第10話 キツネビにたこ焼きを振る舞う
キツネビが正式に住み始めた翌日の朝、辺境の家はすでに大賑わいだった。
黄金色の狐耳をピクピクさせ、ふわふわの尻尾をブンブン振りながら、キツネビが庭を元気に駆け回っている。
赤い着物風の可愛い衣装が朝陽に揺れ、耳の先がキラキラ光る姿は本当に愛らしい。
彼女はヴォル爺の巨大な体に近づいては「龍様おはようございます~! 今日もよろしくお願いします!」と元気よく挨拶を繰り返し、尻尾が嬉しそうに左右に大きく振れている。
俺はキッチンで材料を並べながら、脳内リリと本格的に作戦会議をしていた。
「ユウマくん! キツネビちゃん来たばっかりやのに、もうご飯タイムやで~! ここは絶対たこ焼きで決まりや! 地球の味をしっかり見せつけて、キツネビちゃんを一発でメロメロにしたるわ! この世界の小麦粉とタコっぽい川魚で完璧に再現できるはず! 鉄板は昨日花音ちゃんが持ってきてくれたやつ使って! 生地は小麦粉、卵、だしの素でふわふわに……具は紅生姜とねぎと魚を細かく刻んで! ソースは醤油ベースで甘辛く、マヨネーズと青のりもこの世界の材料で代用! ほら、ユウマくん、昨日あたしが教えた配合覚えてる? 焼き上がりのタイミングは穴がいっぱいになったらひっくり返すんやで! キツネビちゃんの狐耳がピクピクして尻尾がブンブン振る瞬間、絶対かわいいわ~! あたしもう想像しただけで興奮止まらん!」
リリが興奮でまくしたてる声が頭の中で止まらない。
俺は心の中で苦笑しながら返した。
「リリ、朝から細かすぎる……本当に全部覚えてるのか?」
「もちろんや! あたし暇人女神やから地球のたこ焼きレシピ50パターン暗記済みやで! キツネビちゃんに初めて食べさせるんやから、最高の出来にせな! 龍様にも少し分けてあげて! これでキツネビちゃんが『毎日食べたいです~!』って尻尾振りまくったら、次は人魚姫も来るで~♡ ユウマくん推し活が加速するわ!」
そこへ、いつもの元気いっぱいの足音が響いた。
「ユウマ! おはよ~! キツネビちゃんもう起きてる? 私、今日も手伝いに来たよ! たこ焼き作るって本当!? 私、鉄板持ってきたし、絶対上手くいくから! ねえねえ、キツネビちゃんも一緒に作ろうよ! 私、具を切るの得意だよ!」
花音がポニーテールを元気よく揺らしてキッチンに飛び込んできた。
彼女はすぐにキツネビの手をぎゅっと握り、笑顔全開で話しかける。
「キツネビちゃん、おはよ! 狐耳ふわふわでかわいいね! 尻尾もすごい! 私、花音! ユウマの幼馴染で文官! 一緒にたこ焼き作って龍様に食べさせよう! 絶対喜ぶよ!」
キツネビは狐耳をぴょこぴょこ動かしながら、尻尾を嬉しそうに振って頷いた。
「わあ……花音さん、ありがとうございます! たこ焼きって地球のご飯なんですね! 龍様が喜ぶって聞いたので、私も作りたいです~! 翻訳家さん、教えてください! 私、がんばります!」
キツネビの瞳がキラキラ輝き、狐耳が期待でピクピク動く。
俺たちは三人で鉄板を囲み、たこ焼き作りをスタートさせた。
リリがリアルタイムで細かい指導を飛ばしてくる。
「ユウマくん、生地を穴に流し込んで! 具を入れてひっくり返すタイミングは……今! そうそう、綺麗に丸くなるで! キツネビちゃんの狐耳が集中してピクピクしてるわ~かわいい! 花音ちゃんも一生懸命ひっくり返してる! ソースは醤油と砂糖を煮詰めて甘辛く……マヨネーズは卵黄で代用! 青のりは乾燥海藻でOKや! 焼き上がったら熱々で提供して! キツネビちゃんの反応、絶対最高やで!」
花音が鉄板を器用にひっくり返しながら大笑いした。
「ユウマ! すごい! 丸くなってきたよ! キツネビちゃん、ほら見て! これがたこ焼き! 熱いけど絶対美味しいよ! 私、キツネビちゃんに一番最初にあげたい! ねえ、龍様にも持って行こう! 一緒に喜んでもらおうね!」
キツネビは狐耳を立てて真剣に鉄板を見つめ、尻尾が止まらない。
「わあ……いい匂い……! こんなにふわふわでカリッとしてるなんて……私、こんな美味しいご飯初めてです~! 龍様もきっと大喜びしますよね!」
焼き上がったたこ焼きを大きな葉っぱの皿に盛り、まずはキツネビに差し出した。
「はい、どうぞ。熱いから気をつけてね」
キツネビは両手で受け取り、狐耳をピクピクさせながら一口かじった。
「……!? んんんっ……!」
次の瞬間、キツネビの黄金色の尻尾がビュンッと真上に跳ね上がり、狐耳がピーンと立った。
目がまん丸になり、頰がぷくっと膨らむ。
「おいしい……! 外はカリッ、中はトロッとして……このソースの甘辛い味とマヨネーズのまろやかさ……たまらないです~! 龍様~! これ食べてください! めっちゃ美味しいですよ!」
キツネビは尻尾をブンブン振りながら、龍のところへ皿を持って走っていった。
ヴォル爺がゆっくり口を開け、数個を一気に平らげた。
「……ふむ。
この小さな球体……また新しい味じゃ。
カリッとした食感と中のトロミ……ソースの甘辛さが絶妙じゃのう。
わし、気に入ったぞ。小娘よ、よく作った。」
龍の低い声に満足げな響きが混じる。
キツネビは狐耳をぴょこぴょこ動かして大喜びで飛び跳ねた。
「龍様、喜んでくれました! 翻訳家さん、花音さん、ありがとうございます! 私、毎日食べたいです~! これからもよろしくお願いしますね!」
花音が俺の横で拳を握って興奮した。
「ユウマ! キツネビちゃんの尻尾の動きすごかった! 絶対ハマってるよ! 私ももっと作るから、次は龍様にもいっぱいあげようね! キツネビちゃんも一緒に毎日作ろう!」
リリが脳内で大勝利宣言をした。
「やったぁ! キツネビちゃん完全メロメロや! 狐耳と尻尾の反応最高すぎるわ~!
これで聖獣娘第一号も完全に落ちたで! あたしもう人魚姫の触れ込みも流したくなってきた~♡ ユウマくん、ハーレム加速スタートや!」
キツネビが俺の袖を引っ張り、狐耳をぴょこんと傾げて笑顔いっぱいに言った。
「翻訳家さん……これからも毎日美味しいご飯、作ってくださいね! 龍様と一緒に、ずっとここにいますから~!」
辺境の朝は、たこ焼きのいい匂いと、狐耳少女の明るい笑い声に包まれていた。
不遇職の翻訳家生活は、ますます賑やかで楽しいものになっていく。




