る魔獣の被害がひどくて、みんなで決めたんや。

それから100年、外の言葉なんて誰も話さんようになったから、翻訳家は完全に不遇職なんよ~」


リリが楽しそうにまくしたてる。


「でも文官は大事やで! 国内の行政、税金、農地管理……全部文官が回してる。

試験に受かったら、ユウマくんは立派な文官になれる。

あたしが全部教えたるから! ほら、この問題の正解はこう! ここは絶対落とさんといて!

過去問パターン、全部あたしが覚えてるで~!」


彼女のテンションは止まらない。


「それにしても、地球の料理の話もっと聞きたいわ!

カレーのルーってどうやって作るん? 唐揚げの衣は小麦粉でいける?

たこ焼きは鉄板が必要やろ? ユウマくんが文官になったら、辺境の家でこっそりキッチン作って実験しよ~!

あたし、毎日アドバイスしたるから! 楽しみすぎて寝れへんわ~♡」


「まだ8歳だぞ……材料すら揃ってない」


「ええやん! あたしがヒント出すねん! まずは砂糖と塩から始めよか。

ユウマくんが作るの想像するだけでお腹すいてきたわ!」


リリは本当に暇人だった。

でもそのおかげで、俺は授業で次々と正解を連発した。

クラスメイトが「ユウマくん、天才だ……」と囁き合う。


隣の席の花音が、目をキラキラさせて振り向いた。


「ユウマ! また正解してる! どうやってわかったの!? すごいよ! 教えて教えて!」


桜井花音はいつも通り元気いっぱいだった。

ポニーテールを揺らして、俺の袖を引っ張ってくる。


授業が終わると、花音は俺と一緒に帰り道を歩きながら、自分の話をぽつぽつと始めた。


「ねえ、ユウマ。私、最初は武官になりたかったんだよ。

剣とか弓とか、かっこいいじゃん! でもユウマが私塾で勉強してるの見たら……なんか一緒に頑張りたくなってさ。

文官に変えたんだ。ユウマみたいに頭良くなりたいし、一緒に試験受けたら絶対楽しいと思うんだよね!

毎日お父さんに『花音は元気すぎる』って怒られてるけど、私も頑張ってるよ!」


彼女は笑顔のまま、でも少し照れくさそうに続けた。


「ユウマが天才だから、私も負けてられないんだ。

一緒に合格しようね! 絶対だよ!」


花音の活発な声が、夕方の道に響く。

俺は自然と頷いていた。


脳内でリリが大はしゃぎだ。


「きゃあああ! 花音ちゃんの話、かわいいすぎるわ~!

元武官志望から文官転向って、完全にユウマくん推しやん!

幼馴染フラグさらに強化されたで~♡ あたしもう推し活が止まらん!」


帰り道の途中、父親が珍しく早めに帰っていて、玄関で軽く「私塾はどうだ?」と聞いてくれた。

それだけだったけど、俺は「まあまあだよ」と答えた。


夜、布団の中でリリと今日の振り返りをした。


「ユウマくん、今日もええ仕事やったで! 次は歴史の授業でカンニング練習しよか?

あたしが全部耳打ちしたる! それに花音ちゃんの話、めっちゃ面白かったわ。

あの子、努力家やね~。ユウマくんが文官になったら、きっと一緒に働けるかもやし!」


リリが嬉しそうに笑う。


俺は心の中で小さく思った。

この女神の暇つぶしと、花音の明るい声。

私塾での日々が、思ったより悪くない。

いや、むしろ楽しいかもしれない。


「リリ、明日も頼むぞ」


「もちろんや! これからもっと面白くなるで~!」


外では春の風が静かに吹いていた。

俺の異世界生活は、少しずつ加速し始めていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ