表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/26

07: ラナの使命(side ラナ、アーサー)☆♢

ラナにはここに入学するにあたり、ウィンター伯から仰せつかったことが幾つかある。


その一つが本校で婚約者を見つけることだった。

婚約者としての唯一の条件は入り婿に来てくれることだった。


ラナにとって最大の難関であるこの言いつけは、常にラナの頭を悩ました。そんな最中、ラナはアーサーという好物件を見つけたのだ。


爵位はそれほど高くなく(少なくともラナに聞き覚えのある貴族位の家紋ではなく)、人格も申し分なくい。魔術・身体能力が優れており、何より、ラナの中でアーサーという人物の好感度は著しく高かった。


それもあって、ラナは深く熟考せずに言葉を発してしまった。


「婚約してください」と。しかしアーサーの血の気が引くのを見て、ラナは瞬時に自分の過ちを認めた。



「ち、違うんです!ごめんなさい…。えと、そうじゃなくて!冗談というか…!いえ、冗談では無いんですけど、ウィンター伯から仰せつかっていて…。何というか…。」



ラナは必死に弁明をしようとしたが、周りがコソコソ噂しだす様子に大変居た堪れなくなった。一方のアーサーはというと、



――今そういう話の流れだったか…?



というのが本音であった。


元々王族の末端に名を連ねるアーサーは、末端とは言えど、王家の者である。婚約の申し出は数多く経験した。故に婚約の申し出をされることより、話の内容が見えないことに困惑を覚えた。


あの、とラナが上目遣いでアーサーの袖を引いた。



「すみません、何と言うか。焦ってしまって…時期尚早でした…。気にしないでください。」



――時期尚早ということは、追々またあるということだろうか…。



アーサーがじっと見つめていると、ラナは一瞬で茹でダコになり、顔を隠し、その場に蹲ってしまった。


どうするべきか困り果てていると、一人の少女がラナに駆け寄り、自分の上着でラナをくるんだ。


ずるずると引きずりながら、食べ物を頬張ったまま「この子、こういうこと慣れてないんです!すみませんでしたぁ!」と元気にあいさつすると、ラナを引きずってどこかに行ってしまった。


一人残されたアーサーに知らない同級生に



「可愛い子じゃないか、大切にしてやれよ…。」


慰めなのか励ましなのか分からない言葉を掛けられた。アーサーは思った。誰だお前。




******************



大変なのは翌日以降のことである。


異性の入る隙を悉く与えなかった、「鉄壁の魔女」こと1回生主席、ラナ・ウィンターが2回生のモブ、アーサー・ライアに婚約を申し込んだと学年中の噂であった。


行くとこ行くとこ、知らない同級生に「おう、アーサー!婚約するんだって?」とか「僕たちの姫に手を出したのか!」とか、何癖を付けられ落ち着く暇がない。


あのウィングでさえも、「ラナ・ウィンターに手を出したら許さないからな」という始末。


更に悪いことに、週末になるとラナはアーサーに「(光)魔法を教えてください」といってアーサーを校外に連れ出した。これでは噂が沈静化されるどころか油に火を注ぐ一方である。



当人であるラナは噂になっていることを知ってか知らずか、けろっといつもの涼やかな態度でアーサーに接していた。


先日のあれが何だったのかとアーサーは問いたかった。

一度事情を説明し、「暫く2回生のクラスに顔を出すのは止めないか?」と提案したのだが、「嫌です。」と一刀両断された。




そんなある日、ラナがふらっとアーサーの教室に顔を出した。


同級生一同がこちらを凝視する。「噂の姫が現れたぞ」とでも言いたげだ。アーサーは視線を鬱陶しく感じつつもラナの方に足を運んだ。


ラナは真っすぐアーサーを見つめ声を掛けた。



「アーサー先輩、今週末お時間ありますか?街に下りるんですけど、一緒にいかがでしょうか。」



アーサーは少し悩んだが、噂のこともあり、一度断りを入れようとした。しかし、周りからの視線が大変痛い。ピリピリと背中に殺気を感じる。仕方なく、アーサーは自然な流れで返答する。あわよくば「予定が合わない」と断るために。



「日にちはいつだ?」


ラナはじっとアーサーを見つめニコリと微笑んだ。


「勿論、先輩のご都合のあう日時で大丈夫です。」


アーサーは退路を塞がれた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ