最終章(最終話) 本当の愛
二人と別れて、やって来た場所は、始めてデートをした、あの遊園地でした。
「ここ、覚えてる?」
「もちろんです」
「あの頃は、僕のことなんとも思ってなかったよね?」
「っ!」
「ただ、もとの世界に帰りたかったんでしょ?」
「・・・・はい」
あの頃はただ、あの人の所に帰ることだけ考えていた。
殺されたと始めは思っていたのに。
生きていると知って、被害を出す前に、帰りたかった。
「その感じが、目が離せなかったんだけどね」
私はこの世界での事を考えていなかった。
必ず帰ると思っていた。
だからきっと、大変失礼な態度ばかりとっていたのではないかと今では思う。
「・・・僕さ、今でも不安になる時あるんだよ?」
「え?」
「明日は波ちゃんいないんじゃないか、って。帰っちゃうんじゃないか、って」
「そ、そんなこと・・・」
無い。そうは言い切れませんでした。
帰りたくない。けど、無理やり帰らされてしまうかもしれない。
そもそも、なぜこの世界に来れたのかすら、わからないのだから。
「僕、もし波ちゃんがいなくなったらすぐ死んで会いに行くから」
「い、いえ、死後の世界では・・・」
「それくらい本気で、波ちゃんが好き」
こ、こんな、人が多い場所で・・・
「僕と結婚してくれる?」
告白されるなんて、あの頃は考えてもみなかった。
「私で良ければ喜んで」
あの頃は、
あの人の感情が幸せだった。
あの人の言う事をしていれば、
笑ってくれた。褒めてくれた。
そして時に怒ってくれた。
それをあの人は愛だと言った。
だけど、今はそれは違うと言い切れる。
本当の愛は、きっと、
言いなりじゃない。
ルールじゃない。
苦くて、苦しくて、重たくて、しんどい。
だけど、だからこそ、甘い。
神様
私はここで、本当の愛を知りました。
彼の隣で、知ることが出来ました。
私はこの世界で、懸命に生きていこうと思います。
この世界に連れてきてくれてありがとうございます
幸せのその時間に、私は神へと感謝を述べる。
そして最後に少しだけ、願いを込めて。
彼の隣で最期まで歩めますように、と。
《完》
秋があったのか無かったのかよくわからないままに冬に入り、気がつけば明日は新年、という節目の日ですね。
こんにちは、一ノ瀬桔梗です。
本作『前世界で残酷な人生を送る少女ナミは、この世界で本当の愛を知る』を最後までお読み下さり、誠にありがとうございます。
前作とは違い、今作は異世界から日本に似た世界へトリップした少女のお話でした。
書いていて、私自身が主人公に出会ってみたくなることも多々あるような、そんな作品でした。
皆様も、身近に感じて頂けましたでしょうか?
今作も皆様の応援があったからこそ、最終話まで投稿することが出来たのだと思っております。
本作を読んで頂いた皆様、『いいね』をしていただいた皆様、ブックマークをしていただいた皆様、感想を贈ってくださった皆様、本当にありがとうございました。
また、別の作品で皆様にお会いできることを心より願っております。(次回作は一月から更新予定です。)
まだまだ至らぬところも多いこととは思いますが、今後とも『一ノ瀬桔梗』を何卒よろしくお願い致します。
読者の皆様、良いお年を。




