第一章(3.5) 陽子目線での第一章(3)
私は部屋を出て、夫のいる部屋に向かう。
「奥様、彼女、どう思いますか?」
住みこみでこの家のお手伝いをしてくれている安在さんはが私に聞いてきた。
「・・・そうね。なみさんは不思議な子だとは思うわ」
「そうですよね・・・」
安在さんはなみさんに少し不信感を抱いているのだろう。
「安在さん」
「何でしょう?」
「その不信感がわかりやすい表情はやめなさい。なみさんは今、一人で一番不安なはずよ。私達が安心させなくてはならないわ」
「申し訳ございません。今後気をつけます」
「そんなに重く考えないで」
私は考えすぎる安在さんに考えすぎないように、と伝えた。
そして夫のいる部屋についた。
ノックをして部屋に入ると、夫に助けた女の子の目が覚めたことを報告した。
「そうか。よかったよ。私もぜひ、会いたい」
「そうね。会いに行きましょう」
「・・・どんな子だった?」
「不思議な子でした」
「・・・話してみよう」
夫は彼女を助けたときから彼女を心配していた。
会いに行くと言うことは私はわかっていた。
再度なみさんを訪ねた。
ノックをして、ドアを開けると、ドン!!!!という音とドアが何かに当たる感覚がした。
「奥様、なみさんか・・・」
安在さんの指さす方を見ると、ドアにぶつかって倒れているなみさんがいた。
「なみさん!大丈夫ですか?!」
声をかけると、なみさんはしっかりと私を見て、
「私、何か失敗したでしょうか?」
と不安そうに言った。
何の話をしているのか、私も、近くにいた安在さんも分からずに、何も答えることは出来なかった。
その時、今まで私達の後ろにいた夫が前に出た。
「君はドアにぶつかって・・・」
「申し訳ございません!いつもと違うドアでしたので満足して頂けませんでしたが、次はしっかりとした場所に座っておりますので、どうか・・・」
その言葉を聞いて、私も安在さんも何も言葉が出てこなかった。
しかし、私達の前にいる夫は、
「こんにちは。私は中宮家当主の中宮学です。私からはこの二人を紹介しよう」
と穏やかに彼女に話しかけていた。
夫が私達のことを紹介している間、私はさっきのなみさんが言ったことを考えていた。
夫の言葉を遮ってなみさんが言った言葉は、とても信じられないものだった。
まるで、自らドアにぶつかりにいったかのような、またぶつかりにいくというような・・・
そこまで考えて、私は思っていた可能性が濃いことを感じてしまった。
そしてなみさんに近づきました。
「なみさん」
「はい」
声をかけてから、どう聞いたらいいのか、わからなくなって、言葉が詰まってしまった。
でも、聞かないといけない。
そう思って、
「もしかして、暴力を振るわれてましたか?」
と勇気を出して聞いたのだった。