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第四章(7) あの人を追いかける

私はあの人を追いかけて、追いかけて、そして、見失いました。

途中でしんどくなって、公園のベンチに座りました。


あの人に会えたのに。

あんなに優しい声で話しかけられたのは、久しぶりだったのに。

今だったら、普通に帰れたのに。

学さん達にも知られずに、帰れたのに。


そう思った時、自分が、さっきまで何をしていたのか、どうしてここに来たのか、思い出しました。


私は、岸様の言葉に対して、敬語、も付けずに、返事をして、ほってきてしまった・・・・

帰るつもりで。


ゴロゴロゴロゴロ・・・・・バーン!


空から、大きな音がして、その後、大粒の雨が降ってきました。


あ・・・

そういえば、あの日も、私がここに来たときも、雨だった。


ってことは、あの人、帰っちゃうのかな・・・・


「嫌だ!置いて行かないで!私、私・・・・」

そう言っても、もう、届かない。

私を迎えに来てくれた人は、私を置いて帰ってしまった。


だからといって、

私はこれから、失礼を働いた岸様には顔を合わせられない。

岸家に失礼を働いた私は、中宮家にも必要ない。

大宮家に、学さん達が怒られる・・・・


全部、全部、私のせい。


私が、あの人に追いつけなかったから。

あの人の優しい声に、こたえられなかったから。


身をわきまえろ

本当に、そのとおりだ


私が関わらなかったら、誰も怒られない。


私がもし、あそこに帰らないで、ここにいたら、あの人は拾ってくれるだろうか。

そうか。

私は、待ってれば良い。

私らしく。

あの人が褒めてくれた私らしく。

それなら、ここじゃなくて、道がいい。


私は道で、学さんに拾われたらしい。

だから、私は道で、学さんではなく、あの人に拾われたい。


私は雨が多く降る中、ベンチを立って、道に向かった。


お願いします。

どうか、どうか、あの人に、会えますように。

あの人に、拾ってもらえますように。


身体が冷えて、寒くても、ただ、ただ、願っていた。


「おい!しっかりしろ!」

「波ちゃん!しっかりして!波ちゃん!」


その声だけ、私は帰れなかったんだと告げて、私の頭に嫌というほど残った。

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