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悪魔の落とし子  作者: ふたりぼっち
山籠りの老師に拾われた子、人里に現る
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2-9

 






 隣の国だと聞いてはいたが、その距離は想像の何倍も離れていた。

 俺一人ならまだしも、今回の旅には王族も同行している。

 故に、その移動は遅々として進まなかった。


「師匠。あれが国境です」

「あれか…建物がないと、それとわからないものなんだな」

「そうですね。国境といえど、実際に線が引かれているわけでもありませんから」


 俺はてっきり、線が引いてあるものだと考えていた。

 見た目でわからんのに、よく喧嘩にならないな。

 あ。なるから戦争が起こるのか。

 なるほどな。


 一人納得していると、その国境へと辿り着いた。


 ここまで来るのに十日も掛かったが、ここから先は意外と早く済むようだ。

 理由は単純で、これまでの道中は道のりに点在しているすべての街に視察も兼ねて立ち寄ったが、ここから先は他国となる為、宿泊以外の目的はなく、予定地である副都まで真っ直ぐに進むからだ。


 会談予定地が帝都ではない理由も単純。

 帝都は帝国の元となった小国の都。

 その街では今の巨大な国家を運営するにあたって小さすぎるのだ。

 故に、大陸侵略の拠点を副都とし侵略して増やした国土の中にそれを数箇所配置し、そこに国家運営において重要なものを置いて、皇帝達もそこで暮らしているらしい。


 その副都は国境から三日の距離にあり、現在皇族達が集まっていると聞いている。


「帝国へ入ります」


 そんなことを考えていると王子と俺を乗せた馬車は進み、いつの間にか国境を越えていたのだった。







「ミシェットガルト王国第二王子殿下御一行様に御座いますね?」


 次に着いたのはもう一つの国境。

 帝国側の関所である。


 今回は流石に下車しなくてはならないようで、スバル含む俺達は久しぶりに地面へと降り立った。


「歓迎感謝する。左様だ」

「お知らせの通り、護衛の騎士方はここまでとさせて頂きます」

「構わん。信用しているのでな」


 どの口が、とは思うも。

 それ以外口に出せるはずもない。


「帯同者は二十名だったな?」

「はい。その方々の馬車はこちらで用意させて頂きました」

「それは重畳。割り振りはこちらに任せてもらおう。では、案内を頼む」


 これまでの道中は、五百の騎士達に囲まれての馬車旅だった。

 ここから騎士は入れない。

 供回りが二十名と限定されているのは何も帝国だからといったわけではないらしい。

 どの国に行っても、その者の重要度により帯同者の数は決められている。

 そんなものらしい。


「我々は変わらず先程の馬車で行きましょう」

「わかった」


 スバルの確認に頷いて応える。

 これも決められていたもの。


「カイコさん。王女殿下はお任せください」

「信頼しているから頼んだんだ。任せる」


 王女の付き人兼護衛達が声をかけてきた。

 その顔ぶれはよく知っていた。


















 〜少し前〜


「久しぶりだな?順調に活躍しているようで安心した」


 城ばかりに篭っていても退屈なので、気晴らしにギルドへと顔を出した時。久しく見ていなかった恩人達と出逢う。


「カイコさん、お久しぶりです」

「久しぶり。貴方は相変わらず目立つわね」

「おひさ。順調なんだけどさ…行き詰まってるんだよね」


 ニーナ達三人組だ。

 二人はいつも通りといった感じだったが、ユミフィは少し表情が暗かった。


「どうした?」

「ランクが中々上がらないなって…」

「ユミフィ。焦っても仕方のないことです。地道に進みましょう」


 言葉からもわかるように、ニーナはそういったものに執着は無さそうだ。

 アマンダも冒険者は仕事だと割り切っているように感じる。研鑽は積んでいるようだが。


「目標なんだから早く達成したいのっ!」

「ランクを上げる為に、何が足りないんだ?」


 ランクを上げるのに必要なものは多い。それもランクが上がれば上がるほどに。


「BランクからAランクへ上がる為には身分の高い人(貴人)からの指名依頼を最低一度は熟さなくてはならないのよ」

「ちょっとアマンダ…守秘義務ですよ」

「大丈夫よ。彼はランクが低くとも八大列強なのだから、ギルドも咎めたりはしないわ」


 ランクを上げる条件。

 それが周知されると、依頼により人気度が変わってしまう。

 そうなると困るのは依頼者、次いでギルドだ。

 そうならない様にその辺りは秘密となっているが、この三人は誰かからそれを教えてもらったか、自分達で答えを見つけたかしたのだろう。


「そうか。俺は口が硬いから心配するな。それよりもどうだろう?この辺りで一つ、恩を返される気はないか?」

「え?」「何々??」「まさか身体で返すなんて言わないわよね?」


 アマンダは何を言っているんだ?


「俺からその貴人とやらに、三人へ指名依頼を出すように頼もうと思っている」

「本当ですか?」

「やったぁ!」

「チッ…」


 ア、アマンダさん?


「本当だ」

「ですが、私達で良いのでしょうか?身の丈に合わない依頼を受けて、依頼者様にもカイコさんにもご迷惑を……」

「ニーナっ!千載一遇のチャンスだよっ!掴まなきゃ!自分の手で!」


 ニーナは萎縮し、ユミフィは熱弁を始めた。

 そんな中、アマンダは興味がないのかそっぽを向いてしまった。


 そんなアマンダを見つめる視線は多い。

 男臭いギルドでありながら、女を全面に出しているアマンダはさぞモテることだろう。

 態々俺を揶揄う必要などないのだ。予定外にも袖にされたので不貞腐れているのかもしれない。


「ニーナ。安心しろ。俺は三人をよく理解しているし、信頼もしている。その俺が三人ならと、任せたい仕事があるんだ」

「カイコさん…わかりました。信頼に応えるのは義務です。やりましょう。是非、ご紹介下さい!」

「やったぁっ!」

「依頼者が良い男だと良いわね」


 話は纏り、すぐにスバルへ頼み依頼を出させた。



 依頼者との顔合わせには俺も同席し、ニーナは後悔しているような顔を向けてきて、ユミフィは緊張のあまり固まっていて、アマンダは『若過ぎる…』なんて、意味のわからない呟きを残したのであった。
















 〜時は戻り〜


「王女とは仲良くやれてるか?」


 そこについてはあまり心配していないが、何も聞かないのも放任主義が過ぎるので聞いておく。


「はい。ユミフィと話が合うようです。アマンダにも色々と聞いていて、道中は楽しく移動されています」

「ニーナは…まあ、タイプが違うからな」

「私は付き人の方とお話が合うので…すみません。仕事はちゃんとします」


 第一王女の付き人は厳しい人だと城では有名だ。

 そんな人と話が合うとは、流石ニーナだ。


「いや、心配していないからな?あまり気負わず、楽しんで仕事をしてくれ。俺もそんな感じだしな」

「わかりました。お気遣いありがとうございます」


 ニーナが相変わらずニーナでいてくれて一安心。


 この三人がここにいることからも分かるように、スバルに頼んだこの三人への指名依頼の内容は、王女の護衛だ。


 これから向かうのは実質敵国である帝国の中枢。

 危険度はかなりのものだが、この三人であれば信頼できる。


 勿論、もっと強くて連携の取れている女だけのパーティも探せばいるのだろうが、信頼出来るかどうかは一朝一夕のものでもない。


 城に女性王族専用の女騎士も複数人いるが、それは後宮専属の護衛で、国外には連れて行けない。後宮が手薄になるからだな。


 だから、王女の護衛が必要となったのだ。

 そこで白羽の矢が立ったのがニーナ達三人。

 ついでに恩も一つ返せたので俺からすれば願ったり叶ったりでもある。


「よし、行くか」

「はい、師匠」


 俺が王子を差し置き、先陣を切って馬車へ乗車するところを帝国の者達は訝しげに見ている。

 ただの付き人だと思い、紹介すら求めなかったのだからわかりようもないだろう。


 馬車へ乗り込んだ後はひたすら魔力の鍛錬に励む。


『何時何時も鍛錬を忘るべからず』


 ジジイの遺した言葉に従い、俺は馬車に揺れながらその時を待った。

アマンダは年下好きではありません。

蚕は未だ15歳と若いですが、182cmを超える長身でマッチョなのです。

髪型もお忘れの方が多いと思うので記述しておきます。黒髪の長髪です。普段は後ろで束ねています。

老師は白髪で同じ髪型でした。


髪型の理由は単純。

切るのが面倒だからです。長いと首という急所も守れるからだとか。


そんなわけで、蚕の見た目年齢は18から25くらいと幅は広いです。

少なくとも、15歳には見えません。

見た目も、態度も、口の悪さも。

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