9. 新しい下着を買いに行こう!
<パパ~~~~~~ッ!!>
車通りの多い大きな道。
流美たちは駅前のモール目掛けて歩いていた。
(ここ...)
とある横断歩道を見て、流美が頬を染めている。
(清華ちゃんに...抱きしめられた...)
以前ここを渡ろうとした時に、車に轢かれそうになり清華がとっさに抱きとめたのだ。
(あの時のお胸...柔らかかったなぁ...)
流美はチラリと清華の胸を見る。
今日から二人とも夏服に変え、ブレザーは着ていない。
ブラウス一枚から見える胸はとても魅力的だった。
「どうしたの?」
流美の視線に気づいた清華が声をかける。
「な、な、なんでもない...」
流美が赤くなって目を逸らすと、
「ふふふ。今日から夏服だものね!気になる?流美のもとっても魅力的よ!」
そう言いながら清華が流美の胸に顔を近づける。
「さ、清華ちゃん!!」
流美が真っ赤になって目を閉じていると、
「可愛い...下着が透けて見えてる...ドキドキしちゃうかも...」
清華の声に流美の顔は更に赤くなる。
「わ、私、清華ちゃんみたいにおっきくないし...形だって...」
流美が恥ずかしそうにしていると、
「そんなことない!!何度も言うけど流美のが一番、可愛い!!だから自信持って!」
そう言って清華が励ます。
「...うん...清華ちゃんが気に入ってくれてるんなら...それだけで...うれしい...」
別の意味で頬を染めた流美に、
「じゃあ、今度は流美の番ね!」
そう言って流美の顔の前に自分の胸を突き出す。
「さ、清華ちゃん!!」
流美は真っ赤になるが、目をギュッと閉じて恥ずかしそうにしている清華を見て、
(さ、清華ちゃんも勇気を出してこんなことしてくれてるんだ...だったら...)
清華の胸にくっつきそうなほど顔を近づけ眺める。
「本当に綺麗...透けて見える下着もとっても魅力的だよ!!」
流美は思わずうっとりとなる。
下着姿も見ているが、ブラウス越しに眺めるのはまた違った味があった。
「ほ、本当?流美も気に入ってくれた?」
真っ赤になりながら聞いてくる清華に、
「うん!とっても!!...ずっと見ていたい...」
そう言ってつくづくと眺める流美。
「うん...そうしてあげたいけど...ここは人が...」
清華の声に流美が周りを見ると、驚いて目を逸らしていく通行人が見えた。
「ゴ、ゴ、ゴメン!!こんな所で!!」
流美が慌てて離れると、清華も目を開き、姿勢を整える。そして、
「後で、新しい下着、家でたくさん見せてあげるね!行こ!」
そう言って流美の手を取る。
「うん!!」
今回は流美も笑顔で握り返すのだった。
☆彡彡彡
駅前を手を繋いで歩いている女子高生が二人。
二人はうれしそうに微笑み合っている。
「あっ!着いたみたい!入りましょ!」
「うん!」
そう言う清華に、元気にうなずく流美。
流美は今度は恥ずかしがっている様子はない。
(ふふふ。周りからどう見えてるかな?...恋人?...違うの...実は...婚約者なのでした!!...なんちゃって!)
楽しそうにそんなことを考えていたが、
(で、でも清華ちゃんが『思い出して欲しいこと』って多分、違うよね...)
そう考えると少しブルーになる。
(で、でも最近、下着見せ合ったりいい感じ!この調子で下着のにおいも...ってそれが問題なんだよねぇ...)
「ふぅ...」
ため息をつく流美。
「どうしたの?」
心配そうに清華が聞いてくるが、
「な、な、なんでもない!!」
(でもそんなこと言えないよね...言ったらきっと...嫌われちゃう!!)
大慌てで返事をしながら、心の中でまた一つため息をつくのだった。
☆彡彡彡
「あっ!見えてきた!」
清華が2階のランジェリーショップを指差す。
「楽しみだね!」
「うん!」
流美の笑顔に微笑み返す清華だった。
そんな二人に、
「いらっしゃいま...」
声をかけようとした店員の言葉が止まった。
「あっ!」
「この前のお姉さん!!」
固まっている店員の顔を見た二人が思わず声を上げる。
「ははは。奇遇ですね...」
店員はどこか迷惑そうな雰囲気を醸し出していた。
「今日はまた新しい下着を買いに来たの!」
そんな空気など気づかないかのように、楽しそうに話す流美。
「そ、それは楽しみですね...決まりましたら声を...」
そう言って逃げようとする店員に、
「待って!商品の詳しい説明とかして欲しいわ!良ければ下着選び手伝ってくれないかしら?」
清華がお願いをする。
「そ、それでしたら...」
店員が周りを見回すが、他に手の空いている店員はいない。
「ワ、ワタシが...」
店員の額に脂汗が一筋流れた。
「これ、可愛い~~~!」
「ホントね!流美に似合いそう!」
「でも清華ちゃんには子供っぽいかな?」
「そんなことないわよ!試着してみる?」
楽しそうに下着を選んでいる流美と清華。
そんな二人を見ながら店員はというと、
(...ワタシ...いらないのでは...というか邪魔では?...それにさっきから繋いだ手を離さない...あれから二人に何が?...)
そんなことを考えていた。
(まさか家で下着姿を見せ合ったとか、学校で見せ合ってるとか...ってさすがにそれはないでしょう!)
冗談でそんな推理をしていたが、当たっているとは思ってもいないだろう。
「お姉さん!これとこれとこれ、試着したいんだけど...」
「は、はひ!」
急に流美に声をかけられ、つい、間抜けな声を出してしまう。
しかし、さすがプロだけあって、すぐに気を取り直すと、
「そうですね!この下着は...」
各下着の説明を始めたのだった。
☆彡彡彡
「清華ちゃん、とっても綺麗!これにしようよ!」
流美が清華のブラジャー姿を見つめながらそう提案した。
今度の下着は薄い空色に紺の刺繍が入っている。
夏にぴったりの爽やかな印象だった。
「うん。流美が気に入ってくれたのなら...それに...流美もこの下着似合ってたよ!」
清華が頬を染めながら言う。
(やっぱりお揃いで買うのですね...)
店員は心の中でそう思っていたが、顔には出さない。
「それでは準備いたします!」
元気よく答えると、準備をしようと歩き出したが、その背中を流美が呼び止めた。
「お姉さん!ちょっと待って!」
「何でしょう?」
店員が用件を伺うと、流美はチラリと試着室を見た。
カーテンが閉まっていて、清華は着替えをしているようだ。
それを確かめた流美は慎重に切り出す。
「お姉さんに聞きたいことがあるの!」
「・・・」
それを聞いた店員は何か危ない気配を感じた。
(これはまずいですよ!きっと変態な事態に巻き込まれるに決まっています!ここは慎重に...)
そう思った店員は、
「そうですね。ワタシは下着屋の店員ですので下着に関することなら...」
そう答えたが、
「えっ!なんで分かるの?!...実は...」
「!!」
流美の言い方にイヤな予感を感じた店員は後悔したが、時すでに遅かった...