第四章(5) つまらない最後の仕事 By 龍也
僕は朝からしょうがなくとある遊園地に来ていた。
チケットは事前に買ってある。
僕が遊園地に着いてから1時間後、待ち合わせをしていた女子生徒が来た。
「すみません!遅れました!」
「あ、ああ。中に入ろうか」
「ええ。私、年パス、というものを持ってますの。大宮様、チケットはお持ちですか?」
「ああ。待ってる間に買った」
「そ、そうでしたか。では、入りましょう!私、乗りたいものがたくさんあるのです!」
女子生徒は一人楽しそうに中に入っていく。
「大宮様、遅いですわ。急がないと行列になってしまいますわ!」
「ああ。すぐ行く」
こいつ、連絡をしているにも関わらず、何も返信が来ない日も普通にあるし、今日も待ち合わせ時刻を50分も遅れて来ている。
僕と一緒に出かけたいと言うから一緒に来てあげているのに、僕のことは構わずズカズカと中に入っていく。
僕に媚を売る女は、今までも多くいた。
その影響で、女嫌いになった。
だから、女に関わらずに生きていきたかった。
そんなこと、許される訳もなく、諦めて、この女子生徒と話すことにした。この女子生徒と普段話すには、今までの女と違って楽だった。
しかし、女は大体面倒だ。
この女子生徒も、僕という大宮家の子息とただ、遊園地に来たかっただけなのだろう。
沢山のアトラクションに列んでは、乗り、列んでは乗り、の繰り返し。
このつまらない仕事が早く終わらないかと、何度も何度も思った。
いつぶりだろう、こんなにつまらないと思ったのは。
湊といたら退屈しない。
おじさんの家に、行っていても、退屈しない。
ああ、おじさんの家に、行く前だ。
本当に、久しぶりだった。
「ねえ、次、何乗ります?」
すでに昼を過ぎて、ご飯を食べた後、そろそろ帰りたいと思う僕に、そう聞いてきた。
「何か、君が乗りたいものに乗ろう。何でも乗る」
「・・・・」
急に女子生徒が黙ったと思ったら、女子生徒は一点を見つめていた。
「どうした?何か乗りたいものでも・・・・」
「いえ、私達も負けてられませんわ」
「?」
「ほら、岸様にも、良い方がいらっしゃるようですから」
その言葉に、僕は女子生徒が眺めていた方向を見る。
そこには、楽しそうなカップルがいた。
そして、それは湊とあいつだった。
「何であいつらが・・・」
「大宮様、行きましょ!私、次は・・・・」
正直、その後の記憶はあまりない。
次の記憶は、湊から電話がかかってきたことからだ。




