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第三章(16) 出来事の勝手な結末

目が覚めると、今日は少し、気分が楽でした。

やっぱり、ベットなんかでは寝れません。


この間の事があってから、私は熱という病にかかってしまったみたいで、誰もこの部屋から出てくれなかったのでした。しかし、熱が下がると皆、心配そうに私を見るだけになりました。

私はしんどくなかったのに。


目が覚めてから、ベットに乗り、少し天井を眺めていると、ドアが空いて、私を起こしに来た安在さんが部屋に入ってきます。

「お嬢様、お目覚めのお時間です」

「・・・・」

「今日はご予定がございます故、お動きになってください」

私はいつもに通り動きます。あの人は変化を嫌っていたからです。


それにしても、ご予定って、何でしょう?

しんどくなかったのにしんどい方向へ動いていくような、そんな予感がするのです。


「失礼致します」


数時間かけて、身体を洗われて、髪を結ばれて、化粧をされて、高そうな服を着せられました。全て終わったと思ったら、学さんに呼ばれていると言うので、安在さんに案内されて来た部屋に入ると、そこには沢山の人が居るようでした。


「こちらの令嬢は、どなたかなですかな?」

「波さん、自己紹介をなさい」

「初にお目にかかります。中宮波と申します」

知らない男の人の声がした後、陽子さんの声が聞えて、私はすぐに礼をしながら自己紹介をしました。

「波さん、こちらへいらっしゃい」

私は陽子さんに呼ばれて、陽子さんの隣に座りました。

「ご紹介します。中宮家令嬢、中宮波さんです」

湊様が私をもう一度紹介しました。

「中宮家、令嬢・・・・・」


「ねえ、龍也様、なんでこいつを呼んだの?」

「理由の説明を、よろしいですかな?」

「お前らが中宮家を侮辱したからだ」

聞こえてきたのは龍也様の、聞いたことがない低い声でした。

「侮辱なんて、そんな事するわけが・・・・」

「黙れ。さっきまさに貴方の娘が中宮の令嬢を侮辱したばかりで、良くそんなことが言えるな」

「いえ、これはこのような性格なのです。決して侮辱しているなんてことは・・・・」

「そうか。では、栗松嬢、何か私に伝えたいことは?」

「わ、私、決して中宮家を侮辱したことはございませんわ」

「令嬢は侮辱したと?」

「してはならない理由がわかりませんわ」

「・・・そうか」

栗松さんは、私をぶじょく?した?よくわからない会話が先程から繰り広げられていて、私はついていけませんでした。

「じゃあ、僕は君に聞くよ。僕に伝えたいことは?」

「私との婚約は覆りませんよね?」

湊様に聞かれた令嬢は、湊様の婚約者なのでしょうか。

不思議に思ったのは私だけではないようで、陽子さんも驚いた顔をしていました。

「僕が君と婚約?」

「ええ。私、ずっと昔より貴方様と同じ環境で育ちましたし、少しは信頼されているのではと思っておりましたのに、こんなしょうもない会に無関係の私が呼ばれるなんて、恥にも程がありますわ」

「・・・・」

「ですから、私は貴方様と婚約することで家の恥とならずに済むのではないかと・・・・」

「僕が君と婚約することは天地がひっくり返ってもないな、濱あゆみ」

「どうして?私では不満?」

「岸家の第一子会社令嬢がイジメの主犯だなんて、不満しか無い」

濱あゆみと呼ばれた彼女は、同じクラスのあまり話したことがない方でした。

「それは、あなたのお父様の意見ね。あなたの意見は?」

「残念ながら、僕の意見だよ」

「・・・・」

「君たちにはそれ相応の処罰が下る。それに怯えて、この数日を過ごせ。話は以上だ。出てけ」

処罰?私、何もされていないのに?

そう言えたのなら、どれだけ楽だろう。

私は、ここにいてはいけない。私の意見など、言ってはいけない。


「いくら何でもその態度はいかがなものでしょう、大宮様」

「何を言っている?階級制度の時点で僕たち本家の子息のほうがあなた達より格は上だし、勝手な婚約願望で父親を連れてくるばかりではなく、許可もしていないのに名前呼びをしたりしている時点で、そちら側の態度がなっていないのではないか?」

「!」

「退出せよ」

私以外の人が、皆さんを車まで案内されました。龍也様と湊様はすごく怒っていらっしゃるようでした。


「庶民」

急にそう、呼ばれた私は振り返ると、濱様がいらっしゃいました。

もう、皆様、車のところへ行かれたのに、どうされたのでしょう?


「あんたのせよ!」

そう言っているのを聞いていると、額に痛みが走りました。

「あなたがいなければ、私は湊と結ばれたのに!あなたがいなければこんなことにはならなかったのに!」

何度も、何度も、痛みは走ります。なのに、なぜでしょう。求めていた痛みであるのに、何も嬉しくなうのです。

「あんたのせいよ!」

彼女は、ずっと、ずっと、そういいながら、私を殴っていました。

私が最後に聞いた彼女の声は、ただ普通の、悲しみに染まった、少女の泣き声でした。

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