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第三章(6) 私はここにいてはいけない

次の日、私は、昨日とは違うクラスの雰囲気を感じました。今までと同じようにみんな挨拶をしてくれます。私に笑顔を向けてくれます。その環境は私にとって、昨日よりもましだな、と思いつつも、昨日のような状況でないとあの人が来てくれないのではないか、と思っていたからこそ、あの人との接点が少し消えてしまったようで少し悲しい気持ちにさせました。しかし、そんな状況が変わったのは昼休みでした。私はいつも通り一人で昼ご飯は食べて、お手洗いに行くことにしました。鍵を閉めてスカートの裾を上げた時、今までに聞いたことがないようなドアの軋む音が聞こえて振り返ると、その瞬間、私の体は冷たくなりました。何が起こったのかわからなかったけれど、トイレのドアの上に同じクラスの子がいて、その子がバケツというものを持っていたので分かりました。私は水をかけられたのだ、と。

「あら、思ったよりもお似合いだわ!あなたみたいな人はこんな安い制服ですら、着てはならないのよ!」

昨日、私に何かと言ってきた栗松さんが私に言いました。

「どうして・・・」

どうして、なんて、私が一番知っていることです。

私の居場所はここでは無いから。

あの人のところに帰らなければならないから。

わかっているのに、そう言うことしか出来ませんでした。

「何でこいつは普通の服を着ていないの?庶民の服を着なさいよ!」

「こいつに着られた制服が可哀想だわ〜」

栗松さん以外の声が扉の向こう側からしました。

ここには4人いるのだとわかりました。

「とてもお似合いよ。でも、濡れたあなたに騎士様が惚れでもしたら困るの。だからあなたにはこれが一番よ」

栗松さんの声がすると、すぐに食べ物が降ってきました。 私の服は様々な色に彩られました。

「ねえ、何も感じないの?こんなことされたのよ?怒ってもいいんじゃないかしらー」

怒ることが出来ません。

私は、教室で授業を受けなければ・・・

「何か言いなさいよ!あなた、もしかして、このまま教室に戻る気じゃないでしょうね?」

教室に、行けない・・・?

「教室にあなたの居場所があると思わないで!」

「今日の朝から昨日とは違う笑顔で私たちに話しかけているけれど、馬鹿な頭で勘違いなさったんじゃなくて?」

「私たちはあなたなんて、何にも許してないのよ!」

「昨日と違ったから安心したでしょ?馬鹿ね〜」

馬鹿・・・

「今のあなたの顔が一番気に食わないわ!」

「怒っていいよ〜?」

「どうしてあなたは立っていられるの?馬鹿なの?」

「ごめんなさい・・・・」

馬鹿と言われた時、確かあの人は、謝ったときにとても笑顔になったのです。それを思い出して、謝りました。

「そうだったわ、あなたのその態度が庶民っていう証拠なのよ!」

そうなのでしょうか?

「戻ってこないで!」

「ここじゃなくて家にも来ないで!あなたなんかね、どっかのよくわからない道端で死んでても、誰も助けてくれないわよ?だから早くここから出て!建物から!岸家から!中宮家から!この世界からさっさと消えろ!」

「分かりました」

栗松さんは、私にあの人のところへ帰ってと言っているのでしょう。だとしたら、断る理由はありません。


クラスメイトたちは私の言葉に満足したようで、トイレから去っていきました。

私はその言葉を聞いて、急いでトイレを出て、裏口から学校を出ました。トイレは学校の校舎と別棟にあって、裏口からすぐだったから、助かった。そう、思いました。


私はどこに行けばあの人と会えるのだろう?

こっちに来てから私が初めて行ったのは、あの2人の場所でした。私はたまたま、あの人たちに会っただけでした。だから、今度は彷徨っていたら必ず、あの人が来てくれる。そう信じて、私は必死に歩くことにしました。

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