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6 暴走者

 ドドン!

 辺りに衝撃音が響き渡る。


「な、何、今の爆音?」


 雪奈は音の発信源を探そうと、周りを見回す。

 すると男の子の右手側に民家があるのに気づく。


「もしかして、あそこから?」


 雪奈たちは、様子を見ようと民家に近づく。

 かなり古い建物で、人が住んでいる気配はない。

 飛真理は首をひねる。


「誰もいないみたいですね。本当にここからだったんでしょうか」


「でも、それ以外なくない?まさかあの子の能力とかじゃ・・・」


 言葉の途中で、雪奈は異変に気づく。

 ミシミシ!

 民家から異常な音が聞こえる。


「や、やばい!」


 急いで民家から離れる雪奈たち。

 ガラガラガラ、グシャン!

 民家が派手に崩れ落ち、数本の柱だけが残る。


「な、何てことだ・・・」


 いつも余裕の表情を浮かべている由雷も、動揺を隠せない様子。


「あっ、あの子は大丈夫⁉」


 雪奈が男の子を見ると、民家から少し離れたところで泣いていた。

 ほっと胸をなでおろす雪奈。


「び、びっくりしたぁ。でも民家には誰もいないみたいだし、ケガ人がいなくて本当に良かったよ。もう、突然崩れるなんて管理者は一体何をして・・・」


「二人とも、見てください」


 雪奈の言葉を途中でさえぎり、飛真理が民家とは反対方向を指さす。

 見ると、自動販売機の一部が崩れ、中の缶が転がり落ちている。

 雪奈は首をひねる。


「あれ、いつの間にあんな有様に?」


「この民家と同じく、さっき崩れたのでしょうね。おそらくは能力者の仕業・・・」


 そう言いながら、飛真理が男の子をチラリと見る。

 その視線に気づき、雪奈は首を横に振る。


「いやいや、まさかあの子がやったとか言わないよね。あんな幼いんだよ。能力の勉強だってまだまともにしてないだろうし」


 雪奈の言葉に由雷もうなずく。


「この僕でさえ、あの子くらいのときの能力は大したことなかった。さすがに見当違いじゃないかな」


 飛真理が男の子から一メートルほど離れた地点を指さす。


「あの子がさっき立っていた場所があそこ。そこから自動販売機までの距離と、崩れずに残った民家の柱までの距離、それが一致してるんです」


「能力の有効範囲は、能力者から一定の距離であることが多い。だからあの子の仕業なんじゃないか・・・ってこと?考えすぎじゃない?」


 雪奈は頬をかく。


「だといいんですけど」


 そう言ってる間に、男の子が少し移動している。


「ママー、ママー、どこなの?」


 男の子が自動販売機に向かってテクテク歩く。

 ミシミシ、グシャ!

 自動販売機が完全に崩れ落ちる。

 あぜんとする雪奈。


「ウ、ウソ、本当にあの子の能力?・・・ってまずい!」


 男の子が向かう先には、新居らしき一軒家がある。

 雪奈は男の子にかけよる。


「雪奈ちゃん危険ですよ!」


「大丈夫、いざとなったら反射能力があるから!」


 もし意識外から攻撃を受けても、反射で生成される氷のバリアが雪奈を守ってくれる。

 エネルギー効率は悪いが、よほどでなければ耐えられるはずだ。


「ボク!ちょっと待って」


 男の子のもとにたどり着いた雪奈。

 反射能力は発動していない。

 男の子は雪奈の言葉が聞こえてないのか、振り向いてくれない。


「ボク、そっちに行っちゃダメ!」


 雪奈は男の子の肩をつかみ、無理やり止めようとする。

 カキン!

 反射能力が発動し、氷のバリアが生成される。


「うっ!この衝撃波はこの子の?」


「ママを探してるんだから、邪魔するな」


 そう言う男の子は、さっきまでの泣き顔ではない。


「雪奈ちゃん!」


「大丈夫か!」


 飛真理と由雷が、雪奈の元にかけよろうとしているのが見える。


「今来たらダメ!」


 雪奈の言葉で、二人は足を止める。

 ピシ、ピシッ!

 すさまじい衝撃を受け、氷のバリアにヒビが入る。


「な、なんて威力・・・!」


 雪奈は両手に力を込める。

 シュゥゥ!

 氷のヒビが修復される。

 より厚くなったバリアを盾に、雪奈は男の子に近づこうと試みる。


「ぐっ、これ以上は・・・近づけそうに・・・!」


 氷にヒビは入っていないが、氷のバリアごと押し返される雪奈。


「邪魔なものは壊す」


 家に向かって歩き続ける男の子。

 おそらくあと一メートルも歩けば、家は破壊され始めるだろう。

 由雷が右手を前に突き出す。


「子どもには手を挙げないのが僕の主義なんだけど・・・くそっ!」


 バリバリバリ!

 由雷の右手から電撃が放たれる。

 電撃が男の子に当たる直前

 ドン!

 辺りに衝撃音が響き、電撃の軌道が変わる。


「まさか・・・僕の電撃をそらした?」


 信じられないといった表情の由雷。


「邪魔はさせない」


 もう男の子の歩みを止める手段がない。


「お願い、止まって‼」


 雪奈の叫びも、彼には届かない。

 無惨に破壊されていく家をただ眺めることしか・・・


「ケイちゃん!良かった、ここにいた!」


 甲高い声が聞こえてきた。

 見ると男の子とペアルックの服を着た女性が立っている。


「マ、ママ?」


 男の子の目に光が戻る。

 ママと呼ばれた女性が、泣きながら男の子にかけよる。


「そうよ、はぐれちゃって本当にごめんね!本当にごめん、もう一瞬でも目を離したりしないから!」


 雪奈は、ママを止めようと手を伸ばす。

 

――今近づくのは危ない!・・・ってあれ?


 衝撃波が止んでいることに気づき、伸ばした手を戻す。

 男の子がママに抱きつく。


「うぇーん、ママ、会いたかったよー!」


「ごめんね、ケイちゃん。でも事故とかに遭ってなくて本当に良かった・・・!」


 感動の涙を流す二人。


「あら?」


 ママが雪奈たちに気づいた様子。

 雪奈たちも親子の方に近づく。


「もしかして、ケイちゃんを助けてくださったんですか?」


「えっと、あ、いや、助けるというかなんというかその・・・」


 さっきまで戦っていたとは言い出せず、雪奈はしどろもどろになる。


「ケイちゃん、この人たちが助けてくれたの?」


 ママが男の子に尋ねる。

 ギクッ!

 雪奈たちの頬を冷や汗がつたう。


「えっとね、うーん・・・覚えてない」


「そうなの?迷子でパニックになってたのかしら」


 ママが頭を下げる。


「すみません、もし助けていただいたのであれば、ありがとうございました。ところで・・・」


 ママの声のトーンが低くなる。

 ドックン、ドックン!

 怪しまれていると思い、雪奈の鼓動が早くなる。


「あれは一体?」


 ママが崩れた民家を指さす。

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