第一章(4) 一人で探すよりも
「何を仰っていおられるのですか?」
ぼうりょく、という言葉の意味が私にはわかりませんでした。また、私がそう聞いたときの三人の顔を表す言葉も見つかりませんでした。
私の言葉の後、少しの間、誰も言葉を話しませんでした。
「なみさんは、住んでいた場所に帰りたい?」
「もちろんです」
学さんの言葉に私は言葉をすぐに返しました。
私はまだ役割を全うできていません。今からでも戻って私の役割を全うしなければ、誰かが不幸になってしまう。それはなんとしても防がねばなりません。
「そうか。では、この紙からナミさんの住んでいたところを見つけて、僕たちに教えてくれないかな?帰してあげられるかもしれない」
「ちょっと!?」
学さんは私に青と緑と白色の三色の紙を渡しながらおっしゃいました。陽子さんが学さんに何か仰っておりましたが、私は紙を見て自分の住んでいたところを探しました。
「あの、これで全部でしょうか?」
私の住んでいたところは、見つかりませんでした。
何かこの紙が違うのではないかと、聞きました。
しかし、
「これで全部だよ」
違うことはないようでした。
・・・・・・どういうことでしょう?
私の住んでいたところがないなんてことは、ないはずです。私の住んでいたところは平和でした。すぐになくなるようなところではありません。あの人がいましたから。
「・・・なみさん、ここで私達と住むのは嫌かな?」
学さんは私におっしゃいました。
私は学さんが何をおっしゃいるのか、わかりませんでした。
「なみさんが一緒に住んでくれると言うのなら、私達はなみさんの住んでいたところを探すことに精一杯協力しよう」
学さんは、ここに住んでほしいと、そして住んでいたところを探してくれるとおっしゃったのだとわかりました。
今の私は、すぐにでもあの人のところへ行かなければなりません。しかし、今あの人のところはわかりません。今すぐにあの人のところに行くことはできないのでしょう。
ですが、
学さんたちが見つけてくれるのだとしたら。
私一人で探すよりも早くあの人のところに行くことができる。
私はその場で頭を下げました。