最終章(2) 湊の落ち込みと僕の変化 By 龍也
「ねえ、波ちゃんの好きな食べ物知らない?」
あいつが学校に復帰した日の昼、始めに湊が話出したのはあいつの好きな食べ物についてだった。
「なんで僕に聞く?」
「知ってるかな、と思って」
「知ってるとしたら、ワッフルくらいだ。前にあいつを探しに行ってる」
「そうだよね、それしか、知らないよね・・・・」
湊は落ち込んでるようだった。
「波ちゃんをデートに誘う時にさ、ついつい甘いもので誘っちゃうんだ」
「その何が問題なんだ?」
「波ちゃん、困った顔するんだ」
「困った顔?」
「そう。嬉しそうなか落ち込んでるじゃなくて、困った顔」
「甘いもの食いすぎると太るとか気にしてるんじゃないのか?」
「そ、そうかもしれないけど・・・」
母さんも甘いもの食べ過ぎた〜って叫んでる時あるしな。
「でも、好きな人に困った顔されてからそのお店行くのも、僕的には複雑でさぁ」
「まあ、そうだよな」
もし、嬉しそうに肯定の返事がもらえたら行きやすい。けど、太るという理由であっても、困った顔をされると誘った側も困るだろう。
「なんか無いかな?波ちゃんをデートに誘ういい方法」
「好きなものなら本人に聞けよ」
「嫌だよ。好きなもの聞いてからそれに誘うって、なんか違う」
なんか、ってなんだ?
そもそも、あいつの好きな物ってもとの世界の時からあったのか?ワッフルはいつ、なんで好きになったんだ?
「湊が好きな場所に連れて行くといいんじゃないか?」
「え?」
「もとの世界でのあいつの好きな食べ物なんか誰も知らない。だから、ここでの世界での好きな物はここの世界で出会ってきた物だろ?」
「そ、そうだね」
「ってことは、あいつが食べてきた物は、安在さんとかが作ったものか、誰かと外で食べた物だろ?」
「うん」
「だから、好きなものを聞くんじゃなくて、それで誘うんでもなくて、湊の好きな場所に連れて行って一緒になんか食べたりしたらいいんじゃないか?」
あいつはきっと、まだまだこの世界のことを知らない。美味しい物も、幸せなことも、逆にしんどいことも。
けど、それは今から知ればいいことだ。誰かと一緒に。
「なんか龍也、変わったね」
「は?」
「なんか、僕に似てきた気がするよ〜?」
「変なこと言うな」
湊に似てるなんか、今まで言われたこと無い。
「気になる御令嬢でも出来た?」
その発言に僕は箸を落とした。
「え、何、あたり?」
「・・・・」
「え、マジで?こないだ遊園地行った令嬢?」
「・・・違う」
「え、え、ちょっと待って。理解する。え、ちょ、え?」
湊がパニックになってる間にチャイムが鳴り、ご飯も平らげていないのにも関わらず、教室に帰らざるおえなくなった僕らだった。




