第四章(6) あとらくしょん
私は岸様に手を掴まれながら、次々に、アトラクション、というものに、乗りました。
「波ちゃん、酔いやすかったり、する?」
「・・・わかりません」
「じゃ、乗ってみよ!」
そう言って、私達が乗ったのは大きなコップで、コップがぐるぐると回るのが面白くて、自然と笑顔になってしまいました。
「波ちゃん、怖いの、大丈夫?」
「わ、わかりません・・・・」
「僕が手は握っててあげるから、怖かったら、手、強く握るんだよ?」
そう言って私達が入った建物の中には怖い物が沢山あって、ついつい岸様の手を強く握ってしまって、怖くて前が見れなくなってしまいました。
「やっぱり怖かった?」
「は、はい・・・」
「これ、お化け屋敷って言うんだよ!」
「おばけやしき・・・」
「楽しかった?」
「怖かった、です」
「そっか。僕は楽しかったよ!」
岸様は、そう、笑顔で言ったのでした。
その後も、私は逆さまに空を飛ぶ物だったり、トロッコ、というものに乗ってそこにある武器?で敵を狙うという物だったり、色々なアトラクションに乗りました。
「ねえ、波ちゃん。気になってたこと、聞いていい?」
「は、はい」
次は、どんな物に乗るのか、と思っていたときに、そう聞かれました。
「なんで、目、合わせてくれないの?」
あ・・・・・。
忘れてました。
ここに来てすぐ、ちゃんと学さんに教えてもらったのに。
「も、申し訳ございません」
「僕の目、見て言って?」
そう、優しく言われてしまいました。
「そろそろ、17時だし、帰ろうか!」
「は、はい・・・」
「今日、どうだった?楽しかった?」
「はい。とても、楽しかったです・・・」
「そっか。僕も、楽しかったよ!」
楽しい、という感情を今日始めて感じた気がします。
「また、一緒に来ようね!」
「は・・・・」
「何笑ってやがる」
「へ?」
私がはい。と、返事をしようとした時、隣からそんな男の人の声が聞こえました。
「身の程知れ」
「え?」
「波ちゃん?」
岸様が私の名前を呼びました。けれど、私はそれどころではありませんでした。
私に声をかけているこの声に、聞き覚えがありました。
「お前は俺のものだろ?俺以外の目を見んじゃねぇ」
!!!!!
その声は、やっぱり、私が聞きたかった人の、声でした。
私は隣を見ましたが、周りには女の人しか居なくて、少し前に一人の男の人がいました。
私はその人を追いかけようと走り出しました。
「波ちゃん!」
「離して!」
急に走り出した私の手が岸様に掴まれて、私はそう言いました。
「な、波ちゃん?!どこ行くの?」
「迎えに来てくれた人!」
「え?」
岸様が驚いたようにそういった時、手が緩んだ気がして、私はあの人の姿を、追いかけました。
やっと、やっと、迎えに来てくれた!
それだけで、私は涙が溢れるのだった。




