第一章(7) こちらの生活に慣れる為のお話
次の日、私は安在さんに声をかけられ目を覚ましました。置かれていた服を安在さんに手伝ってもらいながら、着ました。安在さんによると、今日着た服は『ワンピース』というらしく、今まで私が着ていた服よりも高そうな触り心地でした。安在さんにダイニングまで連れて行ってもらうと、昨日と同じところに二人が座っていました。
「なみさん、おはよう」
「・・・・・・」
「よく眠れたかい?」
「・・・・・・」
「なみさん、ベットの上ではなく、床で寝ていらっしゃって・・・」
私が何も話さなかったからかもしれませんが、安在さんが話してくれました。
「「床!?」」
どうして二人が大きな声を出したのか、私には理解出来ませんでした。
「はい。布団も掛けずに」
「なみさん」
「はい」
「痛いところはないかい?」
何を聞かれているのか理解するのに時間がかかりましたが、「大丈夫です」と言うことができました。
「そう。ベットの寝心地はどう?ふかふかだったでしょう?」
「・・・・・・」
「なみさん?」
「は、はい」
「寝不足かな?今日はベットで寝るんだよ?」
「はい」
優しく私に言う学さんに私は言いました。
言いながら、ベット、というもので寝てしまったらあの人のところへ戻ったときに怒られそうな気がしました。
ああ、きっと、ベットでは寝られないんだわ・・・
学さんに申し訳ない気持ちでいっぱいになった時、
私達の前に食事が置かれました。
「「「いただきます」」」
と3人で言ってから、いただきました。
美味しいものにまた出会い、嬉しい気持ちで部屋に戻ろうと安在さんとダイニングを出ようとしていると、
「なみさん」
と呼び止められた。
「はい」
「話があるんだ」
私はどうしていいのかわかりませんでしたが、安在さんが私を、元いたところへ連れて行ってくれたので、私は、席に着きました。
「話なのだが・・・」
学さんが私に話してくれたのは、3つのことだった。
1つは、勉強、というものについて。
少しづつ知っていこう、という話だった。
2つは、学校というものについてだった。
そして3つは、私の扱いというものについてだった。
「なみさんは、私達の養子といって、子供という立場になる。これから周りからたくさん養子だと言われることもあるかもしれないが、気にしないようにね」
「はい」
養子・・・覚えておこう、そう思いました。
「少しづつ、ここに慣れていきましょう?」
「・・・・・・」
「なみさん?」
何か、違う。
私は今すぐにでも戻らなければならない。
ここで、そんなことしている訳にはいかない。ここに慣れていくことなんて、私にはできない。
「あの、見つかりましたか?」
私の一言で、ひんやりとしました。
「あ、いえ、申し訳・・・」
「いや、こちらもすまないね。まだ見つかっていなくて・・・」
「大丈夫です」
「ここに慣れることは、住んでいたところに戻ったときに役に立つだろう」
「はい」
ベットは怒られます、と思いながら、二人にそう言ったのでした。