第四章(2) 言葉と会えない孤独
私はあの後、何があったのか、覚えていません。
目が覚めたら、学さん、陽子さん、安在さんが私のベッドの横にいらっしゃって。
三人は私が目覚めたことに泣いていました。
いつ、ここに来たのか、聞きたくても、聞けません。
私は、あの日、求めていたものと似ているものをもらいました。
だけど、なぜか、嬉しくありませんでした。
色々考えてみて、それはあの人じゃなかったからだと気が付きました。
やはり、私はあの人の元に帰らねばならないようです。
あの人が恋しい。
あの人のところに帰りたい。
役目のために。私のために。
目が覚めた次の日、私は学校に安心して通えるようになったと、学さんが教えてくれました。
「波さんは、もう、安心して学校に通えるよ。龍也くんや岸様が対応してくれたおかげだ」
「・・・・・」
安心・・・・それは、ここでは得られません。
「波さんに沢山しんどいことがあったと思う。すまない」
「・・・・・」
しんどくないです。あの人たちがおっしゃっていたことは、何も、間違ってはいないから。
「学校も、無理に行きなさいとは言わないよ。だけど、環境が整ったら、できれば、行ってくれると、助かる、かな」
「・・・・」
私が、いてはいけない場所なのです。学校は。
「やっぱり、行きたくない?」
「波さん、あなたが、今思ってることを話してください」
「・・・・私のいていい場所ではないです」
「え?」
「私は、いつ、帰れるのですか?」
「い、今、まだ探している途中なんだ。もう少し、時間がかかると思う」
「・・・・そうですか」
「学校も、あちらの世界に帰ったときに役に立つこともあると思うから・・・・」
「・・・はい」
私は、学校に行くことになりました。
学さんから教えてもらって数日後、私は学校に行こうと準備をしました。
玄関の前で、私は声が聞こえました。
『庶民が来る場所じゃない』
『立場をわきまえなさい』
この間も、言われた言葉でした。
『お前が学校?』
!!!
そう、私は、学校に行けなかった。そんな私が学校に通っていたとあの人が知ったら、私に何というでしょう?行く必要がないと、そういう気がしました。
「・・・波様?」
私は、玄関から自分の部屋に向かって歩き出しました。
「波様!?」
私は部屋に入って、荷物を置いて、そのまま、目をつぶりました。
今なら、あの人に会える気がしたからです。




