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悪魔の落とし子  作者: ふたりぼっち
最強の足元
77/115

幕間 新たなる英雄

 






「やっぱり、向こうの方が魔導具に関しては一枚も二枚も先を行っているわね」


 人間離れした美しさを持つリーリャ・シルフィーネ・フランソワーズ。

 彼女は作業部屋へ広げた金属片を手に取り、難しい表情を浮かべていた。


 バタンッ


 静かな作業部屋。その静寂を破る音は心臓に悪く、リーリャは不快な表情を隠すことなく闖入者を睨んだ。


「出来たわっ!遂に出来たのっ!」

「あら。おめでとう。でも、もう少し静かに入室しなさいな」

「あ……」


 リーリャの現在の弟子である白髪の少女アンジェリカ・シンドローム。

 彼女は興奮のあまり忘れていたが、目の前にいるのは最強の一角であり、逆立ちしても勝てない相手。

 そのリーリャが不気味な笑みを浮かべていることに気づき、アンジェリカは言葉を失くしてしまった。


「ち、違うの…」

「お仕置きね」

「違うのぉぉぉっ!?」


 お仕置きの内容とは、とても口に出せないもの。

 それを当たり前に嫌うアンジェリカはまたも大きな音を立ててしまう。

 リーリャが嫌う雑音を。


 お仕置きはアンジェリカが壊れる手前まで続いた。












「見せてみなさい」


 森の中、少しだけ開けているこの場所にはリーリャとアンジェリカの姿があった。


「『空間転移(トランジション)』」


 アンジェリカは詠唱の後、キーワードを紡ぐ。

 すると目の前に居たはずのアンジェリカの姿は消え、リーリャは真上へと視線を移動した。


「『見えない翼(フロート)』」


 上空50mへと転移したアンジェリカは、その場へ留まることに成功した。


 最早、人の成せる技ではない。

 これはアンジェリカの祖父である叡智の魔導師ですら成せなかった神技といえるだろう。


 一定時間その場に留まると、ゆっくりと地上へ向けてアンジェリカが降りてきた。

 それを見守った後、リーリャは自分の事のようにアンジェリカを讃えた。


「やったわね!私以外では初めての成功者よ!」

「ふう…うん!ありがとう!お姉ちゃん!」


 リーリャはアンジェリカにまで姉呼びを強要していた。


 初めて出会った時点で、アンジェリカの才能とそれを活かす情熱にリーリャは気付いていた。

 それでもあまり期待はしていなかったのだ。


 理由は一つ。

 その直前まで、さらに上の才能を目の当たりにしていたから。

 そう蚕である。


「漸く土台が出来たわ。これからが大変よ?」

「うっ…大丈夫。約束したんだからっ!」


 これまでにも死にそう…事実死にかけるほどの鍛錬を越えてきた。

 それよりもキツイと言われると一瞬臆してしまうが、蚕との約束(一方的な)を思い出し、アンジェリカは気丈に振る舞うのであった。


「私の予想では習得までに二年ね」

「まだ二年も逢えないのね…」

「何か言ったかしら?」


 ここまで来るのに既に半年も鍛錬に時間を費やしていた。

 さらに二年というと、思春期を迎えているアンジェリカにとっては辛く長い期間。

 リーリャは聞き取れていたにも関わらず、こういったことは必ず聞き返していた。

 何故なら、単純に揶揄いたいだけである。アンジェリカの反応が面白いから。


 こうして今日も、女二人は恋話に花を咲かせるのであった。












 あれから一年と半年後。

 遂にその時を迎える。


「お姉ちゃん、今までありがとう。私、絶対に八大列強になってお姉ちゃんへ恩返しするわ!」


 よく晴れた日。

 アンジェリカはリーリャの元での修行を終え、出立の日を迎えていた。


「恩返しは悪魔退治よ?貴女に出来るかしら?」

「大丈夫!私、今自信に満ち溢れているのっ!八大列強も目の前よ、きっとね!」


 リーリャは強くなったアンジェリカへ大まかな話を伝えていた。

 それは期待によるものなのか。


「あ。言い忘れていたわ」

「ん?なに?」

「アンジー。貴女、既に八大列強よ」

「え?」


 修行期間の途中、リーリャの元へエルフからの報告がいくつも上がっていた。

 その中の一つに『新たなるに八大列強にアンジェリカ・シンドロームの名が』というものもあった。


「ええええええええっ!?」


 森の中に少女の悲鳴にも似た声が響き渡り、最後のお仕置きも決まったのであった。

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