最終章(9) 驚きと嬉しいお話
湊様との婚約が公になる前日、私は美保様に誘われてカフェに来ていました。
「今日は急にどうなさったのです?」
「な、中宮様には事前にお伝えしようと思いまして・・・・」
カフェに来てまで何か私に伝えることがあるのでしょうか?
「わ、私も、こ、婚約が決まりました」
「まぁ!おめでとうございます」
婚約が決まったということは家にとっては安心なお話です。それに、山田家も中宮家と同じ立ち位置ですからなおのこと安心でしょう。
「な、中宮様」
「はい」
「お、お相手とか、気になりませんか?」
「え?」
正直、どこまで踏み込んで聞いていいのかはまだ理解出来ていません。気にならない訳ではないですが、雰囲気的に悪いお話でないことは予想が出来ましたし、聞かないことにしました。
「中宮様には今度、乙女心というものをお教えいたします」
何故かそんな事を言われてしまいました。
乙女心って何でしょう?
「お相手は、大宮様です」
お、おおみや・・・え?
「え?大宮様?」
「わ、私も理解出来てないの!だけど、なんか、気に入られたみたいで、それで・・・」
「お二人に接点ってありましたっけ?」
「きちんとお話したのは中宮様が入院されていた時が始めてでして・・・」
大宮様が美保様のどこを気に入られたのかはわかりませんが、友達が気に入られたというのはとても嬉しいお話でした。
「私は縁談をお断りするつもりはさらさらありませんでしたし、中宮様とも今後の接点が持てるので、お受けすることにしたのです」
接点。
湊様と龍也様。私と美保様。
この組み合わせであれば、会えないなんてことは絶対にありえないと思えます。
「わ、私、一人では大宮家でなんて生きていけません。嫁いでからも、私とお友達でいてくださいますか?」
「もちろんですわ。私こそ、よろしくお願いします」
縁談によっては会えなくなる可能性もあった私達。
縁って、本当にあるのね。
そんなことを思いました。




