最終章(3) 大宮家の人との食事と未来の話
学校に復帰した週末、私は大宮家の人との食事に参加していました。
「波ちゃん!」
お部屋に入った瞬間、誰かに抱きつかれて驚きました。
「香織、はしたないよ」
「だって~!今日までお見舞い待ってたのよ、私は〜!」
大宮家の人達は私の回復を待ってから面会しようと思ってくれていたらしく、私は目が覚めて以来、龍也様以外の方とはお会いしていませんでした。
「波ちゃん!もう大丈夫?」
「はい。ありがとうございます」
「香織、今から疲れさせてはいけないよ。席に着いてもらおう」
「そうね」
香織さんはいつも明るい印象だけど、最近明るさだけじゃない物も感じるようになりました。
「波さん、退院と学校復帰、おめでとう」
「あ、ありがとうございます」
大宮家の当主様はなんというか始めて会った時から、学さんに近いものの少し怖そうな印象だったので、今でもお話しするときは緊張します。
「学から話は聞いてるよ。僕は少しの間だけでも、波さんの居場所が宮家であることを喜ばしく思ってるし、波さん以外では無理だったと思ってる」
急になんのお話が始まったのか、わかりませんでした。
学さんがお話したのはきっと、私が異世界の人であることでしょう。
けれど、私の場所は中宮家以外にはありません。
少しの間、って・・・
「お兄様、まだその話はしないで。寂しくなるから」
「ま、学さん?」
寂しくなるから、とは、なんのことでしょう?
「嫁ぐって話だ、お前が湊のところに」
えっと・・・・嫁ぐ?
龍也様が教えて下さったようでしたが、私はそれでもまだよくわかりませんでした。
「婚約者、は分かるんだよな?」
「はい」
伝わっていない事に龍也様が気がついて下さったのか、説明を始めて下さいました。
「普通、婚約者はそのまま婚約して結婚するんだ」
結婚・・・・
「で、荷物持って家出て、その後は相手の家で暮らすんだよ。お前、あの男のところに行く時に荷物持たされただろ?そん時は追い出された、って方が正しいかもしれないが、まぁそんな感じだな」
確かにあの時、あの人が私の荷物を持っていた気がしました。
なるほど、あんな感じで湊様の家に・・・
「りゅ、龍也くん、もう、やめて。おじさん涙流れそうだから」
「ご、ごめんなさい!」
結婚したら、湊様の家で暮らす。
つまり、私がここにいるのも、短いって話なんだ・・・。
「十八までは、学校を卒業するまでは嫁ぐことは無いからね。まだ時間はあるんだけど・・・。学、波さんが大切過ぎるみたいだから、早いうちに伝えておかないと波さんが困ると思ったから」
今知らなければ、嫁ぐ直前まで学さんは教えてくれなかった気がします。
「教えてくださり、ありがとうございます」
私も教えてもらえなかったら、感謝を伝えきれないまま、中宮家を出なければならない日を迎えていた気がしました。
「嫁いでも、会えないわけじゃないのよ?私と陽子が会ってる感じ、というと龍也が湊様と会わないといけなくなるけれど・・・。連絡先さえ知っていれば連絡は出来るわ」連絡をとることが出来れば、また会えるのでしょうか?
「それに陽子は、湊様とも何度かお会いしてお話してる。湊様が陽子に会うのを止めることはしないと思うから、多分会えるわよ?」
香織さんは、陽子さんと会えることを確信しているかのように言いました。
「も、香織!ご飯が美味しくなくなるから!その話はやめて!」
陽子さんまでもそんな事を言い出したのでその話はこれにて終わりとなってしまったのでした。




