第一章(5) 妻との話し合い By 学
頭を下げられた私は、急なことに驚いたが、なみさんに確認したところ、ここにいてくれる、ということらしく、なみさんはここで一緒に住んでくれることとなった。
話が、急に動いてしまったこともあって、なみさんもお疲れだろうと思い、私は妻と安在さんを連れてなみさんのいた部屋から離れ、私は自室に戻ってきた。
「急に話を進めて悪かったね」
「本当よ。なみさんの部屋に行く前に少しでも話しておいてくれたら良かったのに」
「すまない」
「あなたのそういうところには、もう慣れたわ」
結構怒られる覚悟をしていたから、あまり強く怒られなかったことは意外だった。
・・・一人で話を進めてしまう癖、早く直そう
「聞きたいことがいくつかあるの。聞いてもいいかしら?」
「ああ」
「彼女に住んでいた場所に帰らせるつもり?」
「いや、彼女には悪いが帰らせてあげることはできない」
「そうよね。それなら、どうして彼女にここで一緒に暮らさないか、なんて提案したの?」
「彼女を安全なことろで保護したほうがいいと思ったからだ」
「安全なところならここでなくても警察とかでもいいでしょう?」
「私達は彼女に関わっているし、警察では対応してくれないと判断した。世界地図に載っていない国から来た少女なんて、対応してくれるわけがないと思わないか?」
「思うわ。私達が守ってあげることは簡単よ。でも、どうするの?」
「そこで、提案だ。彼女を私達の養子にするのはどうだろう」
「養子・・・」
「彼女を帰らせないということは、ここに一生住んでもらうことになるかもしれない」
「・・・」
「あと、これは、黙っていようと思っていたんだが・・・この家を継ぐ者がいないということもある。私達に子供がいないし、本家からもどうにかしろと言われている」
「・・・」
「これらの理由で、彼女を私達の養子にすることを提案したい」
妻はもう三十後半だ。今から子供を欲しがれる年齢では無いことなど私も、妻も、本家の人も知っていた。けれどどうにかしろと言ってくるのだから、養子を迎えてもいいということなのではないかと私は思っていた。しかし、この話を聞いて一番複雑なのは妻なはずで、なかなか言い出せていなかった。
「なみさんには伝えるの?」
「養子、と言っても伝わらないだろうから、伝えるのはなみさんが成長してからにしようと考えている」
「そう、わかったわ」
妻は納得してくれた。
その後私達は今後の予定などを計画していた。