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不遇職『翻訳家』が、古代龍の愚痴を聞きながら異世界飯で聖獣娘を囲う件  作者: 寝不足魔王


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第13話 藤原上司が龍の調査に来た

キツネビが住み始めて数日が経ったある午後。


辺境の事務所に、突然の来客が現れた。

黒髪をお団子にまとめたキャリア女文官、藤原綾乃。

32歳のクールな上司が、厳しい表情で俺の前に立っていた。

彼女の後ろには、数人の文官部下と、警護の武官が控えている。

全員が緊張した面持ちで、事務所の窓から見える巨大な黒い影――ヴォル爺の姿をチラチラと見ていた。


「天野悠真君。

上層部から緊急命令だ。

『古代龍が辺境に居ついている』という報告が入った。

本当なら国家危機レベルだが……君の配属先で起きている以上、まずは現地調査だ。

龍の目的、脅威度、居つく理由……すべて報告せよ。」


藤原さんの声はいつも通り淡々としているが、目が少し泳いでいる。

部下の一人が震える声で呟いた。


「上司……本当にあの龍様が……? 魔王じゃなくて……?」


藤原さんが部下を睨みつけて黙らせ、俺に向き直った。


「天野君。君は翻訳家だね。

龍と会話できるのか?

今すぐ連れて行け。」


俺はため息をつきながら立ち上がった。

脳内ではリリが大はしゃぎだ。


「来たで~! 藤原上司、龍様にビビってるわ! これはチャンスや! ユウマくん、クールに翻訳してあげて! 上司の反応見てあたしもう笑い止まらん!」


花音がちょうど事務所に顔を出して、状況を見て目を丸くした。


「え、ええ!? 藤原上司!? 龍様の調査!? ユウマ、すごいことになってるよ! 私も一緒にいく! 龍様にちゃんと説明してあげなきゃ!」


キツネビも狐耳をピクピクさせてついてきた。


「龍様の調査ですか~? 私も行きます! 龍様は優しいですよ~!」


藤原さんが一行を見て、わずかに眉をひそめた。


「……君の周り、妙に賑やかだな。

まあいい。行くぞ。」


庭に着くと、ヴォル爺がゆっくりと目を覚ました。

金色の瞳が藤原さんたちを捉えると、部下たちが一斉に後ずさりした。

藤原さんも顔を強張らせ、剣の柄に手をかける。


「天野君……本当に会話できるのか?

誤魔化すなよ。」


俺は龍の前に進み出て、声を張った。


「ヴォル爺、こちらは俺の上司の藤原綾乃です。

龍がここにいる理由を調査しに来ました。

少し話してもらえますか?」


ヴォル爺が低く唸った。


「……ふむ。

上司か。

わしはただ愚痴を聞いてくれる翻訳家がいるから居ついただけじゃ。

脅威などではない。

飯が美味いし、心が軽くなるし……それだけじゃ。」


俺が完璧に翻訳して伝えると、藤原さんの目が点になった。


「……愚痴……? 飯……?

国家危機が……そんな理由で?」


部下たちがざわつく中、藤原さんが龍に一歩近づいた。

しかし、ヴォル爺が少し翼を広げた瞬間、彼女の顔が青ざめた。


「ひっ……!」


藤原さんが思わず後ずさり、俺の背中にぶつかる。

その瞬間、彼女の体が少し震え、俺の腕をぎゅっと掴んだ。

顔が真っ赤になっている。


リリが脳内で爆笑した。


「アハハハ! 藤原上司、龍様にビビってユウマくんにしがみついてるわ! これは完全に恋愛フラグ……誤解やけど! ユウマくん、チャンスやで~! クールにフォローしてあげて!」


花音が慌てて藤原さんを支え、キツネビが狐耳をピクピクさせて心配そうに近づく。


「上司さん、大丈夫ですか~? 龍様は優しいですよ!」


藤原さんが俺の腕を離し、咳払いして取り繕った。


「……失礼した。

龍が脅威ではないことはわかった。

ただ……報告書に『愚痴と飯が理由』と書くのは……上層部が信じないだろうな。」


ヴォル爺が低く笑った。


「ふむ。

ならば飯を振る舞おうか?

おぬしらも食べてみればわかるぞ。」


藤原さんが一瞬固まり、俺をチラッと見た。

目が少し潤んでいるように見えた。


「……天野君。

君の翻訳能力……本物だな。

これからも……よろしく頼む。」


部下たちが「上司……?」とざわつく中、藤原さんは少し頰を赤らめて背を向けた。


リリが脳内で大爆笑。


「藤原上司、完全にユウマくんに落ちてるわ! 龍にビビって吊り橋効果やん!」


花音が俺の袖を引っ張って囁いた。


「ユウマ……藤原上司、なんか可愛かったね? 私も負けないよ!」


キツネビが尻尾を振って笑った。


「上司さんも龍様に慣れたら、きっと毎日来てくれますよ~!」


藤原さんが去り際、振り返って一言。


「天野君。

次は……報告書のためにもう一度来る。

その時は……カレー、食べさせてくれ。」


辺境の庭に、藤原さんの背中が遠ざかる。

龍の低い笑い声と、キツネビの明るい声と、花音の元気な突っ込みが混じり合った。


リリが最後に嬉しそうに言った。


「ユウマくん、藤原上司も仲間入りや!

これでハーレム……じゃなくて、調査チームも増えたで~!」


辺境の日常は、ますます賑やかで、ちょっとだけ甘酸っぱいものになっていく。

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