第24話 リルの「父上ツンデレ」日常
辺境の家に朝の陽光が優しく差し込む頃、リルはいつもより少し早めに目を覚ました。赤い鱗が朝光にきらめき、頭の角がピンと立ったまま、彼女はベッドから起き上がるとツリ目を細めて小さく呟いた。
「ふん……別に父上のために起きたわけじゃないですけど……今日は朝ごはんくらい、私が作ってあげてもいいかなって……遠縁の責任として……それだけです……」
ツンデレの口調はいつものように強がっているが、尻尾の先がそわそわと左右に揺れ、翼が小さくパタパタしているのが本心を隠しきれていない。リルは昨日ユウマが揚げた唐揚げの味を思い出し、自分も同じくらい美味しく作って父上に食べさせたい、という思いが胸にあった。ツンデレながらも、父上への想いが少しずつ溢れ始めている証拠だった。
キツネビが狐耳をピクピクさせながらキッチンにやって来た。尻尾をゆらゆら揺らして笑顔で言った。
「おはようございます~! リルちゃん、朝からキッチンに立ってるんですか~? すごいです~! 私も手伝います~! 甘いパンケーキも一緒に作りましょう~! 龍様もきっと喜びますよ~!」
リルがツリ目を少し吊り上げて、照れ隠しに言った。
「べ、別に手伝ってほしいとかじゃないですけど……少しだけなら……いいですよ……。でも、甘いパンケーキなんて父上の好みじゃないかも……! べ、別に私が決めるわけじゃないですけど……!」
ミズナが水溜まりから尾びれをパタパタさせて顔を出した。鱗が朝陽に反射して虹色に輝く。
「リルちゃんの料理~! 私の海の味も少し入れましょう~! 海藻を入れて、みんなの体を癒すスープにします~! 龍様もきっと元気になりますよ~!」
リルが少し慌てて言った。
「海藻は……父上の好みじゃないかも……! べ、別に私が決めるわけじゃないですけど……! でも……少しだけなら……いいかもしれません……」
花音がポニーテールを揺らしてキッチンに飛び込んできた。
「ユウマ! リルちゃんが朝から料理してる! すごいよ! 私も手伝う! リルちゃん、ツンデレ可愛い! 一緒にがんばろう! ユウマも見てて! みんなで作ったら絶対美味しいよ!」
リルが頰を赤らめて鍋を火にかけた。
「みんな……うるさいです……! 父上のために……静かに作ります……! べ、別にみんなに褒められたいとかじゃないですけど……!」
しかし、火加減を間違え、鍋底がすぐに焦げ始めた。リルが慌てて火を弱めるが、今度は具が焦げ付き、煙がモクモクと上がる。
「こ、これ……父上のために作ったのに……! 失敗しちゃった……」
キツネビが狐耳をぺたんと下げてフォローした。
「大丈夫です~! 私も失敗しますよ~! 一緒にやり直しましょう~! リルちゃんの気持ち、龍様に届きますよ~! 私、甘いソースでカバーします~!」
ミズナが尾びれをパタパタさせて海藻を投入しようとした。
「私の海の味でカバーしましょう~! 海藻を入れて……あ、入れすぎちゃった~! でも、みんなの体にいいはずです~!」
鍋の中が海藻だらけになり、さらにカオスに。花音が鍋をかき混ぜながら大笑いした。
「ユウマ! リルちゃんがんばってる! 私も手伝うよ! 海藻多めでも美味しいかも! みんなで食べよう! リルちゃんの気持ちが一番だよ!」
リルがツリ目を潤ませて落ち込んだ。
「父上に……恥ずかしいところ見せちゃった……私、料理下手で……父上の役に立てない……」
ユウマがリルの肩に手を置き、優しく言った。
「失敗してもいいよ。一緒にやり直そう。リルが作ってくれた気持ちが嬉しいんだ。みんなもそう思ってるよ。」
リルが頰を赤らめ、ツンデレで目を逸らした。
「べ、別に父上の言葉が嬉しいとかじゃないですけど……! ……ありがとう……少しだけ、やり直します……。みんなも……ありがとう……」
キツネビが狐耳をぴょこぴょこ動かして笑った。
「リルちゃん、がんばりましょう~! 私、甘いソースを調整します~! みんなで作ったら絶対美味しいですよ~!」
ミズナが尾びれをパタパタさせて海藻を少し減らした。
「海藻も少しだけにします~! みんなの味に合わせて~! リルちゃんの料理、楽しみです~!」
花音が鍋をかき混ぜながら言った。
「ユウマ! リルちゃんの気持ちが伝わってるよ! 私もがんばる! みんなで最高の朝ごはんにしよう!」
みんなで鍋をやり直し、なんとか朝ごはんを完成させた。
リルがスプーンを差し出し、ツンデレで言った。
「父上……少しだけ、食べてください……。べ、別に父上が喜ぶ顔が見たいとかじゃないですけど……!」
ヴォル爺が低く一口食べ、満足げに唸った。
「……ふむ。
失敗も……味じゃ。
おぬしも、よくやった。」
リルが翼をパタパタさせて喜び、尻尾がブンブン振れた。
「父上……! これからも……父上のそばで……がんばります……! みんなと一緒に……」
キツネビが狐耳をぴょこぴょこ動かして抱きついた。
「リルちゃん、がんばりましたね~! これからも一緒に作りましょう~! 龍様も喜んでますよ~!」
ミズナが尾びれをパタパタ。
「リルちゃんの料理、美味しかったです~! 私の海の味も入って、みんなの味になりました~! これからも一緒に作りましょう~!」
花音がユウマに抱きついて笑った。
「ユウマ! リルちゃんツンデレ可愛い! これで3人体制の日常、もっと楽しくなるね! みんなでがんばろう!」
リリが脳内で締めくくった。
「リルちゃんツンデレ完璧や! 失敗から絆深まるパターン最高やで~!
これで3人体制の日常基盤できたわ! 次は争奪戦回や~! 遠くからもう一つの翼の影が……楽しみやな~♡」
辺境の朝は、リルのツンデレ失敗とみんなの温かい笑顔に包まれていた。
不遇職の翻訳家生活は、ますます賑やかで、温かいものになっていく。




