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悪魔の落とし子  作者: ふたりぼっち
最強の足元
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3-10

 





「早速向かうのか?」


 翌朝、宿で目覚めた俺は一階にある食堂へ出向くと、そこで朝食を食べながら待っていたアンジェリカへと問いかけた。


「情報を集めるにも現在の情報が少な過ぎて、どうせ何もわからないわよ。じゃあ、早々に片付けるべきじゃない?」

「そりゃそうだ。朝定食三人前で頼む」

「は、はい」


 アンジェリカのいるテーブルへ座ると、注文をとりに来た従業員へ早速の注文をする。

 そして、アンジェリカを盗み見していた不埒な輩達は大男(おれ)が現れたことにより、その視線を外した。


 怨嗟の気配を感じるが、こちらとしては恨みではなくむしろ感謝して欲しいくらいだ。

 お前達は命拾いしたんだぞ?

 言ってわかるくらいなら初めから女漁りなどしていないだろうがな。


「龍の色は茶色まで。その認識でいいな?」

「ええ。昨夜話した通り、変わりないわ」


 目的地は十中八九龍脈。それが俺達の出した答えだ。

 次の問題は龍脈には龍が棲みついている可能性が高いということ。

 もし龍に見つかれば、俺達の魔力の高さから脅威として認識されて戦闘に発展してしまうだろう。


 その時に戦うか否かだが、それは龍の色によって判断を変える。

 そして、その基準を昨夜話し合った結果、茶龍までなら討伐してしまおうとなった。


 恐らくだが、なりたての黒龍クラスであれば、俺たち二人なら勝てると見込んでいる。

 しかし、それは勝てる可能性が五分よりも高いと言うだけで、被害は考慮していない。


 お互いに伝えていない奥の手を持つが、それは対悪魔用の決戦奥義のようなもの。

 それはこの世界を悪魔の手から守る為のものであり、ただの冒険で使っていいものではないので、奥の手は奥の手として今の所使う予定はない。


 そして俺達の命もまたその奥の手よりも価値が高く、五分以上とはいえ、おいそれと負ける可能性の高い戦いに身を置くことを良しと言えない。


 勿論、それで強くなれるのであれば別だが、今回は失うものの方が大きいと判断した。


 以上のことから、今回は茶龍までとしたのだ。


「ふぅ…食った食った」

「…あんた、これから冒険に行くって分かっているの?」

「行くからだ。俺の力の源は食。これでこそ万全といえる」


 腹八分?

 それは弱者の理論だ。

 俺クラスになると、食べれば食べるだけ力が出る。


 なんの確証もないが。気の持ちようなのだ、全て。


 ガルを迎えに行き、危険の伴う初めての冒険が始まった。
















「Aランクにはなれたが、何も変わらなかったな」


 ギルドで交付された新しい冒険者証。

 銀で作られた薄いプレートにランクと名前が刻んであるものだが、それを街の出入りを管理している兵士に見せるも、想像していた反応はなかった。


「Aランクは()()の人達の中の強者のみが辿り着ける最終ランクよ。

 冒険者の割合でいうと2%に満たない人数だけれど、それでも珍しくない程度にはいるわ。

 特に王都のような大きな街には冒険者も多くいるわ。当然分母が多くなればAランクの人も多いの。

 だから、門番さんにとっては珍しくないのよ。対応が変わらないのも頷けるでしょ?」

「確かに。特別扱いはまだまだ先か」

「そうね。その強者の中の強者しか辿り着けないSランク以上になれば、流石に対応は変わるわ」


 Sランク……

 それはある種、俺の中で節目のランクでもある。

 ジジイが到達していたランクという意味で。


「Sランクになれば、貴族用の通用門が使えるから、態々長い列に並ばなくてもよくなるわね」

「…今でも使えるだろう?」


 俺達は八大列強である。

 それはSランクどころの話ではなく、最上位のSSSランクよりも高待遇を受けられる。

 故に、身分を明かせば今でも使うことが出来るのだ。

 俺達は使っていないが。


「貴方なら分かると思うけど…八大列強だからと言って、それを利用するのは……なんかね…」

「わかる。何もしていないのに、優遇されるのは歯痒いんだろ?」

「ええ…」


 その点、実績を考慮される冒険者ランク。

 それがSになれば、大手を振って利権を貪れる。


 そう。俺達は意外にも小心者なのだ。


「…利権を貪る為にも、とっととジジイ達に並ぶぞ」

「そう、ね…」


 その為にはギルドに貢献しなくてはならない。

 それはつまり、依頼を熟すという話。


 上のランクを目指していると言えば聞こえはいいが、実情はなんとも情け無い話だった。














「ガル。この辺りでいい、止まってくれ」


 ガルの背に乗ること数刻、辺りは人っ子一人いない鬱蒼とした森になっていた。

 道中王都から程近い場所には冒険者などの姿も散見されたが、ここ数刻ほどは誰とも会っていない。

 そんな自然そのままの森は歩くことも困難なほどだ。


「探知出来たの?」


 何もない森…もとい、歩行困難な茂みばかりが目立つ薄暗い森で急に止まったものだから、アンジェリカが予想と期待を込めて問いかけてきた。


「まさか。俺の魔力探知にはアンジー程の精度はないぞ」

「…じゃあ、なんでこんな場所で止まったのよ?」

「疲れているだろう?そんな状況で戦闘に入ったら、困るのは俺だ。一旦身体を解して休め」


 アンジェリカもガルの背中には慣れた頃。

 それでも、それはゆったりとした速度であればこそ。

 今日は街を出てからまともな道がなく、さらに速度もそれなりのモノが出ていた。


 そんな状況ではいくら柔らかな毛皮の上とは言え、尻も痛くなるし体の節々も強張ってしまう。

 俺は慣れているが、アンジェリカはまだまだか弱い。


 これは急激なランクアップの弊害というよりも、求められているものが普通のAランク魔導師とは違うということ。


 俺達に求められる実力(モノ)とは、悪魔に対抗する為の天使の切り札としてのもの。

 それには、魔導師とはいえ前衛職の高ランク冒険者程度の身体能力が必要不可欠。


 そしてその高ランク相応の肉体を手に入れるのは一朝一夕の事ではないという話だ。


「そうね。聞いた話が本当だと、そろそろ近いはず。遠慮なく休ませてもらうわ」

「そうしてくれ。見張りは俺がするから、ガルに背中を預けて休むといい」

「ありがとう」


 これは必要経費であり、感謝の言葉は必要ないが、それを口に出すほど俺も野暮ではない。

 数年前までは野暮だったが……


 アンジェリカは木陰へ移動すると、その近くに寝そべるガルの体へと背中を預け目を閉じる。

 これならガルも休ませられるし一石二鳥と言ったところか。


「さて。アンジェリカの魔力を見失うはずもないし、俺は散策にでも行こう」


 この辺りに俺達の害となり得るほどの魔力反応は存在しない。

 そして周りは鬱蒼とした森なので見通しが悪く先が見渡せない。

 見上げても木々が我先にと枝と葉を伸ばし、陽の光を遮っている。そんな場所だ。


 少しでも情報を手に入れる為、俺は進行方向へ向けて足を伸ばすことに決めた。















「ぉ・・っ!」


 なんだ?


 散策を続けること一刻。

 軽めの睡眠には十分な時間が経った頃、俺は随分と離れてしまった合流地を目指しゆっくりと戻ってきていた。


 そんな俺の耳に聞き慣れた声で聞き慣れない言葉が届く。


「何かあったな」


 そう言葉を残し、全力で森を掛けて戻る。




「アンジー!どうしたっ!?」


 未だ視界に森以外は捉えられていないが、魔力探知には一人と一匹の仲間の反応をしっかりと捉えていた。


 声が届く距離ということで、先ずは状況の確認を急ぐ。


「見つかっているわよっ!」

「なにっ?わかった!」


 主語はないが、それが何かは想像に難くない。

 俺は二人の元へ飛ぶように駆け戻る。


「どうしてわかった?」


 闘気をフルに使った状態で駆けたが、それでも短距離なので息を整える必要はない。

 この辺りに修行の成果を感じるものの、今はそれどころではない。


「こっちに向けて魔力が飛んできたからよ」

「魔力?」

「ええ。恐らく威嚇の類でしょうね。それ以上近づくとどうなるかわかるな?ってね」


 流石伝説の生き物。器用で小癪な真似をしやがるな。


「それで?」


 俺達に多くの言葉は必要ない。


「魔力反応だけじゃ龍の色まで私にはまだわからないわ。でも、私達ならやれる。そう判断したわ」

「それで十分だ」

「そうね。多分だけど、12万くらいってところね」


 流石大魔導師を自称するだけはある。

 一連のやり取りだけで相手の魔力量まで推察するとはな。


 ただ……


「それだと、リーリャクラスになるが?」

「また呼び捨てにしたわね…知らないわよ?そうね。魔力量だけはね」


 これも呼び捨て判定を喰らうのか?まあ、今はどうでもいい。


「貴方の師匠のように身体を人サイズに出来るなら別だけど、ある程度実力が拮抗しているなら、大きい程不利になることの方が多いわ」

「つまり、その隙を突いて叩けると?」

「ええ。速さは貴方、魔法の精度では私に分があると見たわ」


 単体では討伐不可能なモノでも、チームなら別だと。

 冒険パーティらしくなってきたな。


「じゃあ、手筈通りだな?」

「そうね。最悪はお互い切り札を使うということで」

「そうならないように願う」


 切り札は対悪魔用。

 決して冒険程度で使って良いものではない。

 勿論、命には変えられないからアンジェリカの言う通りなのだがな。


「行こう。俺達の初陣へ」

「ええ。私の一つの目標の為にも必ず勝つわよ」


 帝国での戦いは結局俺の一人舞台だった。

 それにあの時はパーティというよりも、八大列強としての義務だったからな。


 アンジェリカにとっては祖父の弔い合戦でもある。

 勿論、相手は違うし、変な気負いも感じられないが。


 それでも。

 人がそう簡単には割り切れない生き物であるのも、また一つの事実。



 ガルの背に跨る白髪の美女に視線をやるも、その瞳は真っ直ぐ前を見据えている。

 そんな逞しい相棒を見てふっと息を吐き、知らず知らずのうちに強張っていた身体の力を抜いた。


 目指すは強敵。

 数年前には手も足も出なかった龍が相手だ。


「負けられないな」


 相棒にも、ジジイにも。

 そして、誰にも。

長かったですが、漸く龍とのリベンジマッチ(シロを除く)


アンジェリカがやけに有能ですが、元々有能だったのです。

天才ですし、努力の人でもあります。

主人公よりよっぽど主人公していますし、これからもしていきます(予定は未定)

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