第三章(10) 商店街? コンビニ?公園? By 龍也
僕は地図を握りしめて、不本意ながらもおじさんのためにあいつを探すことにした。
「おーい!どこにいるんだ!」
声をかけても出てくる気配はない。
一体どこに行ったんだ・・・
僕とおじさんはスマホで電話を繋ぎながら、別々の場所を探していた。
僕はあいつの行きそうな場所なんて知らないんだけどな・・・
そんなこと思いながら僕は歩いていた。おじさんたちも見つからないようで、焦ったおじさんの声がスマホから聞こえた。
「波さんの行きそうな場所に心当たりないの?」
『心当たり、ね・・・』
「僕は、あいつがどこにいたのかとか、どこで出会ったのかとか、何も知らないけど、そういう場所とか、可能性あるんじゃない?」
『出会った場所はいないかな・・・』
「何でですか?」
『自宅の前だから。さっきいなかったからさ』
「そうですか・・・」
『他にあの子が、ここら辺の地図を覚えてると思えないんだよね』
「そうですか。じゃあ、商店街とかじゃないですか?人が多いし、逃げるならそっちの方がいいと思いますけど?」
『・・・・あの子は、人が多いところに行ってしまったのだろうか』
「人が多いところだと、何かあるの?」
『あ、いや、気にしないでくれ。それよりも、ここら辺って飲食店やコンビニ、公園などはあるかい?』
「公園ですか?」
『飲食店だと中に入らなきゃいけないし、コンビニも長居はできない。ただ、公園だったら、ベンチもあるだろうし、1人で学生がいてもおかしくはないだろう?』
「確かにそうだけど・・・・令嬢が一人で、公園なんかいるかなー?」
『いるかもしれない。僕は、周辺の公園を探してみるよ。 龍也君はコンビニを中心に、探してくれるかな?』
「はい、わかりました」
『頼んだよ』
その後おじさんたちの走る音が聞こえてきた。あいつは人が多いところが嫌いなのだろうか?だとしたら、学校もしんどかったのかもしれない。そう思うと、早くおじさんたちと話をさせてあげたいなと思う。早く見つかってほしい。おじさんの焦るような声は、もう聞きたくない。
そこでふと、思ったことがあった。
あいつ、何でおじさん達に話さないのか。
おじさん達だったら、しっかりと聞いてくれる。
おじさんは、俺の両親とは違って子供に優しくて、寂しい思いなんて絶対にさせない。
逃げたくなるようなことなら、逃げる前に誰かに言うのが普通だろう。
おじさんに素直に話せば、おじさん達に、心配かけることなんてなかっはずだ。
そう思えば思うほど、あいつが許せなくなってくる。
さっさと見つかって、おじさんが嫌いになるほど怒られろ!
そんな勝手なことを考えながらコンビニを探す僕だった。




