第六章(1) 見失った By 美保
中宮様とお友達になって早一年。
中宮様は初めの時よりもとても生き生きとしてる。
まだ公表されていないけど中宮様は岸様と婚約されていて、私も時々学校で見かけるけれど、二人はとてもお似合いで、仲が良さそうで、幸せそう。そんな二人の様子に少し羨ましいなと思ってしまうことも多々ある。
今日は二人でいつものワッフル屋さんへ向かった。
「美保様、今月のワッフルは何なんですか?」
「今月のワッフルはピスタチオです!」
「ピスタチオ、って何ですか?」
「中宮様、ピスタチオは今大人気なんですよ?」
「そ、そうなのですか?」
「とあるケーキ屋さんのピスタチオのケーキは開店すぐに売り切れるそうですよ!」
「す、すごいわね・・・」
「はい!流行になったピスタチオを使った今月のワッフル、とっても楽しみにしていたんです!」
「ふふ、私も楽しみですわ」
中宮様がこんな風に笑うようになったのも、ワッフルを一緒に食べるようになってからのこと。
やはり、美味しいものは人を笑顔にするのね。
それを体現するほどの変化が中宮様だった。
いつも通りショーケースまでは二人で行き、レジで私が買って、一つ中宮様に渡そうと後ろを振り返る。
「・・・・中宮様?」
あたりを見渡すが周辺に中宮様が見当たらなかった。
私は急いで車の方へに戻って運転手に聞いたけれど、運転手も中宮様は戻ってきていないという。運転手に中宮家に連絡するように伝えて、私はワッフル屋さんへ戻った。
ワッフル屋さんの周辺には大きなビルがたくさんあって、迷子になりそうな場所もたくさんある。
ビルが気になって、様子を見に行ったのかもしれない。
中宮様は普段車で移動なさるから迷子の可能性も否定できない。
そう思って、私はあっちこち探し歩いた。だけどなかなか見つからなかった。
どうしよう。気をつけなさいと、中宮家当主様にも言われていたのに。
これはうちの、山田家の失態。父や母に迷惑がかかる。
どうしよう?
困惑しながらもただひたすら周りを探した。




