第三章(13) 清掃員の話 By 龍也
次の日の放課後、僕と湊がおじさん家に行くと、応接室に通された。
今日一日、湊からは何も話されていない。学校も何もなかったのように終わった。
「おまたせしてすみません」
そう言って部屋に入ってきたのはおじさんとおばさん、そして知らない人だけだった。
「波ちゃんは?」
「はい。あの娘は今もまだ現状を理解できておりませんゆえ、今日は不参加とさせていただきたく・・・」
「えー。じゃあ、話し合い終わったら二人でお見舞いに行ってもいい?もちろん、お二人の同席の上で」
「わかりました」
勝手にお見舞いに行くことになっているが、もう、しょうがない。
「ありがとう。じゃあ話してもらえる?昨日と同じ話」
「はい」
湊が知らない人にそういうと、彼女は話しだした。
彼女は1年前に勤め始めた、学校の清掃員だった。
しかし、昨日学校に来て、朝一番の掃除をしていたとき、一人の生徒が声をかけてきたらしい。
「私、自分と皆さんの立場の違いが多すぎて、学校のことを詳しく知ろうとしていなかったんです。だから、はじめは声を掛けられて驚きました。そしたらご令嬢様は自ら名乗りなさって、私はこの人とお話できていることを夢のように思いました」
しかし、彼女はその女の提案を聞いて、それはまずいのではないかと思ったそうだ。
「ご令嬢様がおっしゃった内容は今、世間でイジメと疑われるものだとすぐにわかったので、断ろうとしたんです。だけど、脅されて、私は引き受けざる負えませんでした」
彼女は昼休み前に、トイレを清掃中のため立ち入り禁止の看板にして、あいつが来る時間だと言われた時間だけ、その看板を外したそうだ。
「私、ここの令嬢様が中に入られて、その後でご令嬢様達が入られて、また、看板をかけました」
その後のことは何が行われているのかは分からなかったそうだ。
「でも、言われた通り、皆様が出て行かれた後、掃除に入ったんです。そしたら・・・」
床は水浸しで、昼食だろうものが落ちていたという。
「私、信じられなくて、怖くなりました。私の知っていたイジメを超えていたからです。すぐに片付けて私はその場を離れました。体調不良を訴えて隠れていました」
無事に授業時間が終わり、やっと清掃員の待機部屋で今日のことを後悔していた時、湊が来て、正直に話したそうだ。
「・・・話してくれて感謝する」
「いえ、感謝などされる覚えはありません。それに私が断れていれば・・・」
「あの、質問、いいですか?」
「はい。大丈夫です」
「誰なんですか」
「・・・・・・」
「湊は聞いてんだろ?教えろ」
「それが教えてくれないんだよ。僕も昨日教えてって言ったのに」
「すみません」
「お前、言わないと今回の件を学校に報告して、クビにしてもらうぞ」
「龍也君?!」
「それは困ります!」
「お前がやってるのはイジメへの加担だ。お前が逆らえない状況だったとしても、それは変わらない。主犯でなくても犯罪者が逮捕されるのと同じだ」
僕がそういうと、彼女は少し悩んでから、
「わかりました。お話します」
「そうか。で、誰だ」
「それはーーーーーー様です」
僕と湊は声を発することが出来なかった。
清掃員は今日もおじさん家に泊まることになった。
僕は常に僕の家に雇われている探偵に至急情報提供を頼んだ。
そして、明日、またここで話すことになった。
僕達は話された人物に驚きすぎて、あいつのお見舞いどころではなくなり、今日は帰ることにしたのだった。




