8. 思い出してね!
「流美ったら、本当に気にしなくていいからね!」
「...うん...」
清華の言葉に生返事の流美。
清華に不潔な下着を見られたことがよっぽどショックだったようだ。
「う~~~~~ん...」
清華は困った顔をしていたが、
「そうだ!ちょっと流美。止まって!」
何かを思いついた様子で、足を止める。
「なに?清華ちゃん?」
流美も立ち止まると清華の方に向き直る。
「少し...目を閉じていてくれるかしら?」
そう言った清華の顔は心なしか少し赤く染まって見えた。
「うん...」
一瞬、首を傾げたが素直に目を閉じる流美。
「少し顔を上げて!」
「分かった」
清華の指示に大人しく従う。すると、
<・・・>
唇に柔らかい感触を感じる。
「!!!」
流美が驚いて目を開けると、清華の顔が眼前から離れていった。
「・・・」
「・・・」
しばらく無言で頬を染め、俯いていた二人だったが、
「ど、どう...だった?...私の...ファーストキス...」
清華が流美を上目がちに窺いながら聞いてくる。
「と、と、とっても...素敵...だった...」
真っ赤になりながら答える流美。
そんな流美を見た清華が、
「良かった...」
と安心したような顔をすると、
「で、でも大事な清華ちゃんのファーストキス。私なんかでよかったの?」
流美が申し訳なさそうに聞いてきた。すると、
「流美以外の誰とするのよ!だって私と流美は...」
軽く笑いながら機嫌よく話す清華。
しかし流美の言葉に何かを感じ取ったのか、顔つきが変わる。
「えっ?!もしかして覚えてないの?」
そして意外そうな声を上げた。
「何を?」
流美が首を傾げると、
「...そっか...そうだよね...いいの...私が勘違いしてた...」
清華がやるせない顔でそう言った。
「ゴ、ゴメン!きっと大切なことなんだよね!!教えて!絶対、思い出すから!!」
流美が心底、申し訳なさそうな様子で尋ねるが、
「...いいの...それよりゴメンね...いきなりキスなんかして...もしかして...流美も...」
清華は流美の質問には答えず、そう言った。目が歪み、泣きそうな顔をしている。
「うん...ファーストキスだよ...でもうれしいの!!私、『初めては全部清華ちゃんとできたらいいな』って思ってたから!!」
流美は頬を染めながらも力強く言い切った。
その様子をじっと見ていた清華だったが、ウソ偽りがないと思ったのか話し始める。
「...ありがとう...そっか...じゃあ可能性はあるのね!...でも...やっぱり...思い出して欲しいな...」
少し安心した様子だったが、やはり寂しそうだ。
「うん!思い出す!!だからヒントを...」
流美が言いかけると、
「思い出してくれたら...私の...全てをあげるよ!...それが...ヒント...」
清華は顔を真っ赤にするとそう答えた。
「す、全て...」
流美が清華以上に真っ赤になっていると、
「だから...早く...思い出してね!」
そう言うと、清華は恥ずかしがっている顔を見られたくないのか、前を向くと、再び歩き始めた。
「待って!」
流美は清華を追いかけながら考え始める。
(昔のことで一番頭に残っているのは...)
『大人になったらお嫁さんになってあげるね!!』
(そう約束したこと...これって...よく考えたらプロポーズだよね...ってことは私と清華ちゃんは婚約関係?!)
今更ながら事の重大さに気づく流美。
(だとしたら清華ちゃんの『全てをあげる』って言葉の意味も分かる...だって...私たちは結婚するんだから!!)
「あの!」
「なに?」
清華に話しかけたところで流美は言葉が続かなかった。
(でも...清華ちゃんが私なんかを好きになる理由がないよ...きっと...私の勘違いだよね...)
そう思った流美は言葉を変えた。
「き、今日は昨日の下着を着けてきたんだ...」
そう恥ずかしそうに話しかけると、
「うれしい!約束守ってくれたのね!」
清華はそれを聞いて顔を輝かせる。そして、
「...もちろん...私も着けてるよ...」
頬を染めると、そう続けるのだった。
続けてキョロキョロと周りを窺うと、
「誰もいないね...じゃあ、ちょっとだけ...」
そう言うと、スカートをめくりあげ、下着を流美に見せる。
「キャッ!」
驚いて軽く悲鳴を上げる流美。
「ゴメン!見たくなかった?」
その様子を見た清華が慌ててスカートを戻そうとすると、
「ち、違うの!!ちょっと驚いただけ!...清華ちゃんの下着...とっても綺麗...私も...」
そう言って清華を止め、流美も自分のスカートをまくりあげた。
「可愛い!」
清華がそれを見て声を上げる。
「へへへ!」
「ふふふ!」
お互い微笑み合う流美と清華。
しばらく目を合わせた後、スカートの中へと目を移す。
「なんか...恥ずかしいね...」
「うん...でも...とっても...素敵...」
お互いにスカートの中を見せ合っている姿は二人をとても興奮させた。
「・・・」
「・・・」
しばらくお互いの下着を見つめ合っていたが、
「行こっか...」
「...うん...」
清華の言葉に流美が名残惜しそうに答える。
「後で...上も見せてあげるから...」
「...うん...」
清華が頬を染めそう言うと、流美も同じく顔を赤くしてうなずく。
そして二人はスカートを直すと、学校へと向けて再び、歩き始めるのだった。
☆彡彡彡
「清華ちゃんの下着姿、可愛かったなぁ...」
家に戻ってきた流美は今日の昼休みのことを思い出す。
二人で空いている教室に行くと、下着姿を見せ合ったのだ。
「でも...におい、しなかったな...」
そう言って残念そうな顔をする。
流美は清華の下着に鼻を近づけにおいを嗅いだが、清華のにおいは感じられなかった。
「やっぱり、中のにおいを嗅がないと...って変なこと考えちゃダメ!!今日も危なかったんだから!」
しかし流美は頭を振って、今の考えを吹き飛ばす。
実際、今日は危うく清華の下着をめくりそうになってしまっていた。
「な、中は私が清華ちゃんの言ってたことを思い出した後だよね!!...あんまり急ぐと嫌われちゃう!!」
流美はそう言って心を落ち着かせようとする。
「...でも...脱ぎたての下着のにおいでいいから...嗅ぎたいな...」
昨日、嗅いだ清華の下着のにおいがどうしても忘れられない流美だった。
☆彡彡彡
そして2週間ほどが過ぎた。
二人は可愛い下着を着けていった時は下着姿を見せてあげていた。
しかし、1着しかないため、毎日見せてあげることは出来ず、お互いのどちらかしか着けていないこともあった。
「やっぱり、もう1つ買おうかな...」
流美の言葉に、
「流美も?!私もそう思ってたの!」
清華も賛成し、二人はまた駅前のモールのランジェリーショップに向かうのだった。