第三章(15) 呆れと憎悪 By 龍也
次の日、僕と湊は、学校が終わり次第それぞれ令嬢を迎えに行った。
僕が迎えに行くと、令嬢は僕に向けて不細工な笑顔を向けた。
「遅れてすまない」
「・・・ホント〜に」
何か言っていたが聞き取れなかったのでスルーすることにした。
「では、行くとしよう」
「あ、お待ちくださいませ、龍也様〜」
龍也様なんて呼び方、許可した覚えはないし、そんな声で呼んでほしくない。気持ちが悪くなってきた。
「・・・なんだ。時間がない。早くしろ」
「お父様が今日、ご一緒したいと申しておりまして。車でわたくしを待っているの」
「・・・招待を断るわけではないな?」
「ええ。もちろんですわ!」
「なら僕の家の車について来い」
「わかりましたわ。では、少しの間、離れます」
令嬢はそう言って僕から離れ、自分の家の車に乗った。
僕は自分の車に乗って、おじさんの家に向かった。
僕は二人を大会談室に連れてきた。
「・・・」
ここに入った瞬間、僕と湊以外は、固まっていた。
「お二人とも、どうぞこちらへ」
僕が、声をかけると動き出したが、案内した席が湊が連れてきた令嬢とその父親の二つ隣だったことに気がつくとまた固まった。
「ねえ、龍也様、どうしてここなの?」
「・・・」
「では、話を始めようか」
僕が連れてきた令嬢の発言を無視して湊が話を始めた。
「今日ここに集まってもらったことには訳がある。それに、皆は気がついていると思う」
「ええ。もちろんですわ!わたくしと湊様、栗松家と大宮様のご婚約のお話・・・」
「何を言っている?」
「「え?」」
湊の普段聞いたことのない低い声での発言に四人は驚いた。
「僕は聞きたいことがあっただけだよ」
湊はさっきのことはなかったかのように普段通りの声で話した。
「「何なりとおっしゃって下さい!何でもお答えすると誓います!」」
それが怖く思ったのか、もしくは婚約できないと焦ったのか、二人の父親が僕たちに向けて頭を下げて言った。
「単刀直入に問う。中宮家令嬢について、どう思う?」
「あの庶民でしたらご心配なく。わたくし達で始末した故、もう出てくることはないでしょう」
「ええ。身の程もわきまえず、湊様や大宮様に近づき、一緒にダンスまで踊らせるような庶民には必要なことでしたわ。湊様が心配なさるようなことではありませんわ」
「・・・そうか」
「納得していただけたでしょうか。我が家の娘はこの通り、岸様のお役に立てると考えます!」
「我が家の娘もこのように、必ず、大宮様のお役に・・・」
「黙れ」
僕と湊が、もとより苦痛な令嬢との会話が、これだけ続いただけでも褒めて欲しい。
これ以上、聞いていることは出来ない。吐き気がする。
何がお役に立てるだ。
子が子なら、親も親なのだと、血の繋がりを濃く感じる。
呆れる。
それに、聞いているだけで湧き上がるこの感情はなんだろうか。
ああ、おじさんを、バカにされたように感じて生じた、憎悪だ。




