プロローグ
…フィィイーーーヨーーー…
林の中で鹿笛が谺する。
今、俺は鹿笛を使い鹿の待ち猟をしている。
…ガサガサッ…バサンバサン
200メートル程先から鹿がシダをかき分けてきた。
俺は静かににライフルのボルトを操作して弾丸を薬室に装填する。
鹿はその小さな音を聞き取ったのか、辺りを見回す。
…逃げない内に撃たなければ…
俺はスコープの中で鹿の首に狙いを合わせ引き金を引いた。
ズダァァァァアン!
弾が当たった刹那、スコープの中で鹿は毛を逆立て目をつぶっていた。そして、ゆっくりと倒れていった。
念のために次弾を装填し、ゆっくりと鹿に近付く。
鹿は完全にこと切れていた。
鹿を近くの沢まで運び、解体する。弾は首から心臓に達していた。皮を剥いで、背中のロースと腹の、横隔膜、そして、頭部をビニールで包み、ザックに入れ持ち帰る。そして、残った骨などは、埋めて下山する。
山を下り、実家に帰ると犬小屋の犬達がやけに吠えているので、ライトを照らしてみた。すると、闇夜の中に目玉が10以上現れた。鹿だ。多分田畑の草を食べに来たのであろう。昔は、こんな事は少なかった。山に食料が充分にあったからだ。
この小説では、俺の狩猟人生を振り返りたいと思う。