第五章(7) 婚約・・・? By 龍也
湊の言葉に返事が出来なかった次の日、僕は驚いた。
学校に、あいつが来ていた。
声をかけようと思ったけど、やめた。
あいつは、きっと頑張ってここに来てる。
それを、自分が邪魔するのが嫌だった。
昼休み、湊を屋上に呼んで昼ごはんを一緒に食べようと誘っていた。
湊は、行けたら行く、との返事だったので、来ないのかと思ったらちゃんと来てくれた。
「昨日の質問の返事、してなかっただろ?」
「そうだね」
「僕、あいつのこと好きなわけじゃない」
「?」
「一緒にいたいとか、そんな事は思わないし、何よりおじさん取られたって思ってただけなんだ」
「でも、今は中宮家当主に頼らなくてもお母様とかいるでしょ?それでも、まだ、その感情なわけ?」
「おじさんを取られて悲しかったのは事実だ。今は、おじさんが幸せなら、それでいいと思ってる」
「波ちゃんじゃなくて、おじさんの幸せ、ね」
「そうだ。ただ、あいつに不幸せになって欲しいと思ってるわけじゃないけどな」
「そう。なら、いいや」
湊の、昨日の変な感じがなくなって、安心した。
僕は、おじさんが笑顔ならそれでいい。
あとは、あいつの願いが叶うことを願っている。
あいつと僕は、似てるから。
「そういえば、今日は昼、予定があったのか?」
「いや、波ちゃんが一人でご飯食べそうなら、一緒に食べようと思ったんだけど、その心配はなさそうだったからさ」
「湊、あいつに構いすぎじゃないか?好きなのはわかるけど・・・」
「いや、ちゃんと、中宮家婦人に頼まれてるよ。婚約者だし」
「は?婚約者?」
「うん。まだ、公表してないけどね。あれ、知らなかった?」
婚約・・・・?
そんな話、聞いてない!!!!!!
「あ、ごめん。僕も、今日の朝聞いたことだから、詳しくは知らないんだ。当主に聞いてみたら、わかるかもしれないけど・・・・」
「そうだな、聞いてみる。お前に先越されたのが悔しい」
「悔しいなら努力するしかないんじゃないの?」
「そうだな〜。面倒だな〜」
「そんなこと言ってるから先越されるんでしょ?」
「わかってるよ!」
家に帰ったら、父親に聞いてみよう。
そう思った。




