第七章
第七話です。
こちらのシリーズでは更新お久しぶりです。
長らく書いていなくてすみませんでした。
今回は少し短めですが、楽しんでいただければ幸いです。
こちら、十話完結を目指していますのでどうかお付き合いください。
管理科はてんやわんや、まさに飛ぶような忙しさだった。
パニック半分、茫然自失がもう半分という意識状態の中、管理科の幹部たちはそれでも頭を働かせなくてはならなかった。
「艦内にゼロ、だなんて……信じられない」
「ちょっとそのコンピューター貸して!あたしの落ちた!」
「スーさんっ、この問い合わせってどう対応したら……?」
「あぁっ、はいっもしもしっ!管理科ですが、ご要件をおうかがいしますっ!」
鳴りやまない電話のコール音に、入り口の扉を乱暴に叩く音と怒号や悲鳴。
有事の際に対処するのは主に管理科で、今がまさに有事というわけだ。
とはいえ、管理科ですらも何が何だかという状態だった。
また一つ、今までのものに混じって新たにコール音が重なった。
スーは何本目かも分からないような電話に出るため、受話器を手に取る。
問い合わせの多いことと言ったら、それは恐ろしいほどである。
電話をとっては、重要なもの以外右へ左へ受け流し、次へ移るという始末。
そうでもしていないとやってられないのだ。
他の業務もてんこ盛りなのに、いちいち丁寧に対応してなどいられない。
それでも、いつまでも鳴りやまない電話に、管理科は神経をすり減らしていた。
(ネル……早くしないと、もう手遅れになるわ)
スーは心のなかで呟いた。
さっき、悲鳴に混じって廊下に響いた声は、まぎれもなくネルのもの。
検査薬が完成したのなら、あとはゼロを死海に放り込むなりなんなりすれば良いだろう。
研究室に向かったナラたちはどうしているだろうか。
ヘルドやキイラは無事でいるか。
そもそも、皆ピロットなのだろうか。
(こんなの……前代未聞。そもそも、ゼロはいつ侵入してきたの?大体、ピロットに姿を変えるなんて聞いたことない……艦内にいるということは、それなりの知能を持っているはず。存在しないピロットを演じているのか、はたまた成り代わっているのか……大体、上層部はこのこと知っているの?)
「スー管理科長!」
スーは弾かれたように顔をあげた。
また一人、幹部がスーに悲鳴交じりの声で質問してきたのだ。
頭の中を飛び交う数多の思考を振り払い、スーは口を開いた。
◇
「皆さん」
この状況下でも淡々とした声に、管理科の面々は思わず入り口の方を見た。
入り口にひしめき合う人々をかき分けてきたのか、ボブカットはボサボサに乱れ、実験眼鏡も斜めにズレてしまっているが、それは間違いなくネルだった。
時間にして数分。
されど、管理科にとっては数日にも思えるような長さが過ぎた後だった。
白衣の襟を整えながら、ネルが言った。
「出ましたよ、検査結果」
一瞬、管理科本部の中は静寂に包まれ、電話のコール音のみになった。
数秒後、管理科の者たちの歓声が響き渡る。
「やったー!」
「これでせめて、次の対応くらいは……!」
「静かにっ!」
スーの声に、室内はまたシンと静まり返る。
「で、結果は?」
スーがネルに続きを促した。
「一対三ですかね。アヴァロン全体の四分の一、ってところでしょうか」
簡潔に伝えられた言葉に、管理科の面々は顔を引き締めた。
「結構いますね……」
「思ったより、じゃないですか?」
「相当数ですよね」
「過半数でないだけまだ……」
ざわつく中、ネルは再度口を開く。
「皆さん、何か勘違いされていませんか?」
ネルが告げた一言に、管理科はまた血相を返ることとなった。
「四分の一は、私たちの方。つまり………ピロットは、全体の25%しかいないんですよ」
閲覧ありがとうございました。