第三章(12) おじさんの言葉と湊の報告 By 龍也
僕たちが家に帰ると、安在さんは安心した表情になったがあいつの服を見て顔を強張らせた。
「とりあえず着替えましょう」
おばさんの提案であいつは着替えることになった。あいつと安西さんが更衣室に行くと、少しして、安西さんだけが戻ってきた。
「奥様、波ちゃん、熱あります!」
おばさんにそう報告すると、僕とおじさんは驚いただけだったが、おばさんはすぐにおじさんに一言伝えた。
「私、今から波ちゃんのところに行くわ。声をかけたらお医者さんに電話をして。頼んだわ」
おばさんが安在さんと移動してから、僕は違和感を覚えた。
どうして熱があるんだろう?
さっきの服と関係があるのだろうか?
あいつに何があったんだ?
そんなこと思っていると おじさんは何も喋らないことに気がついた。
「ねえ、おじさんは何で 急にあいつを養子にしたの?」
僕は気になっていたことを聞くことにした。
「なんで?」
「今まで養子、取って来なかったじゃん。確かにおばさんの年齢もあるかもしれないけど、でも僕と同い年の子じゃなくても、全然大丈夫だと思うんだ。それも女の子だし」
「まあ、いろいろあってね。いつか必ず話す。だから、今は待ってほしい」
「いや、僕もごめん。急でまだ、あまり理解できてなくて」
「ごめんね」
急に謝られて僕はなんて返事をしたらいいのかわからなくなる。
「いや、大丈夫。僕ももう、子供じゃないし。寂しくはないから」
「寂しいときは寂しいって素直に言っていい。僕や妻が龍也君が大好きなのは変わらないよ。安心して」
「うん」
おじさんには、僕の気持ちはすぐバレる。それはいつものことだ。
「あなた、電話!」
「はい!分かった」
おじさんはおばさんの言葉を受け取り、電話をかけていた。夜になっていたから、説得に時間がかかったみたいだけど、いつものお医者さんが来てくれることになったらしい。波と言うと、あの後すぐに眠ってしまったらしい。お医者さんによると体が冷えたことによる熱じゃないかということだった。
「波が眠っている今、話を聞くことは出来ないね」
その時、スマホが鳴った。
ラインで、湊からのメッセージだった。
『犯人の有力情報。清掃員を保護したい。どうする?』
僕は少し考えて、おじさんに相談することにした。
「おじさん、湊が犯人の有力情報を見つけてくれたんだ。ただ、それを話してくれた人がその犯人に脅されてるらしくって。保護してあげたいんだけど、ここ大丈夫かな?」
「ここかい?別にいいよ」
「ホントに?」
「ああ。明日は、波は学校休ませる予定だから、その間に波とその人から私達大人だけ、軽く話を聞いておけるしね」
「じゃあ、湊にそう伝える」
「あ、岸家の方に迷惑をかけるわけにはいかない。安在さんに迎えに行ってもらおう。岸様は安在さんと面識はあるよね?」
「ああ。多分わかると思う」
「それなら、安在さんが来るまで待っててもらうように岸様にお願いしてくれるかな」
僕は言われた通り伝えた。あいつを見つけたことも。
すると、返事が来た。
『明日、僕も同席していい?』
「おじさん!湊が明日一緒に話聞きたいって言ってる」
「もちろん来てもらって大丈夫だよ」
はー
僕は言われたことをそのまま連絡すると、
『ありがとう』
と返事が来た。
犯人はただでは済まないな。
そう思う僕だった。




