第五章(10) お友達とワッフル
その日の夕方、私は学さんに呼ばれて山田様との友好関係について問われました。私は、今まで山田様が私のことをかばってくれたことなどを話しました。学さんは岸様からの許可が下りたとのことで、私と山田様の友好関係が認められました。
その次の日から、私は山田様と一緒に帰ることになりました。友好関係が認められたことで私は学校に居場所が出来、学校へ行きやすくなりました。ずっと山田様とお話して一日が終わっていくのです。私はあの人のことなど考える間もなく、楽しく沢山お話をしました。山田様のお話はとても面白くて、迎えの車に乗ってもすぐに家に着いてしまうくらいでした。
友好関係が認められてから数カ月後のある日、美保様からとあるお誘いを受けた。
「中宮様、明日一緒にワッフル屋さんへ行きませんか」
「ワッフル屋さん?」
「はい、月ごとに新しい味が出るのです」
「どうして急に?」
「いつも一人で行くのですが、いつかお友達と行くのが夢でして。中宮様と一緒に行けたらなと思っていたのですが、なかなか誘うことが出来ずにいたのです」
「そうなのですね。ですが、それは相談してみないことには・・・・」
「そうですよね・・・。きちんとお伝えしておかないといけないこともありまして・・・」
「それでしたら、今日、うちへお電話していただけます か?もちろん私からもお話しますが、山田様のお口から説明された方が正確に伝わると思うんです」
私からきちんと、行きたいと伝えておかないと・・・。
「そうね。わかった。夜に電話するわ。ちなみにワッフルは食べたことある?」
「恥ずかしながら一度も・・・」
「あら、そうなの?それは絶対食べなきゃよ!」
その後、美保は楽しそうにワッフルのお話をしてくださいました。
その夜、山田様がお電話をしてくださりました。
そのワッフル屋さんに駐車場がなくて、車を降りて少し歩いて買いに行く必要があること。その場で食べることしか出来ないこと。それらの話を聞いて、学さんと陽子さんは私のことを心配したけれど、私の気持ちを聞いて、月に一回、決まった日付に、ワッフル屋さんへ行くことを許してくれました。
次の日の放課後、ワッフルというものを初めて食べました。とても甘くて、美味しくて、こんなものが世界にあるのだと実感しました。ワッフルというものはあちらの世界にいなかったなーと思いながら、美味しいでしょ?と笑顔で話しかけてくれる美保様に心から感謝したのでした。




