第三章(11) 波を見つけ、そして驚く By 学
公園に賭けたのは、波ちゃんが外に出たときにどう行動するのかを考えたらすぐ思いつくことがあったからだった。
波はきっと、あの人に会いたがっているはずだ。あっちの世界に帰りたいはずだ。見つけてもらうために、外にいなきゃいけないと思っているはずだ。僕たちは、情報を何も持っていないと言っているし、彼女がもし、学校内で何かあったのだとしたら、僕たちではなく、あちらの世界の誰かに頼りたいと思ったのだろうか。僕らはまだあまり信用されていないのかもしれない。いや、今はそんなこと言ってる場合ではなく、僕たちは返してはならないから、見つけなければならなくて、もし見つかった時に彼女から何が語られるのか怖いけれど、必死に探していた。そしてついに見つけた。彼女は公園のベンチで座って夜空を見上げていた。
「波ちゃん」
そう声をかけても、波ちゃんは反応しなかった。
制服でも寒いと思い持ってきてあった上着を波ちゃんに近づいてかけてあげた。
すると彼女は驚いたような顔をして振り返り、その後、幸せそうな表情になったが、僕と目が合うといつもの顔に戻っていた。
波ちゃんは、
「ま、学さん、ごめんなさい」
と言った。
「謝らなくていいよ。家に帰ろう」
「私は帰れないです 」
「・・・どうして?」
僕は波が断るなんて思わなかった。
「私は帰らなきゃいけないので」
「なんで?」
「私の居場所はここじゃないと、もともと思ってたんですけど、今日、思い知らされました」
やっぱり、波ちゃんは、あっちの世界に帰りたい思っていた。
「・・・とりあえずみんなで話をしないかな?」
「・・・わかりました」
僕は波ちゃんが話をすることを許してくれてホッとした。
その会話の後、僕と電話が繋がっていた妻と龍也君が公園に来た。
「波ちゃん!心配したのよ?どこか怪我をしてない?」
「・・・大丈夫です。すみません」
「謝らないで」
妻は泣いていた。妻が本気で波ちゃんを心配していたことが伝わって、僕まで泣いてしまいそうだった。
「大宮、さんも、ご心配、おかけして、すみません 」
僕が泣きそうになっている間に、波ちゃんは龍也君のところに行っていて、龍也君に話しかけていた。
「いや、僕は心配してない。ただ、おじさんを手伝っただけだ」
「龍也君!?」
僕はついツッコんでしまった。
「・・・すみません」
「まあ、とりあえず家に帰ろうか?」
僕のこの一言で、僕たちは公園の木の影から、家に帰るために一歩を踏み出して、街灯の下に来た。
僕は驚いた。
彼女の制服には、様々な食材がついていた。




