第三章(8) 僕達と龍也君で波を探す By学
ピンポーン
その音を聞いて僕は椅子から飛び上がり、玄関の鍵を開けた。そこには僕が呼んだ龍也君がいて、すごく安心した。「ごめんね。忙しかったと思うんだけど・・・。本当に大丈夫かな?」
「僕は大丈夫です。それよりも、学校から電話ありましたか?」
「それが、やっぱりカメラに写ってなかったみたい。それに校内の様子もあんまり映ってなくて、最後にお手洗いに行ったのはわかってるんだけど、そっから出てきてないみたいなんだ。体調が悪いのかと思って、清掃の人にさっき入ってもらったんだけど、誰も人はいなかったって言うし、もうどうしていいかわかんないよ・・・」
「お手洗い・・・」
龍也くんはボソッと呟いてから、
「おじさん、学校じゃない!外だ!」
と言った。
「外?」
「そう、外。お手洗いは教室棟と離れた塔にあって、その塔には多くのカメラは置かれていないし、そこの裏には 扉がある。裏口があって、そこは今、すごい草が覆い茂ってるから、令嬢は近寄らない。まあ、僕たち上流貴族も入らないけど」
「そんなことがあるのか・・・。やっぱり外か・・・」
「おじさん、あいつ、養子なんだろ?可能性あるし、暗くなる前にとりあえず外、探さなきゃ」
「そうだね。外探しに行こうと思う。龍也君はここで待ってて・・・」
「いや、おじさん。僕、行きます」
「けど・・・」
流石にそこまでしてもらうのは申し訳なくて、留守番をお願いしていたのに・・・
「安西さんに、ここにいてもらった方がいいと思います。 僕がここで留守番しても、おじさんの仕事関係の人が来た時に対応できないですし。それに比べて安西さんだったら、できると思いました」
「確かにそうだわ」
僕よりも先に安在さんが賛成してしまった。
「僕が精一杯探してきます。だから、僕も連れてってください」
龍也君は、僕に頭を下げた。
「分かった。龍也君の方が僕たちよりも体力あるだろうし・・・。頼めるかな?」
「はい!あ、でも、その前に電話してもいいですか?」
「いいよ」
龍也君は電話が終わるとすぐに戻って来たのを見て、
「では、今からこの地図を持って、周辺を探してみよう 。もし、今日、見つかんなかったら、警察に届けるってことで」と言った。
「「分かりました 」」
探しだして少しすると、
見つかるだろうか?
と、そんな不安な感情に心が支配されそうになる。
見つかってほしいし、話しがしたい。
でも、そう思うと同時に、もしかしたら波は帰ってしまったのではないか、と思えてきてしまう。
僕は守りきれなかったのかもしれない、という気持ちに押しつぶされそうになる。
でも、必死になって波を探してくれる龍也君を見て、僕も妻もこのままではいけない、と、精一杯地図を握りしめて周辺を周るのだった。




