第六章(6) 女の人 By 湊
龍也から連絡を受けて、放課後、龍也が推測したホテルに向かうと、中宮家の人と龍也がいた。
「龍也、波ちゃん、入っていった?」
「いや、あいつの姿は無かった」
龍也は昨日、波ちゃんから話を聞いて、波ちゃん自身で行ける場所の中で異世界人が怪しまれない場所、というところからこのホテルで会うのではないかと推測して、今日、僕たちに伝えてくれた。
だけど、ここじゃなかったのか・・・・。
「ナミの知り合いの方?」
そう思った時、若い女の人に声をかけられた。
「そうだが?」
不審に思ったのか、中宮家当主が奥様を背中に隠してこたえた。
「お部屋へ案内致します」
「はい?」
彼女が何を言っているかわからなかったが、そんなことはお構いなしの様子でエントランスのお姉さんに電話借りて、話をしていた。
「さ、こちらへどうぞ」
この人を信じる必要はない。
実際、中宮家当主は顔が割れているから、変な人が声をかけてきたかもしれない。
そう思ったけれど、電話が終わったのかホテルの部屋へと歩いて行く彼女に、僕たちはついていく決断をした。彼女は部屋の前で止まり、ノックをする。低い声が部屋の中からして、どうぞ、と彼女は言った。
僕たちが部屋に入ると、部屋の奥に男の人と、床に転がっている波ちゃんがいた。
僕はその状況が分からなかった。何も言うことができなかった。
ドアが閉まった音と同時に、女の人が男の人の方へ走って行った。
「私、ちゃんと連れてきたよ!」
女の人は男の人に抱きつきながらそう言った。
男の人は「さすが、僕の婚約者だ」と頭を撫で始めた。
この女の人が、この男の人の婚約者・・・?
だとしたら、波ちゃんはこの人達とどういう関係なんだろう?
僕たちはこの女の人のせいで、頭の中がパニックになってしまった。




