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第四章(1) 面倒なクラスメイトと僕の感情 By 龍也

あの騒動から一カ月が経過し、僕たちはしっかり日常に戻った。

しかし、今日は日常でない部分が一つ。

「私と婚約していただけませんか?」

同じクラスの女子生徒が僕にそう、声をかけてきたからだ。

「は?」

「私、ずっとあなた様のことが好きでしたの。しかし、父の会社が海外を拠点とすることになりまして、この学校を去ることになってしまうのです。なので、その前に、と。」

「・・・・」

呆れる。学校を去るからと言って、僕に関係ないし、名前も覚えてない女子生徒が消えても多分わからない。

「・・・・やはり、無理、ですよね。」

「ああ。無理だ」

「なら、一日だけ、私とお出かけしてくださいませんか?」

「・・・・お出かけ?」

「はい」

「いや、それは・・・・」

「いいじゃん!」

「は?」

急に話に入ってきたのは、予想通り湊だ。

「お嬢さんが行きたいって言ってるんだよ?それにさっき、彼女の本当の願いは断ったんだから、そのお詫びだと思って行ってあげなよ~」

「・・・・」

「あ、でも、お嬢さん、僕たち貴族は普段、取引で成り立ってる。もちろん、これはデートではないし、スキンシップは禁止だ。龍也もそこらへんはわかってる。君も、わかるよね?」

「はい、もちろんです!」

「龍也、どうするの?こう言ってるけど?」

「・・・・わかった。今回は湊が関わったから、しょうがなく行ってやる。保護者には言うな。誤解は面倒だ。湊との約束と僕との約束を守ることが条件だ。いいな?」

「はい。ありがとうございます」


「湊!何で今日はあんな面倒なことに関わったんだ!」

僕の家に遊びに来た湊に、文句を言う。

「え~、だって、あの令嬢、他の令嬢と違ってなんというか、雰囲気が違うからさ、龍也好きなら、もったいないかな~って思ってさ」

「もったいないとか意味が分からないな。僕には必要なかったのに。面倒だ」

「でも、そろそろ、時間の限界が近いよ、龍也」

「・・・そうだな」

時間の限界。それは僕らが婚約者を自分で選ぶことが出来る時間の終了が近いという意味だ。

僕らは高校生には婚約者を決めなければならない。今現在高校二年生の僕らには、自分で婚約者を決めれる時間は今年中しかないと言っても過言ではない。婚約者決めを家がするとなると相当の時間がかかる。だから、高校三年生の春には家は探し始めるのだ。

「だからさ、今回の令嬢とも、話してみるといいと思う。龍也、普段令嬢と話さないから、こういう機会が大事でしょ?」

「・・・・そうだな」


僕は正直、なんでもいい。

もともと、政略結婚が主流だったんだから、僕はそれでもいい。

相手は誰でもいい。

嫁いできた令嬢には、自由にしてもらう。

それでいい。


そう、思ってたのに、なぜだろう。

あの女子生徒と出かけるのが、面倒とか、疲れる、とかの感情よりも、

嫌だ、と思う僕がいることに、驚く。

何が嫌なのか、わからないが。


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