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第五章(8) 僕なりに By 龍也

家に帰って母にあいつの婚約の話をすると、父が帰ってくるまで待って直接話を聞いたほうがいいと言われ、僕は父の帰宅を待った。


「龍也には話してなかったな」

「話してよ。湊の親友なんだけど、僕」

「そうだったな。すまない」

「と、とりあえずどういうことか話して」

父の向かいの席に座った僕の隣に何故か母も座った。

父は、話し始めた。

「もともと、龍也と友達になってくれたときから、岸社長とは色々話をしていてね」

僕と湊が仲良くなって、社長同士が知り合い、意気投合したらしい。

「その頃、弟が娘を引き取った。引き取った娘と岸家子息を会わせて欲しいと頼まれた」

学校に慣れてからを計画していたが計画より早く会ってしまって驚いた、と父は言った。

「湊くんが今までになく楽しそうだ、と連絡が来てね。この二人は様子をみようとなったんだ」

まだまだ波さんは学校に慣れていないからなれるまで少し様子をみよう、とおじさんに言われたこともあってそう考えたらしい。

「だけど、波さんは最近色々とあった。そこで僕も対応を考えたんだが・・・」

おじさんが、自分たちが出来なかったことを湊くんならできるかもしれない、と言ったらしい。

「岸社長も別に気にしないってことだったから、これを機会に婚約の話を進めたんだ」

話の全体はなんとなくわかった。湊はもともとあいつが好きなわけだから、良かったのだろう。

「なあ、あいつはなんて?」

「波さんはなんとも・・・」

「それは良くないよ。あいつだって困るよ、こんなの」

「そうかな?ここにも居場所があると安心するんじゃないかな?」

「・・・それでも、今は良くないと思う」

あいつは、前の家族に思うことがある。それを無視して勝手に話が進められるなんて。辛いだろう。

「ふふ、龍也は波ちゃんが好きなのね〜」

「そうなのか?」

「違う!湊が心配なんだ!」

「なら、龍也は波ちゃんのいとこなんだから、いとことして波ちゃんの近くにいたら良いじゃない。普通は、婚約者以外の異性と話すこともあまり好ましくないけれど、ね」

「まあ、いとこだからいいだろう」

「龍也なりに、波ちゃんと関わったらいいと思うわ」


僕なりに。

それなら、やっぱり、あいつに話を聞かないと。

聞き出すんだ、あいつの願いを。

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