第四章(3) 僕にお任せ下さい By 湊
毎日、二組に波ちゃんに会いに行っては、波ちゃんの机に荷物がないことを見て、悲しくなる。そんなことがもう1ヶ月も続いている。
確かに、今回の事件?の結末は波ちゃんの意見は全く聞かなかった。
正直、聞いた方がいいのではないかと思ったけれど、中宮社長が聞かなくていいと言ったから、僕らの独断で色々なことをしてしまった。僕たちが行った対処は間違ってないと思うし、処罰されるべき人たちだった。けれど、もし、僕たちの方法ではなく、波ちゃん本人が解決することを望んでいたとしたら。僕たちの方法に不服だったのなら・・・。
僕は、この1カ月間、龍也に一緒に波ちゃんの様子を見に行こう、と誘ったけど、龍也は全く乗り気じゃなくて、それに最近僕が仲介?したあの令嬢と話していることが増えたから、なんというか、話しかけにくくなった。
でも、もう波ちゃんと会えてない期間は1ヶ月になった。
とりあえず、会いたくて、中宮家に行った。
「令嬢が、少し、心配で。お見舞いに来てしまいました」
そう言うと、快く屋敷に入れてくれたけど、客間に入って少しして、来たのは、中宮家当主、婦人、女中の三人だった。
「・・・・今、どのような状態で?」
「それが・・・私たちにもわからなくて」
「と、言うと?」
わからない、そんなことがあるのかな・・・?
「初日、玄関までは行かれたんです。ですが、靴を履く前に立ち止まってしまわれて。そのあと少したたずんで、お部屋に戻られてしまって・・・・」
「じゃあ、行くつもりだったと?」
「そう思います」
なら、どうして、来れていないのだろう?
玄関に虫でもいたとか?・・・・そんなわけないけど。
「で、現在は?」
「そのあと、お部屋から出てきておられません。お食事もすべて自分のお部屋で召し上がられておられます」
あ・・・一般市民で言うところの、引きこもりってやつか。
「・・・・正直、私たちにもどうしていいのが、わからなくて」
「なら、僕にお任せ下さい。僕が、解決します」
僕も正直、どうしていいかわからない。だけど、波ちゃんと会いたいし、波ちゃんに笑って欲しい。
「いえ、岸様のお手を煩わせるわけには・・・」
「任せてください」
僕は力強く言った。波ちゃんの笑顔の為に。




