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最終章(8) あの時のお話と救われる言葉

「波ちゃん」

湊様のご家族とのお話が終わって、客室で迎えの車を待っている私のもとへ、湊様がいらっしゃいました。

「ちょっと、時間ある?」

「え、はい。いくらでも」

急に何でしょう?

「いつか、話そうと思ってたんだけど、なかなか、話せなくて・・・・」

湊様の雰囲気が少し暗い感じがしました。

わ、私、何かしてしまったでしょうか?


「でも、僕、波ちゃんに隠し事、したくないから。だから・・・・」

隠し事・・・・。

私は、湊様にお話してないことが沢山あるのに。

どうしてそんな暗い表情で、私に何をお話してくれようとしているのでしょうか?


「波ちゃんがあの男に刺された後の話、話すね」


湊様はそういうと私に、あの日の話をしてくれました。


「僕、その警察の人に、波ちゃんに伝えてって言われてたことがあってね」

「警察の方が、私に?」

「『貴方は何も悪くない。五十人もの被害者は貴方のせいで死んだのではない』」


その言葉の意味はすぐに理解できました。

私がいなくなっている間、あの人は多くの人を奴隷としていたのでしょう。そして、死んでしまった。


私はずっと注意されていた。

お前が言う事をきかないと他の人がお前のせいで被害に遭うのだ、と。

その言葉は、私の心にずっと残っていた。

だから、死ぬか生きるか選べと言われて、生きると言った。

死んだら、私のかわりの人が被害に遭うから。


「・・・・伝えてくださってありがとうございます」

こんな話、暗くなるに決まってます。

五十人も、亡くなっているのですから。

私の、かわりになってしまったせいで。


「僕は波ちゃんに、無理に過去の話をしてほしいとは思わないよ?」

私がさっきまで思っていた隠し事のことを言っているのでしょう。

「けど、教えて?今の話聞いて、波ちゃんは何を思ったの?」

私が、思ったこと・・・・。

「私は、なぜ、ここへ来たのでしょう?」


生きるか死ぬか選べと言われて、生きるとこたえた。

だけど、気がついたときにはここにいた。

死んだのかと思っていたのに。

それに、あの人は迎えに来た。もとの世界の警察もこの世界に来れた。


「それはわからない」

湊様にこんなこと聞いてもわかるはずがない。


「五十人もの人は、私がここの世界にいるうちに殺されてしまった人です。私は、ずっと、注意されていました。なのに、言いつけを守れなくて、それで、こんなことになりました。私は、五十人の方の分、何かしら罰せられる必要が・・・・」

「そんなことない!」

「み、湊様?」

「波ちゃんがなんでこの世界に来たかは知らないよ?けど、波ちゃん一人が言いつけを守れなかったからって他の人を殺していい理由にはならないの!」

それは・・・・。

「だから、波ちゃんが罰せられる必要はないの!罰せられるのはあの男達だけ!」

「で、ですが・・・・」

「波ちゃんがよくわからない人達の分、罰せられるっていうなら、僕は神様でも敵にする」

そ、そんなこと・・・・

「波ちゃんは何も悪くない!波ちゃんのせいじゃない!」


その言葉に、私の頬を温かい何かが流れました。

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